気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

暁佳奈

春夏秋冬代行者 春の舞5

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「雛菊 ね さくらとこれからも 生きて いきたいの…」

 

1822話を収録。

囚われの撫子に権能の使用を強要する【華歳】の御前、いやぁ良い笑みですね。悪党の、容赦ない微笑みだ。

夏主従と秋の護衛が撫子の探索に赴いている間、四季庁舎で残っている春主従。

……さくらにとってかつての友と師ではあるけれど、絶対的な主を失った原因でもあり……どうしたって複雑な思いを抱いている。

 

雛菊も狼星を慕う気持ちはあるけれど、誘拐された生活の中で心を病み別人という自認をしている歪んだ状態になっているわけで。

そんな中でも、「今度は雛菊がさくらの心を守る」と。今より少し楽になれる道もあるはずだ、と希望の道を示してくれるの春の代行者って感じがして良いですねぇ……あたたかな気持ちになる。

 

ただ優しいだけじゃなくて……裏切り者と族が動き始めて、春主従と冬主従がそれぞれ襲撃を受ける展開になっていくのは慌ただしいですけど。

内部に裏切り者仕込んでいるの、根が深いなぁ……。代行者の事を想う一般人的な感性がありつつ、恐怖で支配しているのが賊のやり口。

撫子を追いかけている夏主従と阿左美が、賊への不満を思いっきり口にしてくれるシーンは賛同しかない。

本編がどこもシリアスモードなので、あとがきページにあるオマケ4コマがほのぼの夏主従なのが良かったですね。……夏の代行者である瑠璃があやめに扮して離宮脱走してたの発覚する話なので、瑠璃もバレて気まずいし護衛であるあやめが鬼の形相になってるので、当人たちは穏やかじゃないですが……。

春夏秋冬代行者 黄昏の射手

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「『流星』がロストした。これは訓練ではない。『流星』がロストした。これは訓練ではない!」

 

現役の代行者の中で最年長である、黄昏の射手の輝矢。

彼は、長く代行者を務めて来た経験とか大人としての立場から、暗狼事件の時に現場に駆け付けた夏の代行者姉妹を保護しようとしたりしていた頼れる人物でありました。

……ただ『夏の舞』で登場した際も、奥さんと守り人の失踪で凹んでいたところから浮上し始めたタイミングだったり、彼もまた悩みを抱える人の子としての側面もあったわけですよ。

 

守り人の慧剣が帰還したり、月燈との関係は互いの立場もあって公にはできてないけれど順調だったりしたわけです。

守り人と奥さんの件があったとはいえ、輝矢自身の家族の事とかについては確かに情報少なかったな……と読んで思いました。同じ射手である花矢が学生だって言うのを加味しても、そのあたりの描写なかったですしね。

 

射手は場所に限定される現人神であって、守り人の権能もそれを支えるための幻覚なわけですし。動かないからこそ、賊に狙われないという面もあるみたいですけど……自由がないのも確かで。

父と母と兄と妹が居て、たまに電話でのやりとりとかはしていた。けれど、どんどん距離が出来ていって……。兄妹と話題が合わないから、ちょっとゲームとかを用意してもらったら「ずるい」と言われた、とか。両親が別居するなんて話になった時も蚊帳の外。

母だけはそれでも連絡をくれていたけれど……大病を患ったときに心の余裕がなくなって、疎遠になっていってしまった。

……遠くに住む、連絡とらない親族の事、だんだん関心が薄れていくのわからなくはないですけど。疎外されている輝矢の心境を想うと心が痛かった。

 

そんな輝矢……というか『黄昏の射手』に用のある人物が、彼の誘拐を企てて成功させてしまったというのが、今回の騒動です

騒動を起こした側も家庭環境とか色々抱え込んでいた結果の暴走で、ある意味被害者とも言えますけど。騒動を大きくするために、花矢の方でも騒動を起こすように手をまわしてたりするからなぁ……。

 

花矢、本命じゃないのに怖い思いしたし。輝矢が攫われたことで滞るかもしれない夜の神事を行うための準備に奔走することになるし。巻き込まれ続けたけど、輝矢も誘拐されている側だから責められる相手が居ないっていうのがね……ちょっと可哀想でしたね。

