「私は自分の能力を使うことで大勢の人が助かるならば、最大限に能力を活用することが責務だと思っています。それに……私なら助けられたのにと、後悔したくないんです」
平民のマルティナは、本を読むのが好きな少女。
平民街の図書館にある本を全て読み終えてしまった彼女は、王宮図書館の本を読むためだけに官吏登用試験を受けた。
国の方針として二十年ほど前から貴族と平民の垣根をなくそうという宣言がされて、平民でも官吏になる道が開かれていたのは彼女にとって幸いでしたねぇ。
まだ道が開かれてから世代が変わるほどの時間が経ってはないので、貴族至上主義の考えを持った人物とかも居たりするみたいですが。
平民でも受け入れてくれる人が多かったのは良かったですね。
そして、マルティナはただ本を読むのが好きというだけではなく……読んだ本全てを記憶できる「完全記憶能力」を持っていた。
オマケにただ読んで覚えているだけじゃなくて、その情報を引っ張ってくる速度も速いので、先人たちに羨ましがられてますけど研究者とか学者になっても名を残せそうなスペックしてるんですよねぇ。
協力することも多い騎士団の情報を覚えるのを任されたマルティナは、とある異常に伴った魔物討伐に際して意見具申をして。
それが受け入れられて現場に同行することに。眉唾物と思われていた「瘴気溜まり」というものについての知識を即座に引き出し、研究に踏み出すまでの時間をかなり短縮することに成功。
希少な光属性の魔法を使える人材を集めることで、小さいものなら消滅させられるという結果を出していたのは良かったですが……。その後、光属性を用いる方法では消滅させられない巨大な瘴気溜まりが発生したり、世界各地で同時多発的に瘴気溜まりが発生したりと、事態はどんどん進んで行くわけです。
マルティナを筆頭に、人々がまず自分たちで出来る限りのことをして、それでもこのままでは対処しきれないと判断して……聖女召喚の儀式を復活させようと試みることに。
マルティナ達が人事を尽くしているのは、個人的にポイント高い。途中、マルティナの才覚を認めた国が彼女を誘拐しようと試みるトラブルがあったりもしましたが。その騒動からヒントを得て、聖女召喚にまでこぎつけたのはお見事。
招いた聖女の扱いだとか、国家間の交流とか、問題山積ではありますがマルティナ達が力を合わせて乗り越えてくれることを祈りたいものです。