「つらいことをするだけが努力ではありません。嫌いなものを直視するのは普通の努力です。むしろ好きな人の近くにいつづけるほうがつらいことだってあります」
(略)
「本当の答えは常に、自分の目の前にだけありますわ」
今回はJS研メインの、澪を見送るエピソード。
それに加えて、これまでのドラマCD脚本を小説家したエピソードが収録されているんですが……正直キツかった。
いやこの作品総合的には好きなんですが、りゅうおうがロリ王になってる場面はくどくって苦手なんですよね。
JS研メインになるとどうしてもロリ王の登場頻度が上がるので、何度かページを進める手が止まりました……。
澪の旅立ちをしっかり描きたかったという理由のほかに、昨今の情勢に寄る外出自粛が響いていたので、こんな構成になったようですが。
出国のタイミングが、八一のタイトル挑戦や銀子の三段リーグからの入院などと重なってしまい、大人に寄る引率抜きでのJS研のみの行動になっていて、本編が彼女たちの視点のみになっていたのは新鮮ではありましたね……
JS研の面々と同行はしていないものの、理由を付けて空港に来て、餞別をおくっていた天ちゃんとか良かったですよね。なんだかんだ優しい。
見送られる側の澪ちゃんが、貰うばかりではなく最後に贈り物を残していくのも演出としてニクい。
将棋ソフトがどんどん進歩していく中で、将棋に向き合うはどうすればいいのか。
小学生だからと言って、決して侮る事の出来ない覚悟がそこにはあった。四段へ昇格を果たした椚創太のように、先達に比べればまだまだ未熟であろうとも、彼ら・彼女らなりに積み重ねて来た時間は確かにある。
作中の言葉でいえば「努力」している。それも、普通の努力ではなく、「強烈な努力」を。
そしてその「強烈な努力」によって、女流棋士となったあいちゃんとぶつかるのだから、熱くないわけがない。
澪ちゃんという友は遠く離れてしまったけれど。彼女の残した火は、あいちゃんの中で燃え続ける事でしょう。
あい自身も自覚していた、チャンスを掴み取れない弱さを克服する一助となってくれるかな?
巻末は観戦記ではなく「白雪姫と魔王の休日」と題した、12巻後の銀子と八一について。
病院に搬送され、病室で寝ている銀子を八一が見守り……見舞いに来た人々と、今後の事とかについて会話するエピソード。
《浪速の白雪姫》というブランドが、ついにプロになって。注目を集めている彼女の最初の対局は金になる、とか。世知辛いお金の話が多かったですけど。
規定通り女流のタイトルも手放すことになるみたいですね。特例を作って売りだすのかと思いきや、「女流に負けるとブランド価値が下がる」みたいな意見は、言われてみれば確かに出るだろうなーという感じ。
周囲にフォローしてくれる人が多いので、なんとかなるとは思いますけど。最終章スタートする14巻以降が楽しみなような怖いような。