気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

涼暮皐

君を「ナツキ」と呼ぶまでの物語

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「単純な差だよ。すっかり諦めた俺と違って、不知火は今もそれを信じてる」

「……………………」

「――俺には、それは裏切れない。あいつの力になりたい理由なんて、それだけだ」

 

電子だとすぐに目に入ってきますが、紙書籍だと帯で隠れる部分に「名月、夏生、奈津希、懐姫、なつき 進学した高校で5人のナツキと出会った男――かつて幼い頃に出会った少女「ナツキ」はこの中の誰なのか? この中の誰を下の名前で「ナツキ」と呼ぶことになるのか?編」という、超長サブタイトル?というか、補足が書いてあって笑えますが。

 

サブタイトル通り、ヒロインとして登場するから全員がナツキという同じ名前を持つ設定の作品です。

主人公である景行想くんは、かつて母に連れられてパーティに参加し、そこでナツキという名前の少女と仲良くなった。しかし……彼女が親から「友人は選べ」と言われて頷いているのを見たことがトラウマになって、ナツキという名前を呼べなくなってしまった。

さらに中学時代にトラブルに見舞われた友人を救おうとしたものの、その友人に手ひどく裏切られる経験までして。

 

高校進学に際して、彼は征心館という中高一貫の高校へ編入することを決めて。

そこでこれまでとは違う「打算的に、損得勘定で人間関係を構築する」という目標を掲げることにしたわけです。

樹宮名月という少女から勧められたこともあり、学食の食券などを対価にちょっとしたお手伝いをする、学校内での仕事を始めたりもしてたわけですけど。

 

……三つ子の魂百までというか、なんだかんだ根は善良なのが変えきれてない感が凄い。

母の仕事上の付き合いとは言え、名家の令嬢なんかも参加しているようなパーティーに参加しているとか、何だかんだ良い環境で育ってますよね想くん。

父親を亡くなった状態で、姉と想と双子の妹と4人を育てているわけですし、涼暮作品メタ的に凄い想の母親にはすごい女傑の気配を感じている。

 

「社会で生きる以上、値踏みされることは多い」としっかり教えてくれる上で「想には向いてない」と教えてくれる母の下で育ってるわけですし。

想の姉妹は、想に色々アドバイスしてきてるし、なんか想くんより生きるの上手そうだな……。想くん、涼暮作品の主人公にありがちなトラウマ抱え込んで、自分の在り方を貫こうとするタイプの子なんですけど、その中でも特に揺れ幅が大きいというか、まだ軸がハッキリ定まってない感じはしましたね。

 

ヒロインの名前が全員同じ、という設定開示をするためにそれぞれのキャラ紹介的な面が強く、一応今回は、子役経験のある不知火ちゃんに深掘りしていく展開も見せつつ、序章という味わいだったので、刊行続いて他のヒロインの深掘りも見せて欲しいものです。

個人的には樹宮と水瀬の2人が気になっているので、その2人のヒロイン回は描いてほしいと思ってるんですが、さてはて。

 
ちなみに、5人目の登場はかなり終盤なんですが。電子書籍特典として付いてくる書下ろし短編がタイトルそのまま「5人目」となっていて、想と5人目のトークが楽しめるのでオススメです。

路地裏ストレンジャーズ

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「一日一前――なんでもいいから、迷ったときは一歩だけでも前に進め、が小さい頃から俺のモットーなんだ。そういう風に生きろってのが母親との約束でさ。それを守ってるだけ」

「一日一前……ですか」

「昨日より、何かひとつでも成長しろ、みたいな意味かな。それか単に、迷ったときは後ろに引かずに前に出ろ的な精神論かもしれないけど。今のところ破ったことはないんだ」

 

電子限定レーベル「ダンガン文庫」作品。

当初は自社サイトでの販売のみでしたけど、近ごろBOOKWALKERなどでも販売スタートしました。記事作成時点では自社サイトだと660円、他社ストアでは880円と手数料とかの関係かちょっと値上がりしてますね。

個人的には今以上に閲覧サイト増やしたくなくて、他社配信スタートを待っていたので思ったより早くて嬉しかった。

まだ1作しか読めてないのでレーベルの性質なのかは知りませんが、カラー口絵だけで物語中の挿絵は無し。カラー口絵2回(見開き1回、左右それぞれのページが見られる拡大状態で1回)出て来たのは謎。

