「勝ちたくないなんて嘘だろ
負けるのが嫌だからって 自分の気持ちをなかったことにすんな
誰より朗読が好きな癖に」
離島に住む少女、花奈は幼少期にテレビで見た朗読劇に憧れて、それ以降自分でも朗読会を開いたりしていた。
島には中学校まではあるけれど、高校は本土に行くほかなくて……けれど、帰りのフェリーの時間もあるから、部活に入るのも難しい。
そして島の子供には花奈と同世代の子はおらず、「みんなのお姉ちゃん」として振舞わなければならない彼女は、我儘も零しにくい環境があった。
だからか、花奈はだいぶネガティブというか自分に自信がない少女なんですよね。
そんな彼女の朗読会を聞いた本土の高校の先輩が、花奈の声質を評価した上で放送部に誘ってきて。
勧誘のためにグイグイ来て、花奈の家に泊まりに来たりするあたり行動力が凄まじいですよね、瑞希先輩。
島育ちだったこともあって花奈の朗読技術は我流だし、放送部の全国大会「Nコン」の存在についても知らなかった。顧問に「(声に力があるのは間違いないけど)今は声質でごり押ししてるだけ」って言われてましたしね。
好きだから朗読を続けてきた花奈でしたが、大会を目指すスタンスの同級生の姿などを見て、揺れることになります。
いつも一人でやっていたから、同じ方向を向いて頑張れる仲間がいる環境は楽しい。
でも、同時に普通に勝ち負けという物差しを持っていて、それは今まで自分が持っていなかったものだから、怖さも感じていた。
そんな彼女の背中を押してくれる瑞希先輩が格好良くて良かったですねぇ。
……花奈が幼少期に見とれた朗読をしたとある人物について、家で暗黙の了解があるとか、色々不穏さもあるんですけど。花奈の持っている「好き」を失わずに進んでほしいと応援したくなる作品でした。