気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

椎名優

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第五部 女神の化身Ⅸ

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「私の主はいつも想定外です。貴族院の寮で派閥の壁を壊した時も、粛清の連座回避を洗礼前の子供達まで行った時も、私は驚かされてきました。故郷の蹂躙を命じるゲオルギーネ様ではなく、手の届く範囲をできる限り助けようとするローゼマイン様を主として選ぶことが出来て良かったと思います」

 

プロローグが、ゲオルギーネの忠臣グラオザム視点。エピローグが、ジェルヴァ―ジオを選んだ中央の騎士団長ラオブルート視点。

エーレンフェストとユルゲンシュミットを揺るがす大騒動を起こした陣営に属する人物が何を考えていたのか描かれたのは、理解度が上がるって意味ではありがたいですね。

各々の事情はあれど、ローゼマイン達とは相容れないのが改めて示された形にはなります。

 

ゲルラッハでの戦場、ローゼマインは養女ではありますが「領主一族の責務です」と言って敵地に踏み込めるんだから大したものですよね。

まぁ今回の敵は悪辣で即死毒とか使ってくるし、色々と準備してから事を起こしてるのもあって、領地内をかなりかきまわされてしまった感じがありますね。

それでもゲオルギーネを打ち倒すことが出来たのはなによりですが……ローゼマインがトラウマ抱える結果になってしまったのは痛い。貴族的な観点で見ても、弱みを抱えることになりますしね……。

 

自分の願いが叶わなかったこれまでの事を思って、アウブ・アーレンスバッハになるのは難しいだろう、とローゼマインは考えていましたが。

大領地出身のハンネローレに焚き付けられたり、フェルディナンドの根回しなどによって、彼女の道が定まったのは、まぁ良い事ではあるんですけども。

ジェルヴァ―ジオはまだ暗躍してるし、王族の反応は鈍いしで、もうひと騒動あるんですよねぇ……。

 

巻末の描き下ろしは、エーレンフェスト防衛線の後半。

各所に指示を出すシャルロッテ視点の「後方を担う者」。領主教育を受け初めて、最初の任務が防衛線となった彼女がそれでも奮闘している一方、重荷を下ろしたヴィルフリートが元気有り余ってるのが、なぁ……。そういうところだぞ。

 

平民の兵士レクル視点「西門の戦い」はタイトル通り、門での攻防。主についていけなくて不貞腐れつつ、仕事を果たしているユーディット視点「残された者」。名捧げによって連座回避した子供達に厳しい目を向ける人はどうしても出てくる、というのがローゼマイン視点だと中々見えないので、読めて良かった。

 

あとはフロレンツィア視点「白の塔で」、ジルヴェスター視点「礎を巡る戦い」は領主と領主夫人としての戦い。旧ヴェローニカ派の子を特別室に隔離してたこととか、そこでミュリエラがバルトルトの妹に厳しい一言を放ち大人しくさせたって下りは、成長が感じられて良かったなぁ。ミュリエラはバルトルト達を隔離する名目に巻き込まれた形だけど、不満を漏らしてないそうですが……絶対、忙しくて読めてなかった新刊を読める自由時間が出来てラッキーって思ってるんだろうなぁって所まで伺えて好き。

本好きの下剋上 第四部 貴族院の図書館を救いたい!3

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「わたくしのお母様はすごいのですよ」

「貴族としての利益を確保し 上級貴族に相応しい社会貢献をして さらに自分の趣味にも妥協しないのです」

「わたくしは心からお手本にしたいと思っています」

 

実技を終えて寮に戻ってきたローゼマインを出迎えるアンゲリカ。

うーんこれは確かに、「主から仕事を得られず思いつめた美少女」の図ではありますね。

でもよくわかってるローゼマインには通じず。コルネリウスと目で会話してるシーン、結構好きです。

 

騎士見習いに囲まれて勉強してるアンゲリカのどよーんとした感じと、追い込まれている一年生ズの緊迫感がとても凄い。

ローゼマインの言葉を聞いて、一年生が一斉にヴィルフリートの方を見た瞬間とか、感情を隠すのが基本の貴族らしからぬ反応ではありますが。それだけ圧を感じてたんだなぁ。

そりゃフィリーネもローデリヒも、講義は受けるけど点数足りてるなら合格にしてくれって言うよ。先輩方が温かく出迎えてくれたのも納得。

 

