気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

榎宮祐

クロックワーク・プラネット3

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代償を支払ってもらう、と彼は言った。
それはつまり、払う必要のないものに代償を求めない、ということだ。
同時にそれは、自分が代償を払うことを躊躇わない、ということでもある。
(略)
ただ己の大事なものを傷つけた存在に対して、その代償を求めただけ。その為に必要なあらゆる代償を覚悟した。
これはただ――それだけの事なのだ。


榎宮祐とその友人、暇奈椿による共著。
……のはずが、今回暇奈さん協著になってるんですが。
まぁ、後書きによれば、作業量半々になるはずが、やり取りしている中で大体榎宮祐さんが書いたからこういう書き方になっているそうですよ。
いや続き読めるなら何でもいいんですけど。てっきり榎宮祐さんの体調の問題で続きでないのかと思っていたら……二人での執筆とかは中々手間なところがありそうですよね。

閑話休題で本編。
前回の最後に起動した、巨大兵器。
時計仕掛けの惑星において禁忌とも言える、かつて人類が活用していた電磁技術を用いた攻撃。
ま、名目上は禁止されていても各国秘密裏に実験したりはしてるみたいですけど。
敵の攻撃によってハルターとかも活動停止してしまう訳なんですが……
自力で脱磁できるとかYシリーズまじチート。まぁ、アンクルはすぐに動けましたが、リューズの方はちょっと無茶してしばらく活動停止してましたけど。

ナオトの本性が出てきた、といいますか。
これまでは、単純に異能とでも言うべき耳を持っているだけの少年で、機構を愛しているっていう面が出ていましたが。
いざ覚悟を決めると彼ほど怖い相手もいないっていうのがよくわかる感じでしたね。
マリーはマリーで天才という評価に恥じない成果を信じられないほどの短時間で上げてましたが。
この二人のタッグは本当に敵なしなんじゃないかって感じがします。
異能による知覚と、調整・整備する技術。
お互いにない物を持っていて、補い合って活動をしていた感じですが。
今回の事件を通して、それぞれの蓋が外されて、こう、恐ろしい存在が二倍になった感じすらするんですがどういうことなの。

兵器を持ち出した敵の思惑通り、政治家とかが面白いぐらい混乱していて、呆れるを通り越して笑うしかなかった。
唐沢さん本当にお疲れ様です。常識人があの中に一人とかかなり大変だったろうに。
実際最後仕事頑張りすぎて痛い目見てますけど。なかなかいいキャラだったのでいつか再登場してほしいなぁ。

序盤は、反撃のための糸口探しってことで若干冗長な感じもしましたが。
いざ行動を起こせば、一チームとしては戦力過剰だからなぁ、コイツラ。
おっかないにもほどがある実行力を以て、途中綱渡りこそあったけれど、目的を達成するんだから流石。
今回の事件は解決したものの、謎は残ったというか最後にあからさまに黒幕自称する怪しい輩からの通信があったりしましたしね。
敵さんの目的はいったい何なのか、気になるところです。


エアリセ1~4

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「なあ、わかっているんだろ? いくら我慢してもそれはお前の勝ちにならない」
「負けたくないんだろ?」
(略)
考えて見れば当然の話 要するに 勝てば負けないのだ


ノーゲーム・ノーライフの作者さんの漫画家としての作品ですねー。
『クロックワーク』の共著者だろう「相方の椿」さんと同人で作った先品をリメイクしたものだそうですよ。

洗練されていないというか、うまく世界観がつかめない部分がある。
エアリセという都市伝説。
病まず、飢えず、老いず、死なず、ただ人に幸せを与えて消えていくという妖精。
ま、都市伝説なんで嘘も真実もごちゃまぜになっているわけですが。
そんな、都市伝説のエアリセの少女と出会った少年の話。

エアリセの少女メインで進むのかと思いきや、2巻は少年サイドのストーリー。
いちごさんが最強すぎて。
いや、一般人ですけど、なんか勝てそうにない空気がさすが。

「今からシンジちゃんは酷い目に会いますがそれは次のうちどれでしょうか」
「ひ ひぃぃ いちごお姉様ッ」
「1、洗いざらいを吐いて死ぬ 2、洗いざらいを吐かずに死ぬ 3、このまま死ぬ」
「さぁどれ?」
「で できますれば生存ルートを残して頂きたくぅう――ッ」 