 

と、そんなレーベルそのものについての話はこれくらいにして。本編の感想。

舞台は大宮。涼暮先生は、他作品と繋がりのある物語作りをされている方なので、色々と嬉しい描写が多かったですね。

ざっくり言うと、現代舞台の群像劇。

メインキャラは4人。

一般人である男子高校生・道風夕介くんは、ある日血を流して倒れている少女を見つけ保護することになって。

そんな夕介くんの隣に住む後輩、曾木原御伽。実はSF的な技術・組織に通じた人物であり……怪しげな事件の調査を上司から依頼されることに。

 

さらに喫茶店店主(代理)である和谷仄火。あくまで喫茶店店主(代理)が本業であるそうですが……実は魔術師であり、曾木原とは別の形で秘された世界に通じている人物であった。

最後の一人は、鈴木一郎という運び屋の人物。ケースに刀仕込んでそうな後ろ暗い人物だろうとなんだろうと、仕事で有れば運びおおせる人物であり……危険な場所に近づくと、嫌な味を感じるという異質な能力を持っていた。

 

夕介が見つけた白い少女、ロク。未来で作られた人工の精霊……的な何かだと自称する怪しい人物ではありますが。夕介は彼女を助けることを決めて。

ただ夕介があった時彼女は負傷していた……つまりは、それを為した人物がいるわけですよねぇ。そもそも、ロクは妙な出生であるようでしたし。その根源に通じる人物もまた登場して。そうした様々な問題に4人が、各々の事情から関係していくことになって……。

終盤にそれぞれの道が重なって、協力し合うという展開が実に良い群像劇してて好きでしたね。

 

夕介とロクのやり取りが最初から最後まで好きでした。群像劇なので4人全員主人公みたいなもんですけど、純粋なボーイ・ミーツ・ガールやってる夕介が特に好きかな。

曾木原ちゃんの特殊さとか、和谷の抱えていそうな事情とか。鈴木の奇妙な縁だとかいろいろ、掘り下げていったらもっと面白くなりそうな要素は多いので、続き読みたいものですけどね。

 

涼暮先生の作品好きで。先述の通り他の作品との繋がりが強い作風なので、大宮の結界壊されちゃって、「あらぁ」って気持ちにはなりました。

どうか腕の良い修復師が見つかるといいんですけど。それはそれで、大宮で新しい騒動が巻き起こりそうで不安ですがね。

あとは「きょーちゃん」の描写と、「きょーちゃんの妹」の情報が出てきたりするのが、ねぇ。他の作品とかをちょっと読み返したくなってきましたね……。

異世界帰りの英雄曰く3

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「鳴見さんのことできれば見守っていてあげてください」

「…はい そのつもりです」

 

袖コメントから3巻最終巻らしいですねぇ。悲しみ。

魔術師の家系に生まれたために、その道に進むしかなかった渡会。ずっと「こんなところにいたいわけではない」という葛藤を抱えながら生きてきたらしいですけど。

そんな状態でも異界証明に関する論文をまとめ上げていたのは偉い。……まぁ魔力量が微弱で、先達には「そんな夢見られる実力もないだろう」とバッサリ切られてましたが。

 

異世界に憧れて、望まず魔女と戦うことになった、哀れな操り人形。

憂が操っていた黒幕側にやとわれてそうなのが、漫画版のみの目線だと気になるところですよね。

大輝は負傷激しい熾を連れて脱出し、彼女の伝手を頼って治療を受けることになっていましたが。

 

そこで明かされるこの世界における設定開示とか好きなんですよねー。

一般人が生きている『科学の世界』と、魔術師たちが生きる『魔術の世界』そしてどちらにも縛られない『異能の世界』。それをもって三界として分類する考えがこの世界にはあり、トップがヤバそうな背景背負ってるのが触れられているので続いて明かされるのとか見たかったなぁ……。好きな作品のコミカライズだっただけに、惜しい。

異世界帰りの英雄曰く2

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「このままだと熾は殺されるんだろ なら助けに行くに決まってる」