騎獣服ローゼマインも可愛いですねー。レッサーバスが特殊なため、滅多に見られない恰好ですし新鮮。

後は圧縮講座で、先生方がいろんなことを言うので生徒たちがみんな「ぽかん…」ってしてるシーンも割と好きです。圧縮の場面だとローゼマインの新しい魔力圧縮方の脳内イメージが、コミカル過ぎて吹いた。

その後事情を聴きに乗り込んでいたヒルシュールの剣幕に、アンゲリカとコルネリウスが即座に反応してるのが経験が生きてていいですよね。

 

巻末の番外編コミックは「ご褒美のデザート」。ローゼマインが最速合格の褒美に約束した1品プラスしたデザートを、1年生たちが堪能する話。ローゼマインの提供するカトルカールは冬の子供部屋でも貴重で、それを食べてる子達の幸せそうな顔が良かった。

書き下ろしSSは「主には見せない裏側」でレオノーレ視点で、タイトルの通りローゼマインからは見えない側近たちの交流のエピソードですね。

1年生でローゼマインと親しくない子からは、彼女の図書館への暴走で影響が及ぶことに不満を抱かれているとか。それをフィリーネから聞いた面々が対処法を相談したり、図書館での護衛方法やフィリーネの教育についての打ち合わせをしていたり、こういう情報が補足されてくエピソード好きだなぁ。

本好きの下剋上 第四部 貴族院の図書館を救いたい!2

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「貴族ならばその時の利を考えて感情を隠し 敵と手を組むことも出来なければなりません そう教わりませんでしたか?」

「まったく誰も彼も器の小さいこと」

 

転移陣のシーンがコミックになると、ブワッと沸き上がった光とぐにゃりと視界が歪んで、ローゼマインが支えられてるのも納得。

あれ慣れないと気分悪くなりそうですね、ホント。

そうして切り替わった先で出迎えてくれるコルネリウスとアンゲリカが良いなぁ。貴族院の寮の広さとかも絵になるとより分かりやすくて好き。

 

多目的ホールもワイワイ楽しそうですし。エーレンフェストの全学年いるから人数多そうに見えるけど、70人もいなくて大領地だと倍の150人超えてくるところもあるとかで、格差感じるなぁ。

エーレンフェストは美味しい料理があるからなお賑やかなのかもしれませんが、大領地の寮となるとまた色々と大変そう。

 

エーレンフェスト内の派閥争いによって、隅に追いやられている旧ヴェローニカ派の生徒たち。派閥とはこういうもの、で止まらず彼らを味方につけようとする辺りがローゼマインですよね。

しっかり利益を与えて、上手く動かしているので中々貴族らしくなった感じがあります。……まぁ図書館関連で暴走もするので、周囲を振り回したりもするので差し引きトントン説もある。王子への挨拶直後、ローゼマインだけニコニコで周囲がどんより状態なので、負担も増えてはいますが。お疲れコルネリウス……。

 

巻末のコミック番外編は「コルネリウスの決意」。ローゼマインが眠っていた時期の彼が家族会議に参加したり、側近入りを望むハルトムートとバチバチやりあったりする話。

書き下ろしSSが「見送りの後」。フェルディナンド視点で、タイトル通りローゼマインを見送った後の話。彼は仕事溜まってるし、ヴィルフリートには辛口の言葉しか言えないからって速攻で立ち去った様で、うーん相変わらずだなぁというほかない。

先に退出したエルヴィーラから、目覚めたばかりのローゼマインを送り出すことはやはり心配だと言われて、返答してましたが。

ローゼマインに伝わってない部分でもやっぱり色々思惑があるんですよねぇ。フェルディナンド以外にもジルヴェスターのものとかもあったようです。それでも第一はこれ以上の弱みを作らない事ではあったようですけど。
そういう考え全部ぶっ壊して駆け抜けるのがさすがローゼマイン……。

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第五部 女神の化身Ⅷ

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「意味はわかりましたが、断固として拒否します。フェルディナンド様の死を待つ趣味など、わたくしにはありません。いくら怒られても、わたくしはフェルディナンド様を助けるのです。手段なんて選びません」

 

