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「……悩ましいんだ」
「失うのが惜しいものがかかっていたら、悩むだろう。動かない間は失わずに済む。お前の言う通り不誠実だがな」
「失うって、どういうこと? イルミナさんの気持ちは決まってるんだから、あとはニア次第でしょ?」
それだけで済むなら迷っていない。
ダンジョン討伐を終えてスタンピード問題も解決したことで、平穏を取り戻しつつあるノーウィットの街。
領主の言を伝える使用人が、結界装置をつくる錬金術師相手に「素材の使用量が買取規定の額を超えた分は自己負担」とか言ってくるあたり、不正してそうな気配が強そうでしたけど。
無事にスタンピードを乗り切ったことで、リージェが錬金術師協会に出していた苦情がまわりまわって不正を暴き、領主が変わることになったとか。
一度は街を見捨てるに等しい決断をした国と協会ですけど、無事に解決したからにはちゃんと仕事をするあたり、罷免された領主よりはマシだったみたいですね。
次が決まるまでの繋ぎなのかもしれないが、新たに赴任してくる領主がカルティエラ第三王女と言う話をリージェから聞くニアよ。
リージェにもツッコミ入れられてましたけど、世俗に疎すぎる。
素材にこだわらずリージェでもB+評価のヒールポーションを作れるようになっていましたが。
錬金術師になれるだけで、結構な才能が必要と言われる世界みたいですが。
そんな中でもリージェは、最高峰と言われる亡き祖母からの指導を受け、比較されて落ち
こぼれ扱いされていても王宮錬金術師になれる程度の実力はある。
錬金術師の中でも、言い方はアレですけどちょうどいいレベルの人材だったんですよね。伸びしろはあるし、職業故の地位はあっても平民なのもあって視点は民に近いし。ニアに色々常識を教えてくれる相手として頼もしい。
ニアの事慕う気持ちも芽生え始めてるみたいですし、それ抜きにしても属性感知とかの指導を受けて師匠と慕ってる相手なので裏切るなんてことも無いだろうし。
王女様がやってくることで、王宮錬金術師のトリーシアやイルミナも滞在期間を延長することになったり。結界を作り上げた錬金術師たちということで、ニアはリージェに表向きの功績を押し付けようとしてましたが……トリーシアのように、薄々察してる人はいて。
というかトリーシアは自分の実力を過信せず、ニアの助力があってこその成功だ、と思っているあたりの目利きは確かなんですよね。
ただ、自分が満足できないからと表向き機器洗浄しかしてないニアを式典に引っ張り出す事を決定事項として通達してきたり、いろんな基準が貴族的すぎる。ニアが魔物であること隠して目立たず生きたいと思ってるのと、相性悪いんですよね。
まぁトリーシアも悪い子ではないというか、リージェ宛の見捨てる通達を見つつも足掻いてできる事やる気概はあったし、ニアが迷惑がっているの察知してちょっと気まずそうになってたりとか、これまで彼女の周りに居なかったタイプで判断間違えやすいという点は同情できなくはない。
でもリージェが有志として来てなかったらノーウィットの街壊滅してたかもな……とは思いましたね。
ニアの作ったポーション、透明感とかから素人目にも「違う」ことが分かる代物らしくて、近隣の街グラージェスに赴いた時に転売されてるっぽいのを目撃して「出来の良さがバレてる」ことが明らかになったり。
王女付きっぽい、魔物とのハーフな双子の少女騎士シェルマとリュフマに、「稀有な経験をしたな」と助言をついしてしまったり。
第三王女殿下と交流した結果、なぜか兄のように慕われることになったりと。ニアの周囲は、スタンピード騒動以前とは打って変わってにぎやかになっていくわけです。
隠していた羽を公にして表向きはハーフと言う扱いになったりだとか、望まない変化もおきつつ……まだ踏ん切りがつかない部分もありつつも、変化する方向へ進み始めてるんですよね。
そんな中で、魔物側に神人と呼ばれる存在が降臨して活発になったりだとか色々起きているので、休まる暇がないんですが。……功績も、上げやすそうだから、なんとかプラスにしたいものですね。
巻末SSは「第三王女の秘密の日記」、「愛ならいいけど恋じゃダメ?」を収録。
「愛なら~」の方がリージェ視点で彼女の胸中が描かれているので、良かったです。