『戦いで片腕を落とされて水辺に旅だった友は、『笑え、笑え、リリア。ライナスが勝利を勝ち取る、喜ばしい日だ』といったわ……。たくさんの人の命が零れ落ちていく光景の中で、私は彼のために笑って見送った』
そして王妃様は、首を横に振り笑って続ける。
『そう、泣かないの。喜ばしいことだから、泣かないのよ』
セツナとアルトがリペイドで生活を初めて早一ヶ月。
ラギさんとの距離感も近づいていて、良いですねぇ。アルトがラギさんに、師匠にできる事をしたい、と相談を持ち掛けて。想定外の結果になってしまったけど、悪戯を教え込まれたりしてて、セツナ以外の指導……って言うと大げさですけど。
ちょっと違う考えとかにも触れられているのは、アルトの世界が広がって良いと思います。
アルトは何だかんだ楽しく日々を過ごしているみたいですが。
リペイドは建国祭が近づき、あちこちがにぎやかになっていって。
国の上層部は、直近の騒動からの祭りの準備とあってかなりピリピリしている模様。王妃様が心配して休養を進めたりをしていたようですけど、実を結ばず。
ジョルジュ卿が求婚の際に用いた薔薇には時の魔法がかかっていた一件が俎上に上がったりもしていましたが。国に仕える騎士でありつつ、セツナへの義理もありその名を告げようとしなかったのは良い男でしたねぇ。
そのあたりを予想したセツナがサイラスにも伝言を残していて、先日の恩人であることが伝わり、その時の態度から敵国に就くことも無いだろうと決着したのは良かったですが。
……セツナの介入で、結果としては本来辿っただろう流れよりも良い形で祭りの前を迎えられているわけですが。
それでも王たちは王妃様との会話を後回しにして。最終的に王妃様は時間を作るために、セツナへ依頼することになるわけです。
依頼自体の難易度は高くない。けれど、依頼された通りの事をしても解決するとは限らない。でも、一度依頼は受けると言った以上、できる事はしたい。
そんな悩みを抱えているセツナにとっても、ラギに相談できたのは大きかったでしょう。
最終的には、なんとか良い形で落ち着いていたのでほっとしましたが。割と綱渡りではあったかもなぁ、というべきか。王妃様が無茶な依頼を出した裏には、余裕が出来ればちゃんと理解してくれる人達だからという信頼があったからというべきか。
そうやって事態が解決した後、セツナに礼を言うためにサイラスが頼まれて。ちょっとしたパーティーをすることになって、本当に一件落着って感じで良かったですね。