ピンチのフェルディナンドを救うために、手段を選ばず戦い抜くことを誓ったローゼマインの活躍が描かれる1冊。

プロローグはユストクス視点でジルヴェスターと邂逅し、何を話していたのか。そして、巻末には「ギーベ・キルンベルが視点 動いた国境門」、「ブリギッテ視点 イルクナーの戦い」、「フィリーネ視点 避難訓練通りに」、「エーファ視点 強固な守りと繋がり」、「ギュンター視点 誓いを果たす日」。「望みのままに」と複数本の書き下ろしが収録されており、本編のローゼマイン視点だと見えてなかった部分を補足してくれてるので、WEB既読勢としても満足。

 

ユストクスとエックハルトと合流し、グルトリスハイトを見せつけ国境門での転移を扱い、ダンケルフェルガーの協力を取り付けた上でアーレンスバッハの礎を奪った。

そして念願通りフェルディナンドを救い、領内の外敵ランツェナーヴェとの戦いでも前面に立ちアウブの守護を用いて存在を示した。

いやぁ、本当に大切なものの為なら止まらない彼女の行動力は素晴らしいですねぇ。グルトリスハイトを入手したこともあって、王族の所業とかについても詳しくなり、フェルディナンドと隠された歴史の会話が出来るようになりましたが。

求愛の魔術具については気づいていなかったり、ローゼマインの知識は本当に偏っているなぁ……と感じた次第。

 

エピローグでついにゲオルギーネ視点が描かれ、彼女がどうしてこんな行動をとっているのかという一端が描かれたわけですが。

いやまぁ……うん。幼少期のジルヴェスターの振る舞いとか、それに接する母の態度。それまで次期領主候補として育てられてきた事とかを考えると、歪んでしまったのも無理はないのかもしれない。

ただ、どうしたって主人公のローゼマインに感情移入してしまうから、ゲオルギーネの振る舞いは許し難いわけですけどね。礎を得る方法を見つけておいて廃領地のギーベ達には教えなかったり、彼女にとって周囲は利用する対象ばかりのようですし。結局最後には破滅していったのではないか、と思わせる怖さがある。

 

巻末書き下ろしエピソードの中だと、アウブにも忘れ去られていた転移陣を起動すると告げられたギーベ達の困惑っぷりが新鮮でしたね。いくら「何もしなくていい」と言われても、長年使われてなかった魔法陣の上には物が置いてあるかもしれない、と慌てて調査して準備を整えていたのはお疲れ様です……。

ブリギッテ視点のイルクナーのエピソードは気になっていたので、収録されて嬉しかったですねー。フロレンツィアからの手紙とローゼマインのオルドナンツの情報量の差と、それによって生まれた対応の違いを思うと、情報伝達大事だなって改めて感じましたね……。

異世界転生して生産スキルのカンスト目指します!

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「今の今まで諦めていなかったじゃないか。それが一回の賭けに負けたくらいで全てを諦める? そんなのジンらしくないよ。苦笑を浮かべながら、世間話のように喋りながら、最後まで足掻いてみようよ」

 

BOOKWALKER読み放題にて読了。

ゲームが趣味の主人公は、その中でも特に生産要素のあるゲームを愛好していた。

その日も会社の後輩に飲み会に誘われたものの、スキルレベリングが佳境だったために帰宅する事にして……車道に缶を投げる馬鹿どもが居たせいで事故って死亡。

しばらくその魂は現世に留まり、自分の葬式で泣いてくれる人々を見守った後、昇天するのかと思いきや……。

 

気がついたらゲームの中で見かけたような服を着た少年の姿で、見覚えのない草原に一人佇んでいた。

育った姿でスタートしたものの、この世界の常識とか何も分からない状況で。魔獣とかも居る世界のようですから、何か間違いがあったら「草原スタートだけど死んじゃいました」とかになりそうでしたが。

たまたまその道を通った集団に保護されて。おまけにそれが、彼が前世で打ち込んでいた生産に特化したクランのリーダーであった。

 

記憶喪失だという体裁にして接触したら、上手く保護してもらって念願の鍛冶なども教えてもらえることになった。

さらに転生した主人公は特殊なスキルも保有しており、その効果で特異な現象を巻き起こしたりもします。ただ、そのスキルには良い縁に恵まれるって効果もあるので、トントン拍子に話が進んでく理由付けされてるのは良し。

 

しかし、英雄の器。前回の同一スキル保持者の意識が残っている上、効果にも影響を及ぼしているとかかなり変なスキルですよね……。

前々回と前回保持者の間でも「なんでそんなスキルにしたんだ」ってズレが生じてるし、それは今回も同様だし。前々回の能力が今回継承者に当たっていたら歓喜したんじゃなかろうか。