今の四季の代行者たちの関係が良好なのを受けて、過去に事故が起きて廃止されていた護衛官の剣舞が復活する動きがあるとかで合間に四季側の動きが描かれていたのも良かったですね。

花矢と雛菊が連絡先交換して仲良さそうなのも微笑ましくて良かった。……襲撃されてるタイミングで、ちょっと状況良くなかったですけど。連絡ついたことで援護間に合ったからまぁ……。

四季会議も無事に開催されて、そこで狼星と撫子がとても興味深い話していたのが印象的と言いますか。シリーズ続くと、この後は冬の代行者編になるでしょうしそのあたりも描かれるのを期待したいところです。

春夏秋冬代行者 百歌百葉2

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「俺の頭で足りなかったら他の方を頼りましょう」

「阿左美様…」

「あやめ様 諦めてはダメですよ」

 

春の事件によって夏の双子は、神と護衛官という立場から双子神という特殊な立場になってしまって……そのあたりの事情を描く「いずれ菖蒲か杜若」。

夏の里は護衛官も含めて身内で固める方針をとる里で……瑠璃の新しい護衛官候補である雷鳥は腕前は確かなので任せられる。

しかし、あくまで護衛官だったあやめのお相手は医者の家系であり戦闘は専門外で……このまま行けば、婚約解消は避けられないだろうとあやめは考えていた。

 

自分も神様になってしまったことで息が詰まる想いをしながらも、疲れて寝てしまったさくらの横で凍蝶が優しい顔しているのを見て「素敵なものを見てしまった」と思える微笑ましさがあったり。

秋陣営の抱えている問題……撫子の両親は撫子に対して興味を持っていない問題について、助力しようと申し出てくれたり、人の好さが伺える。

お相手と出会ったときのエピソードも挟まってましたが、彼が語る「実家に花冠被ってる写真あるでしょ」のコマの幼少期あやめが凄い可愛かったです。

 

あやめの婚約事情を伺った秋の護衛官阿左美が「じゃあ、鍛えましょうか?」と言ってくれるの、結構好きなんですよね。夫になる相手にも強さが求められて、今はないから問題になるなら、鍛えればいい。なるほどシンプルな回答だ……。

「春の舞」でさくらが助けに来てくれた時、その善意を疑った彼が大分丸くなったなぁ……と思いましたね。撫子を失ったことで人生観が変わった、と自分で言ってますが確かに。

 

「護衛官候補君影雷鳥による代行者日記」は、瑠璃のお相手である雷鳥目線の話ですが。

押して押しまくって洗脳したとか自供してる当たり、大分歪んでるよぉ……。いや、なんというか交流の仕方とか表現の方法がちょっと歪んでるだけで、なんだかんだ代行者護衛官に選ばれるだけの素質というか、気質というか持ってる御仁ではあるんですが……。

まだ護衛官候補でしかないけど、「瑠璃を守って、僕が先に死にたい」とか覚悟決まってるので、凄い向いてる人だと思いますね。

 

「花残月」は、春の事件後に同じホテルに滞在していたタイミングの春主従と冬主従の話。さくらの誕生日である410日をお祝いしたい。そのために贈り物をしたいけど、コソコソ準備している間にも時間が迫っていて焦ってる雛菊が可愛かったです。

そつなく贈り物準備している凍蝶は流石ですが。春帰還の知らせを受けてから、あのドタバタの中でよくもまぁ贈り物準備出来ましたね。休憩の合間に急いで買いに行ったとは言ってますが、それにしたって仕事が早い。

 

かつて冬主従だけではなく、命の危険があった冬の里の面々も、雛菊の献身によって救われた。そのため、冬の護衛の中から春の護衛に派遣されることになった時、志願者で腕相撲大会始まってるのはちょっと面白かったですね。