うん、怖いね。
その前に荒事担当だろう男集団を蹴散らしてきてるからね。
 
3巻では、そこまでに存在と能力だけがちまちま出てきていた「猫のエアリセ」のエピソードが描かれてます。
なるほど、大変だったんですね、というと一気に安っぽくなってしまいますが。
王道の展開だなぁ、と思いましたよ。 
狐のエアリセの目的がよくわからんなぁ、といいますか。

一応4巻で完結しています。
ただ最後はちょっと巻いていたのかなーみたいな感じが。
始祖三姉妹とか十六夜の目的が結局何だったのか、判然としない部分があるのですが。

エアリセ (1) (DENGEKI COMICS (C147-1))
榎宮 祐
メディアワークス
2006-05-27
エアリセ 2 (電撃コミックス)
榎宮 祐
メディアワークス
2007-01-27




 
エアリセ 3 (電撃コミックス)
榎宮 祐
メディアワークス
2007-08-27
エアリセ 4 (電撃コミックス)
榎宮 祐
アスキー・メディアワークス
2008-05-27


ノーゲーム・ノーライフ6 ゲーマー夫嫁は世界に挑んだそうです

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――人は愚かだ。
愚か故に、その愚かさに殺されまいと、知性を、知恵を磨く。
今日まで生き残った――生きる価値なき世界でそれでも生き残った。
そのために知性と知恵と技術の全てを賭した者たちが。
――誇り高き愚者、尊敬すべき弱者でなければ何だというのか。


唯一神テトは……行き倒れていた。
おいおい何やってんの神様、って思いましたが元・遊戯の神としては、挑んでくる相手がいないでただ待ちづつけているのも暇で仕方ないようで。
能力に枷をつけて、他の種族を装って、ふらふらとゲームして過ごすのが日常になっているとかなんとか。
で、今回は人類種になってふらふらと空と白のところに『来ちゃった』とかやる予定だったそうです。
きまぐれに数日寝食なしにあるいたら、そりゃあ人類は倒れるでしょう。
行き倒れていたところを発見したのは、いづなで、食事を得た彼は、いづなとゲームをしながら昔話を始める。
そう、かつてあった大戦の折にあった「語られない神話」を。

つまり、だいだいジブリールのせい。
テトが語る幽霊たちの物語。星を割る大戦において、人類がいかにして生き残ったのか。
あれだけの凄惨な世界で、希望などない世界で、それでもあきらめず、ただ一つの勝利を求めた人類の話。
既存のキャラがほとんど出てこないうえ、1巻で大戦を描くという事で駆け足な部分もないとは言いませんが。
それでも引き込まれる、圧倒的な迫力がありました。
リクとシュヴィの二人の関係が心地よかった。
それだけに最後の泥仕合は辛かったけど、それでも成し遂げたリクは強かった。

リクにひきつった笑顔を返したテト。
遊戯の神として、遊びほうけているようにも見えるけど、テトなりの悩みとかもあるのかなぁ、とか思いましたがね。
次回は、ついに序列第一位、神霊種に挑みます。
大戦で描かれていた、神霊種、天翼種を作ったアルトシュの力は圧倒的にすぎましたが。
それに喧嘩を吹っ掛けた『  』の二人組はいったいどうやって勝つつもりなのか。
今から楽しみでなりませんが、この作者さんに関してはくれぐれも体を壊さないで下さいと一緒に言いたい気持ちです。


【アニメ】ノーゲーム・ノーライフ 第1話 『素人(ビギナー)』

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『  』がネトゲの対戦で4人で1200人を圧倒する場面から。
不正ツール使っている相手でもかなり余裕で勝っているあたりはさすが。
結構動きがキレイかなぁ。
独特の府に来あるイラストを、うまく扱っていると思います。
今回はディスボードに二人が召喚される話になるので、盛り上がりという部分では少し物足りないのがありますけど。
まぁ、序盤も序盤ですから、これから盛り上げていってくれることを期待。