「イカれてんスか頭!?」

「俺に言わせれば見捨てる方がイカれてる」

 

電子書籍で購入してるんですが、袖の作者コメントの部分とかも収録してくれてるの地味に嬉しいポイント。窪茶先生の描く熾、本当にかわいくて好き。

市内で生じた異変にいち早く気付いた大輝と熾。

怪しい気配のする方向へ赴いてみれば、神社に結界が張られていて……あからさまに罠ではあるものの、解決のためには踏み込むしかない。

そうやって近づいてみたものの、本来魔力は人間にとって害となるもので……大輝にとっては影響が大きく、途中で熾の帰りを待つことに。

 

「魔女」と呼ばれることを嫌う熾ではありますが、その来歴と能力は間違いなく「魔女」と呼ばれるものだそうで……。

その能力は普通の魔術師には出せない威力を齎すもので、スペックは高いみたいなんですよね本当に。

……とはいえ、敵も熾の存在を把握している以上は当然熾対策を取っているわけで、彼女は苦戦を強いられることに。

 

外で彼女の帰りを待つことにしていた大輝の前に現れた、渡会に雇われた魔術師の愛子憂という女性も「結界の先にあるのは熾を殺すための舞台」と称してましたしね。

その危険性を聞かされた時点で、逃走ではなく救助を選んで踏み込んでいけるあたりが、大輝の「異世界帰りの英雄」らしい部分なのかもしれません。

妨害を超えて熾のピンチに駆け込んできたシーンは実に主人公していたと思います。その後、必要に迫られたとは言え熾も結構大胆なことするんですが……。

1巻で「デート」って単語だけで激照れしてた熾の事思うと、なかなか味わい深いというか。もっと照れていいのよ……危険な状況を乗り越えた後で構わないので。

異世界帰りの英雄曰く1

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「お陰で助かったよ ありがとうな 熾」

「う…あ…えっと… …ごめんなさい 怪我させちゃって…」

 

カクヨムでの連載作品がカクヨムコンの漫画賞受賞して、コミカライズが刊行された形ですね。

原作の涼暮皐先生が推しの一人で、連載読んでいたのでコミカライズされて嬉しいです。

 

主人公の大輝は、かつて異世界に召喚され聖剣を携え魔王を倒した経験を持つ高校生。

とは言えこちらに帰ってきたときに聖剣は失われたから、持っているのは向こうで5年戦い抜いて得た経験と知識だけ。

向こうで何年も戦っていたのに、こちらの世界に帰ってきたときには一日も時間が立っていなかった。オマケに記憶になかった「凪」という妹まで生えて来ていて。幼なじみとも疎遠になるし、異世界に行ってた影響もあって成績は下降気味だとか問題山積ですが……それでも、彼は彼なりに日常に適応しようとしていた。

 

そんなある日、違和感を覚えて踏み込んだ先で、血を用いた魔法陣を目撃。

大輝がその関係者と誤解した少女・熾に攻撃されたり、異世界で見た(この世界にいない筈の)魔物とかいう存在が現れたりして、大輝は自分が思っていたよりこの世界には不思議が溢れていることを知るわけです。

 

貧乏魔術師の熾ちゃんは、魔女と呼ばれることを厭う以外は割と普通な少女なんですよねぇ。対人コミュニケーション能力が低くて、思わぬところで照れたりするし。大輝から初めて秘密を打ち明けられた場面とか、あちこち可愛いですよね。

コミカライズで絵がつくと、熾ちゃんのポンコツ可愛い感じが満喫出来てとても良いです。

1巻時点だと、世界観の説明が多くて事件解決への道のりは遠いですけど。中々いい味だしてるので、このまま続いてほしいものですね。

 

ネームレス・レコード Hey ウル、世界の救い方を教えて

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「ああ。ウルの力を貸してくれ――お前と一緒なら、俺は初めて英雄を目指せる」

「……まったく、世話の焼けるご主人様です」

 

科学も魔術も発展していた旧文明。

しかし今では見る影もなく……生きた機械によって追いやられ、人類は滅びる一歩手前だった。

それでも諦めず人類文明圏外域に踏み込む探索者も居て、過去には今の最前線となっている街一つを解放した英雄だって現れたが……彼もまた圏外域で倒れた。

今の人類は明確な先導役もなく停滞しているような状態のようですが、そんな彼らの希望となるのが『予言の英雄』。教会が公布する「絶対に当たる予言」に紡がれた、世界を救うに足る5人。