 

生産型にも戦闘型にも時代によって切り替わる万能型と言えば聞こえはいいですけど、自分の求めたスキルを使えるわけじゃないし、何とも言えない微妙さを感じる。

例えば戦争中にこのスキルを持っていた人間が、敵を蹴散らすとか、負傷者を癒すとか戦争に生きる能力を欲したとして。次の継承者の時には戦争が終わってたりしたら、そのスキルって本来の願いとは違った形でしか運用できないわけですし。

この歪さにも理由があると良いですけどねー。作中ならではの理屈が通ってると、嬉しいなーって思うタイプの読者なので。

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 短編集Ⅱ

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「ふざけるな、オットー。お前はローゼマインの後ろ盾に甘えられると本気で思うのか? アレは貴族相手に必死で俺達のために道を作ってくれているが、生来の領主一族じゃない。貴族社会でのあいつの立場は危ういもんだ」

 

久しぶりに刊行された短編集ですねー。WEBSS置き場から未収録だったものとか、特典SSの再録などがされています。

エーファがフランやギルと初めて会う「エーファ視点 側仕えとの初対面」みたいな二部の未収録SSも収録されてますが、間に特典SSを挟みつつ時系列に並べてくれているので分かりやすいです。

各短編の前にいつごろのエピソードでどういう内容なのかと、香月先生のちょこっとMemoでその短編が書かれた背景とかに触れられてるので、意外とあのページ好きです。

 

SS置き場からは先述のエーファ視点の他に「リコ視点 変化の始まり」、「ブリュンヒルデ視点 ローゼマインさまと染め物のお披露目」、「ルッツ視点 元気に成長中」、「フロレンツィア視点 フェルネスティーネ物語ができるまで」。

「ユストクス視点 古ぼけた木札と新しい手紙」、「ルッツ視点 トゥーリの心配」、「ローゼマイン視点 ラザファムとの会話」、「エーファ視点 子供達の成長」、「レティーツィア視点 初めての祈念式」の10本を収録。

 

これらはSS置き場の方で読んでいたのでサクサク読了。ラザファムやレティーツィアのSSには挿絵がついてて、短編集ならではの味わいも増してましたが。

個人的には短編集の目玉は特典SSですね。シリーズを電子で揃えてる関係で、さっぱりGET出来てないのでこういう形で再録してもらえるのは本当にありがたいです。

 

四部Ⅴの特典「ブリュンヒルデ視点 ギーベ・グレッシェルの娘として」。

ローゼマインからグレッシェルの印刷業の失敗を示唆された後のエピソード。指摘されたものの、ローゼマインの言葉を上手く呑み込めずにいた彼女に、ハルトムートやエルヴィーラからの助言があるというのが良いですねぇ。

ローゼマインから見えない側近たちの交流とか、彼らからのローゼマインの評価とか新鮮です。そして、このタイミングで第二夫人の懐妊とかも聞かされてたんですねぇ。ローゼマインの言葉を上手く呑み込めなかったの、その辺りの事情で彼女も混乱していた部分があると言えるかもしれない。

まぁ、そもそもグレッシェルとハルデンツェルで土地持ち貴族の在り方が違うって根本の問題もあったわけですけど。ここで混乱していた彼女が、後にアウブに直訴できるだけの覚悟を持つのかと思うと感慨深い。

 

四部Ⅵの特典「ライムント視点 領地と師弟の関係」

アーレンスバッハとエーレンフェストの間にある問題。それについて、中級でも魔力の少ないライムントはさっぱり把握してなくて。護衛騎士を侍らせた領主候補生が、下っ端貴族をいじめないでほしい、とか考えてたのが描かれてお前……! ってちょっと思いました。

まぁ、下っ端なのは間違いないしな……。この立場で見えるものが違うっていうのは、エーレンフェスト内部でもあったからなぁ。ローデリヒが直接問わねば事情を分からないままだった学生たちも多いでしょうし。

領地関係の悪化で、折角開けた道が閉ざされてしまうかもしれないという不安は、立場が危うい彼だから見えた視点で、こんな感じで師弟関係は別だと振る舞うヒルシュールの特殊さにかつてのフェルディナンドも救われたんだろうなぁと思えたのは良かった。

