「世界は思ったよりも、愛に満ちているのかもしれないね」
BOOK☆WALKER読み放題にて読了。期間限定タイトルで1月31日まで。
口絵のシーンをカラーで見られたのは嬉しいけど、ガッツリネタバレなので悩ましい。いやまぁ流石に上下巻の下巻の口絵を先に見る人はいないだろうからいいか!
明らかになったもう一人の魔王アヴォスの正体。ただ倒すだけなら可能かもしれないが、それをすると仲間が犠牲になってしまう。
しかしアノスはそれくらいで諦める男ではなかった。本人曰く2000年前は諦めてばかりだったからこそ、今度は諦めないという決意が好き。
何をするにしても情報が足りないということで、2000年前に時間旅行するとか言い出す辺り相変わらずのトンデモ振りではありますが。
過去の世界でミーシャに零した「これだけの者を、俺は守れなかったのだ」という悔恨の言葉が痛い。一見傲慢に見える振る舞いもありますが、彼は紛れもなく王であり、その覚悟を持ってるのが明らかになったシーンは良かった。
他にもいいシーンがいっぱいあるんですよね。
例えば世界を隔てる壁が出来た後の大精霊レノと魔王の右腕であるシンの心温まる交流ですとか。大戦の終結に関係して潰えることとなった精霊、大戦の樹木ミゲロノフの在り方とか。
未来を大きく変えないように振る舞ったアノス達の残した僅かな爪痕が、未来に紡がれていくのも良かった。勇者カノンが信じた、愚かなだけではない人間の在り方を見せてくれた誇りをもった勇者イガレスも、新規登場ながらいいキャラしてましたよね……。
多くの人々が認識を歪められた現代でも、アノス達の事を信じてくれるキャラが居たのも良かったです。
後は台詞アリで動き回った初の神族がノウスガリアだったことで、この世界の神々の株がちょっと下がりがちだったんですが、アノスの障壁魔法に協力した創造神はまともそうで安心した。
勇者カノンもそうですが、暴虐と呼ばれるまで戦い抜いたアノスを認めてくれたのが、本当に嬉しかった。優しい魔王、なんですよね。
3巻のあとがきで「次の章が一番好きと言う方がかなり多くいらっしゃいます」と書かれていたのも納得の伏線回収巻でありました。