 

主人公のレリンは、幼少期からそれに選ばれるための努力を重ね、救道院というこの世界の学校において主席を取るまでになった。

――そして、彼は『予言の英雄』には選ばれなかった。

レリンの幼馴染や友人から4人も選出されていて、彼女達もレリンの夢を知っていたからか、傷に触れないように気を使ってあえていつも通りに振る舞ってくれたりもするわけですよ。

でも、その気遣いに気付けるからこそ、余計に痛いんですよね。

 

だからグレるって宣言して、一人で圏外へと踏み込むような自暴自棄とも取れる行動に出てしまうわけですが。

「――賭け金が俺の命だけなら、全てのハードルはクリアされている」とか言って、実際行動に移せてしまう辺り、覚悟決まりすぎてる涼暮作品の主人公味を感じましたね……。

目的が全くない訳では無くて、10年以上前に父が辿り着き「もし同じ仕事を選んだなら言ってみろ」と残した記録を相手にした、自分はまだ出来ると証明するための儀式みたいなものでしたけど。緩慢な自殺でもあったわけで。

 

それでもレリンは死ななかった。悪運強いなぁ。辿り着いた先でレリンを主と仰ぐ、美少女型で会話も成立する、特殊な機械生命体ウルと遭遇。

ウルはレリンに、このままでは人類は滅亡する未来を知っている。防ぐために必要な予言書のデータを持っている、という気になるが怪しい話を持ち掛けます。

それでも、親しい人々の命もかかっているからとレリンはウルと一緒に活動を開始して、「予言の英雄」にはばれないようにこっそりと戦い始めることになるわけです。

 

結構気になる情報も散りばめられているんですが、総じて1巻は世界観とキャラ説明が中心だった上、予言の英雄はまだ全員登場できてないって状態。

これからが面白くなりそうな作品ですから是非とも続きを読みたい……!

ちなみに電子版の巻末に特典SSが収録されているんですが、涼暮皐先生曰く「1巻だとほぼ出番がない《もうひとりの英雄候補》と一生コントする話」で、あながち間違ってなかったので、電子版もオススメですよー。フィリア、結構好きな予感がする。


今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。2

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「悪いな 僕は冷たい男だからさ」

 

コミカライズ完結巻。完結しちゃうのか……残念。

まぁ、コミック2巻で原作1巻分のエピソードをしっかり描いてくれてたので、区切りが良くはあるんですが。コミックで興味持った人は、原作2巻のプロローグ部分まで続けて読んでほしいなぁ。1巻エピローグの直後の時間軸からはじまる新設設計ですよ。

 

扉絵カラーで灯火、小織、陽星、玲夏のドレス姿が描かれててそれぞれ可愛いんですけど……玲夏は、ヒロイン枠なの??? とか。

コミック範囲だとヒロインとして登場してないから仕方ないけど、まなつちゃんVer.も見たかったな……って気にはなりましたね。

 

露店で小織と会って「都合のいい奇跡なんてない」という話を聞いて。その後実際に、星の涙によって失われたものを直視させて。

伊織は灯火が星の涙を使う事、あるいは使い続けていることを止めようとするわけですが。彼女も中々頑固ですからね……。

立ち去った彼女を一度は取り逃がしても、家が分かってるんだからと踏み込んでく伊織のメンタルの強さは素直に尊敬する。

 

その後状況が悪化したりもしましたが、なんとか乗り切れてよかった……と言う所でおしまい。

後々の事を思うと、この段階で灯火ちゃんが与那城玲夏と伊織を仲直りするように背中を押してくれてたの、大きいんですよねぇ。ファインプレー。

 

細かい所だと第7話の「入れ替わる…?」の後の姉妹のコマ、2人よく似てたんだなぁって改めて思いましたし。突然に家に来たことを咎めたら「お前にだけは言われたくない」って言われて「うぐっ…」ってなってる灯火ちゃんがなんかツボだったり、顔芸も楽しいコミカライズでしたねー。

