「無理に急ぐ必要はないだろう」
「え?」
「巫の選択は巫が持ってる当然の権利だ」
穢れた気が形を成し、人に害を為す存在である「化生」。
基本的には特殊な才能を持ったものにしか見えない存在ゆえ、化生斬りと呼ばれる存在が必要とされたりしていたようですが。
……本作の舞台となるのは、神話からの伝統を継ぐ街アイリーデ。
かつて太陽を飲み込もうとした蛇が居て神様の力によって人は助けられて。神様が代価として求めた「美酒」と「音楽」と「人肌」を提供するのがアイリーデの役目であった。
メインキャラの片方、シシュは王都からアイリーデへ化生斬りとして応援にやってきた青年。もう一人の主人公とも言えるヒロインは、「人肌」を担う神話正統の妓館「月白」の主であるサァリーディ。
神話正統であるために、娼妓の方が客を選ぶというシステムで運営されており……その館の主であるサァリもまた娼妓として、客を選ぶ必要がある。
しかし主であるサァリの客取りは特殊で……彼女が選ぶのは一生で一人だけだった。
アイリーデは神話を継ぐ街だからか、化生が実体化するという変わった性質があったりもして。いわゆる歓楽街、夜の街であるはずなんですが。神話正統であるためか、サァリの幼さがあるからか。はたまたシシュの真面目さか。
メイン2人が月白で過ごしていると穏やかというか和やかな空気を感じるのが、味わい深いというか。「普通でいいの?」とサァリが笑うシーン、可愛くて良いですよねぇ。
先日書籍版が3巻で完結となったんですが、初期の2人の関係性をあらためて見られるのはとても楽しい読書体験でした。
漫画で描かれるコマが増えると動きが見れて良いですよね。シシュが化生を追って堀に飛び込んだシーンとか、勢いあって笑えますし。
珍しいお茶で引き留めるシーンとか、それ飲んで喜んでるシシュの表情とかコミカルで良い。……まぁ一番笑えるのは描きおろしなんですが。面白い男だよ、シシュ。
あとはカバー裏でサァリとシシュのパラメータ表記がされていたりしたのも遊び心あって良かった。