冬の里にいい加減戻らないといけないけれど、さくらの誕生日はまだ滞在しているタイミングだったので、警戒つつ出来る限り盛大に祝っていたのは良かったですね。

祝われまくってしおしおになってるさくらが可愛かった。


春夏秋冬代行者 春の舞4

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「ただある側面では「十年前の報復」と言えるでしょう」

「対価を払うのは賊であって 秋ではない」

 

秋の代行者・撫子が攫われて、会議が行われることとなり……春顕現を済ませた春主従がその場に乗り込んでくるシーンから始まった第4巻。

かつて自分がバカにしていたけれど、同じ立場に立った今ではその辛さが良くわかる

竜胆、ちゃんと自分の発言を振り返れる真面目な青年で良いですね。

……真面目過ぎて自罰的になっているというか、沈みかけていましたけど。さくらが発破かけてくれて、とりあえず気持ち切り替えられたのは良かったか。

 

言い合いしてる声を聴いて、おずおずと様子を伺ってる雛菊のコマが可愛かったですねぇ。

そのあとさくらの変わり身で「少し熱が入っただけです」と言われて「…そう?」と納得してるのも良かった。

冬と春が通話で繋がって協力体制をとる場面とか、会議の後に入ってたの再構成が上手いなぁという感じはしましたね。

 

冬側の描写も増えてるように見えて、コミカライズ楽しい。

「たのしい共同戦線説得すごろく」のコマ、1コマ置きに「各季節の里のお偉いさんをおどす」が入ってて、笑い事じゃないけど笑っちゃった。

狼星と凍蝶をして「骨が折れる作業だったな……」「本当に…」とか言ってたのもむべなるかな。お疲れ様です。

春夏秋冬代行者 百歌百葉1

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「車の中からで良いなら 桜を見に行くか?」

 

電撃文庫より刊行されているシリーズのコミカライズ。

本編のコミカライズはLaLaで連載している『春夏秋冬代行者 春の舞』で行っていて、こちらで描かれているのは断片集みたいな感じですね。

『春の舞』刊行後にカクヨムで発表された、春の舞本編後を描いた短編『夜半の春』や、冬主従をメインとした『護衛官寒月凍蝶による代行者日記』、『雪後の天』といったエピソードを収録。後ろ2編は『春の舞』の特典SSだったんじゃないですかね。こうやってコミカライズで見られるのは嬉しい限り。

 

雛菊が「さくら ねている の?」と言っているシーンとか華やかな絵柄で描かれていってたので良かったです。

春の事件を経て、各陣営の交流が盛んになっているのが好きなんですよね。冬はよく賊の襲撃を受けるから、警戒して意外とファーストフードも頼む。

しかし四季関係者からすると冬ははじまりなわけで、格式高い食事取っているのかと思っていた、という齟齬があったりする、と。

それとは別に、春の里での立場が弱い雛菊を腹違いの兄が気にしていて、休養場所に関して骨を折ってくれたりとか今後に関係しそうな情報もあるわけですけど。

雛菊が終始可愛くて良かったですねー。一緒のご飯を楽しみにしてパタパタ足動かしてるこま可愛くないですか? 可愛い。

 

冬主従のSSは読めてなかったので、45話のエピソードは良かったですねぇ。

凍蝶の日記だという4話とか、彼の心境がより分かる話なので本当に好き。負傷していた時期の筆致が乱れているのも、普段は冷静な彼の動揺が伝わってきますし。

そして春帰還について本当に知らされていなかった冬主従がニュースでしって、思わずスマホ落としてるのとか、実に人間味に溢れていた。

 

巻末に書下ろしSSが「恋に師匠なし」。

さくらが四季会議に参加する前、下見が出来るかどうかを凍蝶に相談して。そこで四季庁祭事部の人を案内につけてもらってけれど……その人物がさくらに粉をかけようとしてきて。

対人に不慣れなさくらが悩むことになってましたけど。別件で連絡した夏のあやめや、秋の竜胆の意見とかも聞ける環境が出来てたのは良かったですねぇ。

春夏秋冬代行者 春の舞3

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「今はどうかほめてください 貴方の刀としての私を」

 