今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。4 四度目の流れ星の日が来るからね

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「でも、ああ……わかったよ。それが小織の望みなら、僕が断れるはずがない」

「……そうするべきだから?」

「いや。――僕自身が、そうしたいと思っているからだ」

 

正直でないかもと思っていたところ、作者さんが頑張ってくださり読むことが出来た4巻。

完結巻と言っていいでしょう。正直なところ謎は多く残されていて、どこまで回答が示されるものかと思っていましたが……思っていた以上に情報が出てきて正直驚きました。

事前の告知でも後書きでも謳っていた「解決編」に偽りはありませんでしたね。……途中なんか地の文で主人公がついにラブコメ否定してたような気もするけど、きっと勘違いです。いや実際、割とラブコメしてた感もするけど、どうなんだろう……。

 

冒頭は3巻エピローグのしばらく後、最悪の許しを得た伊織君は流石に呆然自失としていたみたいです。

……そんな伊織くんをほっぽってナナさんは帰ったみたいですね! 最悪だよあの人! 本当にただ散歩中に面白いものみたから声かけただけで、その後には責任を負いませんってか!?

傷付いて自分でも心が折れたと言ってる彼の前に、陽星を登場させて「名前、訊いてもいいですか?」とか言わせるのも鬼だとは思いましたけども。

 

そして伊織と陽星が出会ってしまった時、空が輝き……2人は気がついたら7年前の77日に来ていた。

不可思議な事態に巻き込まれたので改めて自己紹介して、星の涙の効果範囲内にいたからか、陽星は日付が変わっても伊織を忘れることが無かった。

そして2人は現代に帰る為に協力する事になって。謎の女性の助力で、宿泊場所を確保できたのは良かった。

 

「おふとんはひとつしかないのです?」「そういう話はしてないのです」とか。「世界の質量を増やしている……!?」とかテンポのいいやりとりが多くて、やっぱり涼暮先生の文章好きだなぁとは思いました。こころ語の独特さも好きですよ。癖になる感じがする。

 

昔の流希と再会した後に「やっぱりそれは勘違いなんだよ、流希」とか思ってたり、沈みまくってる伊織君ではありますが。

昔の自分相手には腹立たしさを覚えたりしてる辺り、氷点下男とか笑わせてくれるわ……。心が折れたと言いつつも、今までの習慣か違和感を覚えた部分の考察を始めたりしてましたし。結局、伊織は伊織ってことなんだなぁという部分は(彼の記憶が信用できないとしても)信じられたし、作中でも信じてるキャラが居てくれたのは、いい塩梅だったと思います。

 

昔の流希や伊織、まなつ、きょーちゃんを名乗る謎の女性、遠野、小織などと出会い会話をしていく中で、囚われていたものから解放されていきエピローグに辿り着いたのだから拍手喝采したい気分ですね。

特に流希。既に亡くなっている伊織たちの幼馴染である彼女は、これまでも多様な故人ヒロインをお出ししてきた涼暮先生の強さを感じたといいますか。敵わないなぁ、と思いました。
エピローグ以降にもあるだろう出来事とかも気になりますが、ひとまずの区切りとしては満足のいくものでした。本当に面白かったです。




……と、ネタバレを(極力)伏せつつ感想を書いてみましたが。ネタバレ増し増しの感想をふせったーに投げたので気になる方いたらそっちもどうぞ。



今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。14

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「それでも…」
「本当に奇跡にでも縋らないと敵わない望みがあるなら」
「いったいどうすればいいんですか…」


おさいもコミカライズ! 1話~5話を収録。

灯火ちゃんが可愛くて良い感じです。表情がコロコロ変わるんですよ。
巻頭の「どうですかぁ? うれしいですか?」のハート飛ばしまくってるコマとか結構好き。
子犬扱いされてたりもしましたね。わりと分かる。

7年前の7月7日に降り注いだ7つの流れ星。
「星の涙」と言われるそれに願えば、失失った一番大切なものを取り戻せるという。
ただし、二番目に大切なものと引き換えに。
よくありそうな都市伝説ですが、実際のところ本物には効果があって。

