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「神様。オレはあんたを幸せにする」
「……幸せに?」
「おうよ。そいつだけは決めた。何をやっても、どんなことを幸せにするよ俺は。世界中が敵にまわっても関係ねえ。アンタの幸せのために、俺はめちゃくちゃワガママになるわ。それがアンタにプロポーズした俺の、絶対的なルールだ」

この世界には神様がいる。
酒が好きでタバコが好きで。予想外のことがあったら戸惑う、普通の少女のような神様。
神鳴沢セカイ。銀の髪に、赤の瞳を持つ美少女。
そして、彼女の「生贄」として捧げられたしがない高校生の桐島ユウキ。
彼は、「生贄になる代わりになんでもいう事を聞いてやる」という神様に「結婚してくれ」と爆弾を投げて。
二人の物語は、そうして始まる。あるいは既に始まっていた訳ですけれど。

生贄と言いつつも、ユウキの行動は別に制限がかかっているわけでもなくて。
捧げられた後も普通に高校に通っていますし。ただ、たまにセカイの元を訪れて話をして、親しくなっていく。
セカイは確かに「神様の業務」を果たし続けている存在なわけですけれど。
ユウキと話している時は、お付きのメイドの空言に騙されたり、酒とたばこをたしなんで本を読んでいたりと「神様」らしからぬ行動をしていたりもして。
だから、そんな状態で二人が交流しているのは人と神様の「文句のつけようがないラブコメ」ではありましたが。
そのまま素直に終わらない、っていうのがまたいい。

人の身でありながら、神というシステムに挑む。
その決意は遠大で、辛い未来がありそうでけど、決めた以上は、続いている以上は歩みを止めてはいけないのだ、と。
世界を舞台にした随分と壮大で、なかなかに趣味が悪い喜劇ですが。
どうかユウキには頑張って希望をつかんでもらいたいところです。
それが簡単にいかないから、問題が継続してしまうわけですが。
世界か少女か。
そうした選択があるという意味ではセカイ系なんですかね。
全てを敵に回してでも君を……とかそういう感じではなくて、彼と彼女と世界。その広いようで閉鎖された場所で行われる遊戯なわけですし。

一巻丸々壮大な序章、という感じでしたが。
この調子で続いてくれるなら、結構な良作になるんじゃないでしょうか。
あと、今回会話の中で、やたら個性立っている妹さんの存在が語られていましたが……彼女、出てくるのかなぁ。それならそれで楽しそうだと思うんですが。引っ掻き回してくれそうで。
怖いのはここから失速する一方にならないか、というところですが……とりあえず、2巻も買います。