812話までと、描き下ろし「春との別れの前」を収録。

夏離宮を賊が襲撃してきて……代行者とその護衛たちの立場の厳しさを、改めて感じるような展開でしたね。

過去の襲撃によって別れを経験していた春主従が、衝撃を受けつつも護衛のさくらが覚悟を決めて切り捨てているのは格好良くもありましたね。

最後に死を恐れるような発言を零していたのを見て、「死にたくないなら来るな」と口にするあたり年頃の少女としての顔も見えましたが。

 

夏の代行者の「生命使役」の能力の行使している風景も絵で見ると雰囲気あって良いですね。

襲撃撃退後、返り血に濡れたさくらを案じてそれを拭いにいく雛菊が可愛くてよかった。……主に心配されて嬉しいけど、彼女の来ているものが高額だから……! って心配しちゃうさくらの庶民らしい心微笑ましいですよね。

雛菊の手が震えていたり、今回描かれた「帰還した後の春主従」のエピソードを見ると、2人の絆の重さを改めて感じることになるわけですが。

 

雛菊の経験談を伝えられた夏主従が、喧嘩してたけど和解できたの良かったですね。

そしてその存在について知らない若い秋主従が好き勝手言っていましたが……賊の襲撃についても集大成というか、より派手な行動を起こされていたのが厄介極まりないというか。

あの距離でミサイル視認していて、よくも竜胆生きていたな……って思っちゃった。

 

そしてアニメイト限定の20P小冊子「春泥」も良かった。

春主従が夏離宮を出た後の夏主従の話から始まり。瑠璃がせっかくだからちょっと外に出たいと言ったけど、襲撃後だから里に変えるべきとあやめに言われたり。その報告を婚約者に回したりする様子だったりは微笑ましい。

春主従が冬の護衛との距離を近づけたり、その報告を聞く冬主従の様子だったりも描かれていたのが良かったですねー。

春夏秋冬代行者 春の舞1

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「春は無事 此処に います」

 

季節の巡りを人から選ばれた「代行者」が担う世界。

代行者たちが儀式を行うことでその土地の季節が切り替わる、という重大な役割をもつ現人神なわけです。

その力を狙う過激派なども存在し……春の代行者雛菊は誘拐されていたことで、大和には10年も春が来ない期間があって。

 

帰還した雛菊がついに代行者としての活動を再開するわけですが。

専属護衛であるさくらが雛菊の安寧を何よりも大事にするため、10年ぶりの春到来を盛り上げたい四季庁との折り合いは良くないようです。

……雛菊たちの事情を考慮せずヘリで乗り付けるような真似して、むやみやたらと注目集めてる当たりはダメダメすぎるというか。

誘拐された過去があるんだから、初回の春顕現に関しては石橋をたたいて渡るくらい慎重でもいいくらいだと思いますけどね……。

代行者を管理する組織として四季庁側にも言い分があるのは、分からないでもないですけど、やり方が悪い。

 

過去のトラウマを抱えている冬の主従……特に従者側が過激な賊への警戒を怠っていないのを見るに、春の職員たちの在り方はうーんって感じではあります。

……まぁ冬の代行者も、我を通す部分はありますけどね。はい。

春夏秋冬代行者の世界は、現人神と民の間に温度差があったりして、綺麗だけど厳しい部分があります。何もかもうまくはいかない苦さがある、現実と同じではありますが。それでも雛菊たちが前に進もうとする姿勢が美しくて、それを鮮明に描いてくれる良いコミカライズだと思います。2巻以降も楽しみです。


春夏秋冬代行者 夏の舞 下

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「なら利害は一致してる。黄昏の射手は夏の代行者様方に捜査のご協力をお願いしたい」

 

黄昏の射手の輝矢さんが、自身の過去にトラブルがあって傷を負いながらも、職務を全うしてる姿とか、自分よりも幼い夏の代行者たちを気遣える姿勢とかを見ると、現人神側の人材はまともでホッとしますね……。

今回の事件で暗躍していた夏の里の黒幕も、家族に呪われてあぁするほかなかったと描かれていましたが……代行者を道具のように認識して、そのように扱う性根だからこそ今の袋小路に追い込まれてるんだから、自業自得だよなぁとしか言えない。

 

