「顔も名前も知らない他人が描いた、紋切り型の『サキュバス像』なんかに、私は従うつもりなんてサラサラないわ。ミューデントがミューデントの偶像に縛られて生きるなんて、息苦しいだけでしょ。そんなの個性どころか没個性、順番が完全に逆転しているじゃない」
第二次性徴期からの若い期間だけ、サキュバスや雪女のような伝承に語られる存在の力を扱えるように覚醒する……ミューデントと呼ばれる存在が生まれるようになった世界。
『神話(ミュトス)』の『生徒(スチューデント)』という意味で『ミューデント』と呼ばれてるみたいですが。
病気というよりはちょっとした特徴の一つ、みたいな形で受け入れられているとか。
とは言え、主人公の古森翼の幼馴染である斎院朔夜はサキュバスであることを公言してて……思春期の男子たちから劣情を向けられることもしばしば。
ただミューデントの能力って、伝承そのまま凄い能力を使える、みたいなものではなくて。
例えば猫娘の真音とかで言うと、「夜目が利く」とか「嗅覚が秀でている」とか。ヴァンパイアなら吸血だけで眷属を増やすようなことは出来ないし、人狼も満月の夜にテンションは上がるけど獣人のような体に変身するようなことはない。
ただ、サキュバスは魅了……性的興奮を刺激する能力を持っているのは確かなんですが、元々サキュバスは魅力的な女性であることが多いので、男子が興奮してもサキュバスの能力由来なのかどうか区別はつけられない、なんて話もありました。
朔夜と幼馴染であり交流の多い古森は「コウモリ」なんて蔑称よりのあだ名をつけられているけれど、ミューデントではない一般人。
ただちょっとミューデント関連の情報については、色々と詳しかった。
朔夜と古森は文芸部の部室を不法に占拠していたけど、活動実態がないということで生徒会からメッセージを貰うことになってしまって。
生徒のお悩み相談を受け付ける活動を始めることになって、いろんなミューデントとの交流が生じていくわけです。
「ミューデント」という存在になってしまったことで、評価の物差しが一つ増えている彼女達(実際には男もいるんだろうけど、作中では女子しかでなかったので)は、偏見の目だったりに悩んだりすることになるわけですけど。その悩みを聞いてくれる場所が出来たのは、良かったんじゃないですかね。