テンション落ちた時の二人のダメっぷりがどう描かれるかがちょっと気になりますね。
テンションの高さでいえば、召喚した時のテトが超ノリノリで笑えた。
本当に楽しそうですね、という感じで。
胡散臭さもばっちりです。
そんな状態で十の盟約の説明をするとか。
空に突っ込まれてますけど、そんなことしている場合か。

世界の説明をしている盗賊が、無駄に渋い良い声してましたね。
これを持ち物全て巻き上げられて、パンツ一丁(正確にはふんどし)で言っていると思うと……笑える。
ポーカーするシーンとか、宿屋の人と話すときとか、雰囲気は出ていたので楽しみにしてます。
相手が「ロイヤルストレートフラッシュ」と叫ぶときが、無駄に巻き舌になっていたりしましたね。楽しんでやっているんだろうなぁ、という感じが見えました。

クロックワーク・プラネット 1

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榎「いやいや、恩師の受け売りだけど、『設定は作中で語れ。じゃないと読者は驚かない』というのがあってね。あえて設定書というものは作ってないんだよ」
椿「原作サイドである僕まで驚かせてどうしたいんだ君は――・・・・・・ひょっとしてさ、他のintial-Yシリーズの設定ってあったりする?」
榎「え、あるよ。全機」
椿「よーし、今すぐテキストに起こそうか、な! ホントに困るからそれ――!」


原作が好きなので購入。
リューズの中身(歯車)とか、都市の歯車の様子とかが書かれていて満足。
特に歯車な都市の様子っていうのがあまり想像できていなかったんですけど、あの見開きは結構インパクトありましたよ。
アレは凄い。しかし、別の疑問としては別の都市に異動するのって結構大変なんじゃないかなーとか思いましたが。
歯車として回転しているなら、陸路ではいけないだろうし。短距離用の飛行機とかヘリで移動するんだろうか。
絵としてのインパクトもありますし、アレを成し遂げた『Y』っていうのがどれほど変人だったかもよく判るというものですよね。
まぁ、地球を歯車で再現するっていうのが既に阿呆な試みなんですが、それを成し遂げるための歯車とかってどうやって作っていたんだろうか。
都市を載せられる歯車があるってことは、それを作るために、それよりも大きい「製造の道具」とかが必要になるんじゃないか。
いや、リューズとかのトンデモ能力使うと案外解決できてしまうんでしょうし、実際解決して、成し遂げた空こそ、歯車で再現された世界っていうものがあるんですけど。

ただ、リューズの修理の風景はちょっとなー。
歯車抜いちゃいけないんじゃないのか。修理風景ちょっと変更入ってましたよね。
機構好きの変人だけど、素人だからもっと手間取っていたじゃないですか。
なんかあっさり終わってしまった感じがあって、何とも言えない。

ところどころ違和感があるんですが。
まー、その分良いところもあるので、そこの温度差が解消されると良いんですがねー。

そして原作者2人が、対談式で1Pの後書き出してるんですが、こんなとこでまで共食い披露しなくても。いや、面白かったですけどね。


ノーゲーム・ノーライフ3 ゲーマー兄妹の片割れが消えたようですが……?

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「一歩でも間違えれば谷底じゃない。これの何処が“必勝”だなんて言えるの」
「一歩でも間違えれば必勝じゃねぇよ。だから、一歩も間違えないしかないだろ?」


東部連合に勝つための最後のピース。
それをゲームで獲得に行ったはずの、空の行方が分からなくなり、あまつさえほとんどの人の記憶から消えていた。
そのことに、白は怯え、恐慌状態のようになる。
が、「負けて兄の記憶を失え」という八百長のゲームを仕掛けられた際、「『  』に敗北はない」という理念を唱え、勝ちに行った場面が、絆が分かっていいですね。

しかし、空は、本気で正気じゃないっていうか。
よくもまぁ、あんなゲームを考え付くもんです。
そしてそれを実行できてしまうあたり本当に一種の怪物の類なんじゃないだろうか。

――なぁ白、人は変われるっていうけど、ホントにそうかな。

空が白に語った翼の話、完成されたものであるという考え、お互いの存在の前提。
作中でも語られてますが、本当にこの兄弟は二人で一人なんだなぁ、という感じがしますね。
やっぱり、良いですね。

