「あらゆる梓川咲太の中で、お前が一番思春期症候群を信じているんだろうな」
青ブタシリーズ、完結巻。ついに、かぁ……感慨深いですね。
麻衣が「自分が霧島透子」という認識に変わってしまったり、どんどん塗り替えられていく世界。
そんな中で、本物の霧島透子の事を知っていた美織の問題解決を図るべく色々と調べていたわけですが。今回は初手から美織に会いに行って。
彼女が少し前向きになれたのは、良かったですね。認識が改ざんされている麻衣が、それでもなお咲太のこと信じて話聞いてくれるのとか、2人の信頼を感じて実に良い場面もありましたが。
予想以上にサクサク問題解決していって、残り全部エピローグ的な展開になるんだろうか、と思ったら。
家に帰ったら「かえで」が居るし、麻衣が「霧島透子」という認識に関しては元通りになったけれど、それ以外の改変はそのまま残り続けてしまって。
咲太もどういうことだ、と困惑していましたが……向こうの世界の自分から、「思春期症候群を起こしているのは咲太自身」という指摘を受けることになって。
複数の世界を見て、いくつもの思春期症候群を超えて来た彼だからこそ起こしてしまったもの。いろんなトラブルにも出くわしたけれど、それらがあったからこそ今の彼があるわけで。
問題解決のために向こうの咲太は「思春期症候群を否定しろ」と言ってきましたが……別の答えを出してくれたのは、良かったですね。
エピローグで、少し未来の話が見られたのもありがたかった。魅力的なキャラが多いので、断片的なエピソード以外にも、もうちょっと読みたかったという気持ちもありますが。こういう余韻がある方が、長く続いたシリーズの幕引きとしては美しいという気持ちもあります。ただ、完結を見届けられたのは本当に良かったです。