ライムントは研究が出来ればいいタイプの人間で、フェルディナンドの弟子として認められて、情報源になった未来は彼にとって幸せなものになったんだろうと思うと、一件落着感がある。

 

四部Ⅶの特典「オットー視点 旅商人の依頼と冬の準備」、四部Ⅷの特典「トゥーリ視点 ざわめきの中の自覚」、五部Ⅳの特典「トゥーリ視点 婚約の事情」は各時期の下町でのエピソード。

五部は問題がかなり大きくなって領地やユルゲンシュミット全体へ広まっていくので、下町のエピソードは貴重で良かった。

 

旅商人としての苦労を知ってるし、かつて世話になった人だからとちょっと手を回したオットーに「お前はもう大店の主なんだ」と釘を刺すベンノのシーンが好きです。

ローゼマインの立場の危うさを知っているので、他領出身のカーリンをいざとなったら排除する覚悟を持っているというのは本編でも描かれていましたし、実際に送り返したわけですから有言実行したんだな、と思っていたわけですが。

ベンノ以外から見ると、カーリンといい感じに見えると評していたのも間違いではなかったんだなぁというのは衝撃的でした。私情を振り払って決断できる辺りは、流石と言うべきか。

カーリンとベンノが話していた「目標を超える」という部分が何を指しているのか分からなかったので、いつか明らかになると良いなぁ。

 

トゥーリの失恋と、下町出身だけど大店で働いているという特殊さから相手が限られるため、ルッツと婚約する事になった辺りの詳細が分かったのは嬉しかったです。

立場が弱いため変な誘いがくることもあるから、結婚は先でも婚約だけは先に済ませておきたいって、トゥーリの仕事人間……!

 

四部Ⅸの特典「ギュンター視点 兵士と騎士の情報収集」。

灰色神官が攫われ、情報収集のために門に派遣されたダームエルとアンゲリカの対応をするギュンターの話。ローゼマインではなく、マインのことを知っているダームエルがギュンターの反応を察して「ローゼマインさまご自身には何事もない」と言うシーンが短いけど印象的で好き。

娘のためにギュンターが頑張ってましたが、彼だけで情報収集を完璧にできるわけもなくて。四部4巻の書き下ろしSS「大改造を防ぐには」であったように、神殿長の依頼だからと奮起してくれた兵士たちが居たんだろうなぁと、色々と想像が膨らみました。

 

五部Ⅰの特典「バルトルト視点 胸に秘めた怒り」

後にヴィルフリートに名捧げする事になる困った君なわけですが……。いやまさか、両親たちの動向を唯一知っている学生であり、マティアスたちの告発に怒りを覚えていたとは。

敵対派閥の視点は新鮮ですが、連座回避を願うローゼマインを「理想論だけを振りかざすのだから愚か」とか言ってるのを見ると、連座してしまってよかったのではないか、と言う気分になるな……。

今のエーレンフェストには貴族が足りないからそれを補うためだって理論武装してたし、実際それで救われてローゼマインに名捧げしたメンバーとの関係は良好なので、バルトルトがゲオルギーネに毒され切ってたというだけの話な気もしますが。

 

派閥全体がこんな思想なら、そりゃ反乱も起こすわな……。そしてヴィルフリートの筆頭側仕えのオズヴァルドとバルトルトの会話があまりにも状況が見えてないというか。オズヴァルド曰く「素直な気性なので影響されやすい」ヴィルフリートが歪むのは避け得なかったでしょう。

……保護者フィルターが重厚だったのもありますが、ローゼマインと側近の関係が良好にまとまっている様子とかを見てると、ヴィルフリートの至らなさも光って頭痛くはなりますけどね……。

 

五部Ⅱの特典「ロヤリテート視点 小さな疑惑」

中央騎士団の副団長視点で、ローゼマインの事を危険視し始めた部下に「我等も手に入れれば良い」と言って、先に繋がる発言をしてくれたのは嬉しかった。

この時期はラオブルートの関与もなく、立派に副団長やっていたみたいですが……多くの騒動の中で不審に思う事があり、それが形になりそうな所でラオブルートに搦めとられたっぽくて、後手に回ってるなぁ……と思うしかなかった。

 

五部Ⅲの特典「アナスタージウス視点 それぞれの思惑」

香月先生のちょこっとMemoで、王族視点だとどこまで情報を出すのが適当か考えなければならないので毎回大変です、と書かれていましたが。王族それぞれの力関係とか考えがあるので、ユルゲンシュミットの危機に一丸となって対処していこうって形になれなかったのは痛いなぁ。