そして、肝心の東部連合のゲームですが……
あれはアレで中々にひどい(褒め言葉)。

「――あのさ……寝返るって言おうぜ?」。

個人的にはこのあたりが好きです。
あんなふざけたゲームを国家間用に持ってくる根性は、素晴らしい。
しかし、技術に優れた種族とはいっても、あのゲームって一体どうなっているんですかね。
実際にゲームの中に入るとか、魔法の類に思えるんですけど。
獣人族って序列14位で、身体能力特化みたいな種族のはずなんですがね。
幾ら技術力合っても、あの手のゲーム作れるとか、一体どんな技術とか駆使すればできるんだろうか。
ファンタジー補正と言っても限度があるんじゃないかなぁ。さてはて。

ノーゲーム・ノーライフ2 ゲーマー兄妹が獣耳っ子の国に目をつけたようです

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「答えは簡単だ――『人類』なんて信じてないのさ」
「だけど――『その可能性』は信じてる」

タイトルからすると、獣耳っ子の国とゲームをするような印象を受けますが。
今回はその国とのゲームに対する仕込みの回ですな。
そして3巻に続く引きになるので、これから読む人はちょっと注意。

かなり追い込まれている『人類種』の国をどうにかするために、この世界の知識を求めている空と白。
しかし、この国には求めるゲームの情報はほとんどなかった。
それもそのはず。
類まれなる愚王と称された先王が「知識」を賭け皿に乗せ負け、天翼種に図書館を奪われてしまったから。
ならば、知識を得るついでに、序列六位にあるその天翼種を仲間に引き入れてしまおうと、『  』が動き出す。

宣言した言葉が、実態化する具象化しりとり。
それを用いたゲームで、空の打った初手がまず驚きですよね。
途中でエロネタ挟むのも相変わらずと言いますか。
超好意的に解釈をするのであれば遊び心と余裕をいつでも持っているというところでしょうか。

そのゲームを超えた後、望んでいた知識と、望外に得たゲームの知識を合わせ、空たちは、ついに動き出す。
対策を万全に整えてから動き出す。
挑んだときには、もう勝っているという、その行動が恐ろしい。
空のハッタリが毎回驚きを与えてくれるんで結構好きです。
心を読むという序列14位の獣人種。
世界第三位の規模を持つその大国を呑み込もうとする空たちの策略。
最後のピースを求める為に、空がとった行動が、また壮絶と言いますか。

この終わりは結構酷い。続きが気になってしょうがない感じですね。
俺は、先に読んだ人から「終わりが凄いことになってるから次出てから読んだ方がいいよ」と言われていたので、素直に3巻出てから読んだので、被害を受けませんでしたけど。




ノーゲーム・ノーライフ 1 ゲーマー兄妹がファンタジー世界を征服するそうです

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……絶望から希望を見せていく
……希望だけを語るものは楽観主義者であり。
……絶望だけを語るものは悲観主義者だ。
……絶望の淵に、暗闇にあってなお。
……希望の篝火を灯す者だけが大衆をひきつける。 

 
作中のある場面の地の分を引用。
本当は間に台詞が挟まっているんですが、抜粋という事で。
空たちが大衆に向かって宣言する場面なんですが、そのセリフは、是非実際読んでほしいですし。
 

ニートで引きこもりだが、ネット上では都市伝説とまで言われる天才的なゲーマー兄妹、空と白。
二人で「  」(くうはく)として活動している二人を、ある日、“神”を名乗る少年が異世界へと召喚する。
そこは、国境線すらもゲームで決まる世界だった。
魔法が存在する中、魔法の才もなく、16の種族が存在する中で序列最下位の追い込まれた種族である『人類種』。その王を決める大会が、『人類種』最後の領土で行われているところだった。

中々に痛快と言いますか。
空と白が単体だと、すごいダメ人間なのに、二人そろった途端に、これ以上ないほどの結束を見せるといいますか、本当に、二人で一人とでもいうべき状態を見せてくれるのが凄い。
2人のやり取りは結構好きです。
今回は、異世界で王になるための行動をしていく感じですねー。
まぁ、そのためにやったチェスゲームの最初の奮起させるための宣言はちょっと酷いけど。
そこからの逆転模様っていうのは中々。

