「私は平和が好きです」
「僕もだよ」
過去知識を駆使してゼッタでの大戦を乗り越え、望みうる戦果を掴んだロアたち。
とは言え、一つの戦を乗り越えただけで周辺国との関係も変わってないし、ロアの知るルデク内部の裏切り者たちも未だ健在なわけで。
長く落ち着けるわけではないですけど、少しだけでも穏やかな時間を過ごせたのは良かったですね。
それには北の大陸に通じる不文律として年末年始は戦わない、というのがあったからともいえますが。
一つ違えば大陸統を成し遂げたかもしれない傑物グランスウェウル。非凡な才能があったが、目的のためには苛烈さを示す人物で……年末年始に限らず時を選ばず戦いを続けた結果、民草から反乱を起こされて討たれたという故事に則っているとかなんとか。
こういう作中で通じる設定が開示されるの、楽しくて好きです。
年末年始は争わない……が、年が明ければロアの知るルデク滅亡の年を迎える節目のタイミングでもあって。
ロアがウィックハルトを救うことになったハクシャで、亡くなった人への献花をしたり。それまで縁のなかった第七騎士団のトップに会いに行ったり。
そんな事をしていたある日、ツェツェドラ皇子がルデク王への会談を申し込んでいるという話が、ルルリアに手紙を届けに行った南大陸の大臣ダスさんから持ち込まれて。
本来の歴史では死ぬ運命にあったツェツェドラとルルリアが無事で、ルデクとの縁を結ぶきっかけになってくれたのは良かったですね。
ロアと出会ったことで良い方向に変化したゼランド王子が、他国の皇子が来るのならこちらも同格の相手が出迎えるべきだと自ら提言したのも成長を感じて良かった。
そういった変化以外にも、ロアによって歴史が塗り替えられて運命が変わった人についても今回は明らかになっていくことになりましたが。
ルデクがゼッタの大戦で勝利したことで、ゴルベルでは粛清の嵐が巻き起こったとかで。ロアの知る歴史でも長く生きた英雄ローデライトが処刑されたり、かつてルデクに損害を与えウィックアルトも浅からぬ因縁のあるフランクルトが亡命を希望してきたりと、今まで以上に激動の時代、って感じがしてきましたねぇ……。最後でロアがとある決意をしていましたし。