「本人も気付いていないのかもしれませんが――、今あの人は、ヴィルヘルム・シュルツとトラヴァス少佐の中間ぐらいにいるんですよ」
再読。シリーズ本当の最終巻。
墜落する飛行機から命からがら逃げのびたトラヴァスが、新聞部の新人君こと「あなた」に発見されるの、ツキがすごい。
あなたが見つけてくれたことや、その家にとある冒険家が訪れたタイミングも含めて神がかってて、何か一つズレていたらトラヴァスの命はなかったかもしれない。
頼れる知人と合流できたことで、命を狙われているトラヴァスではなくヴィルとして行動できるようになったこと。
足も確保できて、信頼できるイクストーヴァ王家のフィオナとベネディクトと対面が叶ったことなど。
積み重ねによって守られてるなぁと思いました。……まぁ、敵対者は切り捨ててきた「トラヴァス少佐」であるからこそ、恨みを買って狙われた節はあるんですけど。
そしてヴィルの危機にアリソンが黙っているはずもなかったんですよねぇ、という信頼が強い。
下巻は大人たちのエピソードとしての面が強く、両親の秘密について知らないリリアは置いてけぼりだし、母が仕事を失うことになったあたりで大分困惑する羽目になったりしたわけですが。
いやまぁ打ち明けられない事情については理解できますけど、母が突然失業して一時収監された末に帰宅してきた時に明るく「我が家はいいわー」とか言われた娘のことを思うと、ねぇ……。この件に関してはリリアの味方したくなりますなー。
その後盛大に結婚式を行うことになっているし。ドタバタ劇場型の決着ではありましたが、あの騒がしさがこのシリーズらしくて好きです。