最新五巻まで出ていますが、やっぱり面白いですね。 

クロックワーク・プラネットⅡ

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「(前略)このボロボロの世界に価値なんてないかもしれないけど、それでもちゃんと意味はあるんだった」
なぜなら価値を認められるのは他人でも、意味を認めるのは自分だからだ。
だから人は誰しも自分の生まれてきた意味を探すために生きていく。


寿命を迎えた地球を、歯車によって再生させた、「時計仕掛けの惑星」の物語。
1巻が4月に出ているので、実に8か月も間が空いたんですねー。
次回に続く展開になっているので、もう少し早く出てほしいようにも思います。
しかし、この作品。「榎宮祐」という爆弾を抱えているわけで。
・・・えーっと、本気で倒れちゃわないんでしょうか、大丈夫? と心配になる事間違いなし。
著者コメント欄でも合同の後書きでも、結構すさまじいことになっているようにも思うんですが。
まぁ、とりあえず、仲良いですね、とは言いますが。お大事に、とも言いたいところ。

さておき、本編の感想です。
表紙にも帯にも登場しているので丸わかりですが、1巻で出会えなかったリューズの妹「アンクル」が登場します。
この調子で一巻ごとに「Y」の遺産を継いでいくんでしょうか。
次回は流石にそこまでの余裕ないように思いますけど。
兵器として作られたというアンクル。その性能は、前回圧倒的な力を持っているように見えたリューズに勝ち目がないといわせるほど。
いや、前回確かに「最弱」とは言っていたけど、現行の兵器ものともせずあっさり破壊したリューズに勝ち目ないとか、ちょっと製作者はっちゃけすぎじゃね?
地球を時計仕掛けで再生するって発想自体がとちくるってますけどね。

プロローグの前、序章も序章というか、最初に軽く触れられてますが。
永遠は存在し得ないのが真理だというのなら。
その真理さえもが永遠ではありえないのだと。

『彼』はそう考え、だったら直せばいいじゃないと思ったのだろう、とそんな感じに書かれてます。
まぁ、今回のアンクルの機能が『永遠』を体現する「永久機関」だっていうんだから、そっちの話でもあるんでしょうけど。
こういう前提からひっくり返そうとする発想は結構好きですよ?

1巻の最初に、ナオトたちが秋葉原でテロをしていた理由とかに迫る内容でした。
しかしまぁ、京都をパージしようとした前回も思いましたが、人類終わってね?
いつの世も悪い事考える人は尽きないというか、エゴによって回っている部分あるよなぁ、とか痛感させられました。
地球が終わった時に、ある意味で終わってしまった部分もあるんじゃないかと。
歯車で再現され、異常が出た場所をパージすることで延命してきた世界。
時計仕掛けだというのなら、本来僅かでもかけたら動かないはず。
しかし、パージされてなお、他の場所が補い、周囲にいくらかの影響を及ぼしながらも、世界は存続している。
そのことに対する甘えというか、理解できずに思考放棄した人が多すぎるんでは。
いやまぁ、『虚数時間』とか『永久機関』創っちゃう人間の制作物を理解できる人間なんてそうそういてもらっても困るんでしょうけど。

政府も、軍も、五大企業も。
だれもがあちこちで歪になってしまっているんじゃないか、と思います。
第3章で、マリーが尋問した相手の叫び。
勝手なことを言うものだ、と感じましたが、あの人にとっては確かにそれが事実だったんでしょう。
主人公たちにとって優しくない展開になりながら、それでも折れない彼らがいいですね。
前回の事件は赦せないだろうし、それに報復があったのも自業自得。
それを許容できずに、あちこちで歪みが表面化してきた感じでしょうか。

作中で「数百年かけて足がかりを得るような作業」を2人は「3日」で仕上げます。
ただ、この惑星が時計仕掛けにされてから、1000年。
2人がやったテロ行為につながるようなものは別として、この機構を理解しようと、足がかりを作ろうとした人はいないんでしょうか。
『技師団』も維持と保全が仕事のようですし、彼らにもわかっていないこと多いんじゃないかなーと。
前回みたいに、変な思惑もって動かれることもありますし。
まぁ、そんな背景の事とか考えながら読んでいましたが。

