「ん。……まあ、だから。あたしもこの際、あんたに気になってたことを言うとね」
(略)
「ひとりで強くても、いいことなんて無かったわ」
異世界に召喚され、死んでも蘇る特殊な身体で、人をオモチャのように扱う魔族と戦わされた少女・琴野アズサ。
その戦いの日々から解放され、元の世界に戻ってくることが出来たわけです。一応、召喚されてから地球では一日しか経ってない時間軸に戻してくれたのはありがたいですけど。そもそも異世界召喚が身寄りのない人物を対象に行っていたこと。文明世界に帰ってきた恩恵を最大限享受しようと、推し活に速攻で金を使ってしまったことでアズサはこれからの生活をどうしようか悩んでいて。
悩んでいる彼女に、小学校時代の友人である不死川陽菜が「魔導訓練校に一緒に通いませんか」と誘いにやってきて。
異世界から帰ってきても習得した魔法の技術をアズサはそのまま扱うコトが出来た。そして、その力は強大で……学校側も放っておくことはできないとのことで。
魔法を扱える人って言うのは幼少期から才能を発揮していることがほとんどで、名家と呼ばれる家がほとんど。そんな中で、そうした家に連なるわけでもなく、突如編入してきたアズサは異物で……。
基本的に陽菜と、事情を知っている校長先生との交流ばかりの学校生活を過ごしていました。
しかし……この世界にも魔法があり、アズサが異世界で勇者として戦ってきた魔族も存在して。魔族の悪辣さを良く知っているアズサは、その存在を察知したら戦わずにはいられなかった。
そうして力を見せたことで、名家の誇りを持つ少年吉祥院征人に絡まれたりもしてましたが。戦闘技術、という意味ではアズサは頭一つも二つも抜けていて。
決闘中に助言をする余裕もあるくらいでしたが……そんな彼女も、「一人で強くてもいいことなんてなかった」と零すくらいの経験をしていて。
征人が、まだ未熟ながらも負けていられないと足掻いて、彼女の力になろうと変わっていったのは良かったですねぇ。成長を感じる。
アズサが異世界で倒したはずの魔族が、復活した上こちらの世界で暴れようとしていたり。
人の世界に紛れ込んでいたり、とこちら側の世界でも万事平穏とはいかないままでしたが。
校長先生が親身に相談に乗ってくれたり、「異世界の存在や異世界の魔法」という情報が知られたらアズサは実験対象としてとらえられてしまうかも、という懸念から情報の秘匿に協力してくれるのはありがたいですねぇ。
魔族との戦いは過酷だし、アズサの学力は地を這うレベルのようですが、なんだかんだ学園生活も楽しんでるのは何よりです。