下巻第一章の、四季の代行者と射手とでは神の代行者という立場は同じでも、権能を与えた神も在り方も違うのもあって、それぞれの領域には詳しくない。だから情報共有しましょうって場面が好きですねー。

輝矢さんが真っ当な大人としての振る舞いをしてくれるし。新しい協力関係が生まれて解決に動きだした感じがしましたし。

 

老獪亀たちに対抗する勢力である、一匹兎角の面々も概ね味方ではありますけど。

彼らもまた過去の在り方に縛られてたなぁ、という印象。もっと早くから他の代行者に頼っていたら、もう少し別の解決もあったような気がします。

まぁ、独自で動いたことで春夏秋冬の同盟で結ばれた今代の代行者たちの絆は確かだと改めて示すことが出来たのは大きいと思いますし、これからに繋がる結果になったとは思いますが。

 

あと怪しい情報屋の介入とかもあって、通話やメールの妨害までされてたから、そこまで変わらなかった説もあるにはある。

……あの情報屋もなぁ……今しばらくは味方で居てくれると思うんですけど、何かの間違いで道を踏み外した時が怖いなぁ。内側の情報を知ってる人間が、敵に回るのは本当に恐ろしいですから。

 

あと代行者たちが動き始めて現地入りしたタイミングでは、もう状況が変化していたからこそ386387Pの見開きイラストが見られたわけですし。

契約結婚のつもりでいたあやめと連理の関係の、この騒動でしっかりと答えを出せたのも良かったので、ひとまず終わり良ければ総て良しと言う事にしたいですね。

まだ潜んでる敵対勢力だっているし、賊も今回は大人しくしてたけど力を蓄えてまた動き始めるでしょうから、トラブルは絶えないでしょうけど。それでも健やかに育ってほしいものですね。

シリーズが続くのなら次は秋の舞で、当代でもっとも幼い代行者撫子がメインになるわけですから、尚更に。

 
カクヨムの方で夏の舞、本編後の外伝「一夜酒」が掲載されていて、そちらもまた良かったので読んでない方は是非。



春夏秋冬代行者 夏の舞 上

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「こんかい、は、雛菊たち、が、夏の、ふたり……たすける、番、と、雛菊、思い、ます」

 

春の事件において、前例のない春夏秋冬の同盟を結び良好な関係を築いた代行者たち。

その結果として、四季庁の内部に入り込んでいた不届き者もいくらか捕縛することが出来たようですけれど。

それはつまり、これまで季節を回すための機構のように使い潰されてきた代行者たちが、今の権力者に噛みついたとも見ることが出来て。

 

良く思わない勢力が工作をして、「夏がなってしまった双子神は凶兆である」という噂を流し、彼女達は窮地に立たされます。

家同士の関係などもあり、婚約破棄までされてしまってかなり心が折れていた。

あの様子を見ると、『老獪亀』と名付けられた保守派の打ってきた一手はあながち間違いでもなかったんですよね。

 

ただし、彼らは「これまでの積み重ね」を重視しすぎて、春の一件が代行者や護衛官に与えた影響を軽く見てしまったんですよね。

別の思惑も相まって瑠璃とあやめと連絡が取れなくなって、春も秋も冬も心配していますし。危険が迫っているかもしれないと助ける為に行動を開始しますし。

戦う覚悟の決まった代行者と、彼らを守る戦力が整っている集団を敵に回したいか問われて「ちょっと戦車とか欲しい」って竜胆が返すシーンが笑えて好きです。

 

葉桜姉妹の共依存な関係、好きでしたけど……家族が神様に選ばれてしまって、何の影響もなかったはずもなく。

色々抱え込んでいたあやめの内心がとても痛い。思わず一度逃げ出そうとしてしまったのも頷けるけど……その結果として、婚約者と出会って良い恋を出来たんだから運命的とか言いたくなりますね。

 

瑠璃も明るい子だけど馬鹿ではなく、彼女は彼女で抱え込みまくっていたよなぁ……と言うのが明らかになって。それでも、行動を起こせる強さがあるのが「夏」って感じだよなぁ、とか。