主人公の伊織が久しぶりに幼馴染の妹、灯火と再会した翌日から彼女が付きまとってくるように。
彼女は「星の涙」に願おうとしているのかもしれない、と伊織は考えて。
それを阻止するために、意図がつかめない彼女の行動に付き合うことに。

同じ学校だったので、合うのは難しくないものの。
伊織は校内で嫌われているため、進んで灯火が会いに来たときには変な空気になったりして。
3話のデート回とか結構好きです。なんか小説版と違う描写になってるところがあって、原作者Twitterを見るにそれはわざとっぽいので、種明かしされる機会をずっと待ってる。4巻出て……。
個人的には小織推しなので、たまに登場すると嬉しいです。

巻末にはおまけ4コマを収録。
放課後楽しそうにデートしてる風景が描かれてて中々楽しい。
電子版買ったので自信ないですが、多分並び的にカバー裏にも漫画書かれてるタイプなのでそちらもご確認ください。おまけ4コマ3と4がある筈。

 

今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。3 3年分の「ありがとう」だよ、先輩

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「――伊織先輩は、私のことなんて、早めに忘れてしまってほしい」

 

露店で働いていた少女、生原小織。

まなつによって、彼女こそが伊織が見舞い続けていた、「かつて星の涙を使った、眠り続ける友人」であったことが判明した後……

一旦店を閉めてしまうから、喫茶店にでも行っててよ、と言われて。

 

当然、事情の一部を聞いた灯火やまなつがそのまま帰るはずもなく。美少女3人を氷点下男が侍らせてる図が出来上がってましたが。

灯火とまなつが、適宜ツッコミを入れてくれるのがありがたかったなぁ。

結局伊織は一人で(当事者の小織を連れてはいましたが)星の涙問題にあたることを決めてしまって。

 

裏側で、友人として話をしようとしてるのが良いですね。まなつの「なんでそれで普段はアホなの?」とか笑えましたし。

今回は特に蚊帳の外に置かれていた二人ですが、その交流がこの後に続いてくれると嬉しい。

 

さて、眠り続ける生原小織。

彼女は星の涙の力を持って、ずっと夢を見続けている状態だとかで。

問題を解決するために、星の涙に願いを捧げた張本人に会うために夢の世界へ。

現実とは違う時間が流れている、夢の世界。そこは、夢であるからこそ、そうであれば良かった理想的な「夢」が広がっていて。

陽星が、伊織の親友であることを自覚して、その明るさを見せつけて来たりするわけですよ。

あり得ない筈の光景を見せつけられて、また伊織が頭痛を覚えていましたけど。彼の、星の涙に干渉を受けた時に見せる反応も、絶対起きるわけでも無いですし謎が多いですよねぇ。

 

小織回で、これを見せつけてくるのは本当に人の心がない、と言いたい。……心があるからこそ、的確に傷つけられるという説もありますが。

誰も悪い事をしていないのに、間違った場所に入り込んでしまっているのが、本当に救いようがない。

 

星の涙に願ってしまったという事実がなくても、いじめは生じていたわけで、誰かは傷付いたんだろうなぁ、と思えてしまうのが痛い。

電子書き下ろしのエピソードも、小織の過去を描くもので、どうしてそこまでするの? というか。誰がそこまでやれと言った感があって、思わず叫びたくなりました……えぐい。

 

小織の事好きで、さらに好きになりましたけど。……この終わり方だと、彼女が再び登場してくれるのか、悩ましいんだよなぁ。

少なくともリハビリに専念する事になるだろうし。伊織は、習慣になってる見舞いを続けるかもしれませんが。それはそれで、問題があるというか。

 

エピローグでついに登場したナナさん。

もったいぶった甲斐があるというか、胡散くささの極みみたいなムーブしてきて、そりゃ伊織も不審者と評するわけだ、という感じ。こういうキャラ、結構好きですけど。

それはそれとして、傷口に塩塗り込むような、衝撃の事実を突き付けに来るなよ。タイミングとか演出含めて最高に最悪だよ!

こんな極悪な許し、見たことないって思わず叫びたくなるくらいには、凄まじかった。

 

あとがきでシリーズもギリギリを飛んでるとか書かれてて、不穏ではありますが。

遠野くんも何か裏で動きだしてるみたいですし、4巻にも期待したい。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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