「信じてくれ、絶対だ。お前を助けに行く」
『……わかった、待っている……早く来い……凍蝶』
秋の代行者が攫われてしまい……かつて攫われた春主従は、やられっぱなしでは終わらないぞ、と捜索チームに協力する事に。
その際に、夏の代行者たちに話を通したり、独自に動こうとした冬主従とも連携を約束したりと、かつて救われなかった少女がそれでも救おうとする行動は、とても尊く見えました。
まぁ、同情したからとか感情ベースの話ではなく(そういう想いが無いわけではないでしょうけど)、さくらなりに利益を求めての行動であった、というのも良いさじ加減だったと思います。あれだけ大事にしている主君を攫い、八年の断絶を味あわせてくれた相手に反撃したいという気持ちは、とてもよくわかる。
冒頭、春主従の過去についても明かされていましたが……それがまた重いというか。雛菊が攫われた後、三か月で探索が打ち切られたのも分かる冷遇っぷりというか。
代行者に選ばれたため最低限の扱いはするけれど、あれは尊重してるとは言えないでしょう。そりゃあ、失態を侵したとしてさくらを追放するのも分かるわぁ。中々の腐りっぷり。
親の因果が子に報い、なんて言葉もありますが……それをここまで突き付けられると、春の里一回叩いた方がいいんじゃないか、みたいな気になる。
協力体制を築いて、攫われた秋の代行者・撫子を探しに行くチーム。四季庁舎にて待機しているチームに春夏秋は別れて行動する事になって。冬は参加が遅れる代わりに、根回しをしてくれて……と言う連携が取れていたのは良いですね。
ただ、四季の主従が協力できても、四季庁舎とか公的機関の側に裏切り者が紛れ込んでいたらどうしようもないですよ。
襲撃を行った組織はここ数年羽振りが良く、金で職員を転がしたらしいですけど。その資金源となったのが、攫われていた雛菊なわけで。8年も攫われたままにしてなければ、そんな癒着も進まなかったでしょうから、これは春の里の失着でしょう。
……先代・春の代行者の時に既に里と四季庁の癒着は進んでいたようですし、すぐに改善できる問題でもないですけどねぇ。
賊の連中には、各季節を憎む根絶派やその能力をもっと活用しようとする改革派がいるそうですが……今回、代行者たちの能力行使を見ると、手を出してはならないと思ってしまいますけどねぇ。
御前とか、自分がやったことをやり返されるとは考えていない、自己中心的な考えを持っていたようですし、視野が狭い……。楽しい残業をしている春と冬の護衛、生き生きしてたんだろうなぁ……。無理もない。
あとは、他愛ないやりとりではありますけど、278Pの「すごく気になってきました。結婚式呼んでください」が妙にツボでしばらく笑ってました。
メロンブックスの短編小説つきセットを購入していたんですが、上下巻後のエピソードである外伝「冬桜」、『冬』短編「探梅」『夏』短編「いずれ菖蒲か杜若」が収録されていて、どれも面白かったです。本編に入っててもおかしくないというか。
凍蝶がさくらに贈り物をしようとする話。かつてのさくらと狼星についての話。事件後の竜胆とあやめの会話。あやめの婚約者の情報が出て来てましたが、伝聞だけでも中々好印象な人でしたねぇ。