四季の現人神だけではなく、この世界では朝と夜を齎しているのも射手と呼ばれる神様の代行者で。黄昏の射手が登場して、そちら側の情報とかも出てきたのは設定開示回好きとしては嬉しかった。

 

代行者と護衛官の周囲はとても尊いですけど、その周囲には悪意が蔓延っていて、中々生きにくい世界ですけど、せっかくの縁で四季の同盟を組めたのですから、倦まず進んでほしいですねぇ、ホント。

今回でいうと、味方側ですけど残雪視点がなぁ。あそこで呪われてしまっただろう感が凄くて。血縁ではあれど、問題には関与してなかった人だけど逃げられなくなったんでしょうね……。アレ、何かのきっかけで暴走しかねないので怖くもありますけど。

春夏秋冬代行者 春の舞 下

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「信じてくれ、絶対だ。お前を助けに行く」

『……わかった、待っている……早く来い……凍蝶』

 

秋の代行者が攫われてしまい……かつて攫われた春主従は、やられっぱなしでは終わらないぞ、と捜索チームに協力する事に。

その際に、夏の代行者たちに話を通したり、独自に動こうとした冬主従とも連携を約束したりと、かつて救われなかった少女がそれでも救おうとする行動は、とても尊く見えました。

 

まぁ、同情したからとか感情ベースの話ではなく(そういう想いが無いわけではないでしょうけど)、さくらなりに利益を求めての行動であった、というのも良いさじ加減だったと思います。あれだけ大事にしている主君を攫い、八年の断絶を味あわせてくれた相手に反撃したいという気持ちは、とてもよくわかる。

 

冒頭、春主従の過去についても明かされていましたが……それがまた重いというか。雛菊が攫われた後、三か月で探索が打ち切られたのも分かる冷遇っぷりというか。

代行者に選ばれたため最低限の扱いはするけれど、あれは尊重してるとは言えないでしょう。そりゃあ、失態を侵したとしてさくらを追放するのも分かるわぁ。中々の腐りっぷり。

親の因果が子に報い、なんて言葉もありますが……それをここまで突き付けられると、春の里一回叩いた方がいいんじゃないか、みたいな気になる。

 

協力体制を築いて、攫われた秋の代行者・撫子を探しに行くチーム。四季庁舎にて待機しているチームに春夏秋は別れて行動する事になって。冬は参加が遅れる代わりに、根回しをしてくれて……と言う連携が取れていたのは良いですね。

ただ、四季の主従が協力できても、四季庁舎とか公的機関の側に裏切り者が紛れ込んでいたらどうしようもないですよ。

 

襲撃を行った組織はここ数年羽振りが良く、金で職員を転がしたらしいですけど。その資金源となったのが、攫われていた雛菊なわけで。8年も攫われたままにしてなければ、そんな癒着も進まなかったでしょうから、これは春の里の失着でしょう。

……先代・春の代行者の時に既に里と四季庁の癒着は進んでいたようですし、すぐに改善できる問題でもないですけどねぇ。

 

賊の連中には、各季節を憎む根絶派やその能力をもっと活用しようとする改革派がいるそうですが……今回、代行者たちの能力行使を見ると、手を出してはならないと思ってしまいますけどねぇ。

御前とか、自分がやったことをやり返されるとは考えていない、自己中心的な考えを持っていたようですし、視野が狭い……。楽しい残業をしている春と冬の護衛、生き生きしてたんだろうなぁ……。無理もない。

 

あとは、他愛ないやりとりではありますけど、278Pの「すごく気になってきました。結婚式呼んでください」が妙にツボでしばらく笑ってました。

メロンブックスの短編小説つきセットを購入していたんですが、上下巻後のエピソードである外伝「冬桜」、『冬』短編「探梅」『夏』短編「いずれ菖蒲か杜若」が収録されていて、どれも面白かったです。本編に入っててもおかしくないというか。

凍蝶がさくらに贈り物をしようとする話。かつてのさくらと狼星についての話。事件後の竜胆とあやめの会話。あやめの婚約者の情報が出て来てましたが、伝聞だけでも中々好印象な人でしたねぇ。

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ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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