ディートリンデが魔法陣を浮かび上がらせたことで中央神殿からの情報提供があって……この時点で、グルトリスハイトを持つ正当な王を望んでいたトラオクヴァールに側近も困惑していたとか。

フェルディナンドの知識や傍系王族の疑いがあることは知っていたが、勝ち組領地のアーレンスバッハでそれを披露するなら問題ないと考えてた辺り、浅いというか。何も見えてないんだな……って感じですなー。王様がこれかぁ……。


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本好きの下剋上 第五部 女神の化身Ⅶ

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「何かが起こっても、わたくしが守ります」

 

表紙イラストですよ! 今までの幼いローゼマインと、成長後ローゼマインの対比がとっても素晴らしい。幼い方が可愛らしいけれど、成長後の表情は凛々しさとかを感じる。

まぁ、中身は安心安定のローゼマインなんですけれども。

この辺りのエピソードって、王族からの無茶ぶりであちこちに歪みが生じたり、アーレンスバッハの方でも騒動が重なって、どんどん状況が悪くなっていく坂道の途中みたいな状況なんですよね。

 

王族が絡んだ状態で、上位領地から共同研究としての奉納式を行うように命じられたりしますし。

ローゼマインが中央神殿入りするのではないか、と下位領地から侮るような物言いをされたりもします。まぁ、後者に関してはエーレンフェストの方が上位だからしっかり黙らせてましたけど。それもまたローゼマインが居ればこそ。

 

この状況で神々の導きもあって、彼女が季節一つ分行方不明になったというのはさらにあちこちを騒がせたことでしょう

巻末の「閑話 ローゼマインの失踪と帰還」はジギスヴァルト王子の視点で、「お姉様が不在の貴族院」はシャルロッテの視点でその一端が描かれています。

 

でも、ただ失踪しただけではなくて得たものもあって。それによってゲオルギーネの狙いを暴くことに成功したので、ギリギリ間に合ったともいえますか。

フェルディナンドの状況は彼視点のプロローグや、彼から教育を受けているレティーツィア視点のエピローグなどで窺う事が出来ますが。その救助のために手を尽くせるのも、その為ですからね。

成長できたっていうオマケもあったので、総合的に見ればプラスではあるんですが……。側仕えも着替えも無い状態で勝手に成長させたり、神々の振る舞いには常識の違いを感じるわ……。

 

あと今回は、書き下ろしSSで「各々の望み」でランツェナーヴェのレオンツィオ視点があったのが新鮮ではありましたね。

ただまぁ侵略者視点でしかないわけで、レティーツィアの側近を殺して魔石化した状態で攫うのに「ここで睨まれて過ごすより、ランツェナーヴェに来た方が幸せになれる」とか考えてる辺り、頭お花畑かよ……。

いやまぁ、実際中央の騎士団長まできょうりょくしてるので、成功する可能性は結構あるつもりなんでしょうけど。

エーレンフェストの聖女の怒りに触れてるんだよなぁ。くわばらくわばら。


本好きの下剋上 第二部 本のためなら巫女になる5

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「――君は何者だ?」

 

神殿の側仕えを増やすことにしたマイン。

ヴィルマとロジーナを迎え入れますが……前の主の常識を持ち出してくるロジーナに周囲は困惑する事に。

それぞれの意見を聞いて、「わたくしでは貴女のクリスティーネ様になることはできません」とマインは告げます。

 

その直前に、仕事をしないなら必要ないとも断言してますし線引きはハッキリするタイプですよね、マイン。考える猶予を与えたり、ある程度の温情をかける性質でもありますが。

でも、初期にこうして意見をぶつけた上で、ロジーナが変わろうとしてくれたのは良かった。

 

絵本を作るためのインクを作るための準備……から、いざ形にするまでが早いんですよねぇ。ゴールが分かってるのは大きい。あと、マインの熱意も。

とは言え、版画にしようにも線が細かすぎて上手くいかなかったり、最初っから成功するわけでもないですが。目的のためには試行錯誤するの惜しみませんなー。……マイン自身には体力ないから、周囲に割り振る形ですが。それで成果出してるなら問題ないでしょう。

 