とにもかくにも、前回描かれていた、キャラ同士の愉快な掛け合いだったり、2人の異能と才能の合わせ技だったり、独特の世界観にあふれる魅力とかは少しも衰えることはなくここにありました。
気に入ったシーンもいくつか。
リューズとナオトがマンガ喫茶のカップルシートでイチャイチャしまくってたりとか。
マリーとハルターのアクセルとブレーキじみた掛け合いとか。
アンクル修理するシーンは、アレをやった「Y」ってやっぱり頭おかしいわ、っていうか。
凡人なんでナオトが何を言っているかさっぱりわかりませんでした。アレわかるのナオトくらいだろうけど!

しかし、いい作品読むと心が潤いますね。
満喫しました。


クロックワーク・プラネットⅠ

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「理想を追求するのに最も都合のいい立場って何だかわかる?」
(略)
「それはね――テロリストよ」


ラノベには珍しい共著という形式を取っています。
MF文庫Jで『ノーゲーム・ノーライフ』を刊行している榎宮祐と長年の友人であるらしい暇奈椿。
この二人の発想がいい塩梅で混ざって、読んでいて楽しい。
2巻を読んでから1巻の感想を書いてるんですが、マリーが一度叩きのめされて、それでも折れなかったところには好感が持てます。
しかし、ただ1巻だけを読んだ時点では痛快だと思ったことが、跳ね返ってくるんだから、容赦ないですよね。
まぁ、2巻がからむ感想はおいておいて。

寿命を迎えた地球を、歯車の力で時計仕掛けのように作り変え、延命している世界。
作り変えられてから1000年後、地球をつくりかえた異才の制作物をもってしても、機構には歪みが生じ始めていた。
まぁ、現在でもある機械式時計も、部品の摩擦を防ぐための油が揮発するから、数年に一回はメンテしないといけないんですよね、確か。
それを地球規模でやったら、メンテナンスもそりゃあ大変でしょう。
ましてや、地球の機能を歯車で再現するなんて、トンデモな代物を扱いきれず、あちこちに異常が生じ始めるのも、まぁ致し方ないことなんじゃないかと。
しかし、作り変えられてから1000年が経過しているというのに、危機感とか無いんですかねぇ。
歯車を用いたさまざまな道具だったり、自動人形だったり、果ては兵器だったり。
まぁ、諸々新しい技術っていうのは生まれているようですけれど。
延命処置に甘えて、抜本的な対策っていうのを取れているんだろうか。
地球が死にゆく100年は対策を練るのに短かったでしょうけど。
作り変えられた世界が永遠だと約束されたはずがないのに。

まぁ、そんな状況に対してはいくらか不満はありますが。
その程度の事を置いていくくらいには、この作品に入れ込んでますな。
一読して、面白かった! と思えるのは当然ながら、何度も読み返したくなる魅力があります。

共著である二人が、それぞれに考える天才観を描き、その2人が最後にやり遂げたことは素晴らしい、の一言。
ナオトの持っている異才、異常な聴覚とそれによって得た情報を把握する能力。
マリーが努力と天性の才を持って獲得した、一級の時計技師としての技術。
それぞれのキャラが自分の主張を持っていて、それに従っている様がいいです。
ナオトは勉強できなくて、機構フェチの変態ではありますけど、それだけに自分の「耳」と欲求には素直で分かりやすいキャラなんじゃないでしょうか。
その異能と、リューズを修理できた発想についてはまったくもってわかりませんが。
まぁ、それはどちらかというと制作者の「Y」が一番頭おかしいと思っているので。

ただまぁ、その割に敵役はいつの時代においても進歩がないというか。
今回は、分かりやすい悪役も出てきていましたが、組織として腐敗している部分もあるんじゃないかと。
マリーが打った報復の一手が容赦なくていっそ笑えましたね。
2人が協力するときの熱とか、痛快さとか、日常でのドタバタとか。
その全てが、うまくかみ合って、回っているんだなぁ、と思いました。


プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
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