子供向け聖典を作るために、平易にした文章の下読みを神官長に頼んだところ、まとまりすぎているために怪しまれることに。

その正体を問う言葉が出たところで終わってるのが、コミカライズの構成として上手い。

……まぁそのあと番外編としてイタリアンレストランの下見風景とか入ってくるので、空気は緩むのですが。

 

巻末SSは「マインと赤ちゃんのお迎え準備」。トゥーリ視点で、タイトル通り新しい子供のために色々と準備している話ですね。年少の子へ下げ渡されていく衣服の中にはおむつもあるみたいですが、時期が悪くもらえるものはなかった。

そうなると自分たちで縫う必要があるけど、マインは縫物をしない。下町のお嫁さんとしては失格なので、言って聞かせないと!と奮起していましたが……母からマインは虚弱すぎて普通の結婚は難しいという話や、かつてあった彼女の癇癪について聞いて。

家族として近いけれど、見えてないものも色々とある、と言う話で難しいものです。

本好きの下剋上 第三部 領地に本を広げよう!4

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「事実はどうあれ君はもう恨まれている 対処せねばすべて失うぞ」

(略)

そうやって生き抜いてきた人を前にして わたしは 何も言えなかった

 

印刷をある程度形にして、演奏会への準備を整えたマイン。

お茶会の方は母2人が整えてくれたとは言え、よく間に合わせたものです。

人数の多さ、盛大さが凄いというのが伝わってくるのいいですねぇ。どんな世界でも推しを推す人々の熱量に敵うものはないと思える描写でした。

 

本編読んでて「貴族は感情を隠すもの」というのが分かってくると、女性のお茶会という場とは言えこれだけの事が起きたのはにわかには信じがたい。

愛の歌聞いてドキンッってなってるシーンのクリステルが可愛くていい感じ。……その後母が倒れてそれどころじゃなかったでしょうけど。

 

3SSを読んでからだと、トゥーリの「わたしこの仕事だけは絶対に誰にも取られたくない」という言葉に重みが増してていいですねー。

失敗しながらも神殿長として励んでいる彼女の前に出てくるのが、ハッセでの諸問題。

貴族社会に不慣れなマインには負担になっていくわけですが……コミカライズではまた追々の事ですね。

小神殿の視察に赴くとき、「神官長にゴネられていた」と書かれているのが中々愉快でありました。

 

書き下ろしSSはランプレヒト視点「おいしい料理と面倒事」。

ローゼマインの美味しい料理を堪能した後、演奏会のために騎士を動かすために動くことになった彼ですが……ジルヴェスターに漏れたのってここからなのかい!

正確には彼の休暇申請を受けたオズヴァルドからの問い合わせみたいですけど、うっかりミスではあるな……。

本好きの下剋上 第三部 領地に本を広げよう!3

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「わたくし あなたの作る簪を大事に使いますね」

 

タウの実を使ったディルクの魔力吸収からスタート。

秘密をお貴族様から隠しつつ、孤児院の子を助け、印刷業の利益にも繋げる。

この世界の情勢に詳しくないし、平民の家族と読書が大事過ぎて暴走する事も多いですけど、マインって結構スペック高いんですよねぇ。

神官長の対応にちょっとイラッとした後、本を餌にされたことですぐに機嫌直したり、上下幅が激しすぎるのは確かですが。

 

貴重本棚を取りにいったらいったで、隠されていた文箱を見つけたりしてます。

要所で大事な発見してるから、凄いですよねマイン。本人にほぼ自覚ないのも同じくらい凄いですけど。

……自分と重ね合わせて、一部を取り除いてますが。事情に明るくない君の検閲は良くないと思うよ……。

 

後は、神官長を交えた作曲風景。前世のアニメソングが、見事な愛の歌へリメイクされる場面は雰囲気あるカットが挟まったこともあって、一層迫力があるというか。ギャップで笑える。

コミカライズで騎獣作成シーンがコミカルになってたのは笑えてよかったですね。神官長は頭痛そうでしたけど。

 

書き下ろしSSはトゥーリ視点の「マインと会うために」。

タイトル通り、立場が変わってしまった妹に会うために礼儀作法の特訓をしてるシーンから始まります。

新しい編み方を開発している一方、まだまだ至らない自分が重用されてる部分を失くさないよう、拙いながらも駆け引きしてるのは成長を感じた。ルッツからのアドバイスがあったのも大きいですけど。


プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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