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『あなたが自分の人生を守らなかったら、誰が守ってくれるというの?』

『あなたに働く意欲があるなら仕事を紹介するわ。住む場所も提供する。闘うべき時は戦いなさい。自分を救い出すのよ』

 

オルブライト伯爵家の令嬢アンバー。

彼女は父が推し進めた縁談に従って、家格が上の侯爵家から婿を取ることに。

侯爵家側がつけた唯一の条件が「財産管理を、息子に行わせること」。しかし……その息子ブランドンにはそういった経営の才能がなかった。

どんどん伯爵家の財政が傾いていく中、アンバーはブランドンに助言をしたりもしたが受け入れられず……密かに自分の資金を使って、いくつかの商売を開始。

それらは順調に利益を上げ、使用人たちの賃金を賄うことも出来るようになっていたようですが。

 

ブランドンはなんとメイドの一人と駆け落ち。

それを受けてアンバーは、速攻で離縁の手続きを進めて。相手側に非がありつつも、侯爵家の経済状況を知っているから、慰謝料の請求を行わなかった。

……そんな思いやりを、下の家からの借りと取られた侯爵家は親戚筋という伝手を使ってアンバーを国王付きの侍女……ようするに愛人として迎え入れるなんてトンデモ提案をしてきて。

 

素直に受け入れられる話ではなくて。ブランドンを追い払った後、家の前で倒れていた自称平民の絵描きクリスティアンと婚約することで、その慈悲を拒むことに。

この婚約にはもう一つ目的があって、それがアンバーが別名義で行っていた各種経営の手続きをクリスティアンに移してから、アンバーに戻すことでオルブライト伯爵家の財務状況を回復させることで。

そんな面倒な手続きを挟むのは、アンバーの努力の成果である店舗経営は、「財産管理をブランドンに任せる」という結婚時の約束に反していると文句を付けられる懸念があったためだった。

 

そうやって仮初の婚約者となった2人だったわけですが。

アンバーは自分が夫に虐げられていた経験もあって、同じように認められていない女性たちに仕事を与える活動を始めて。途中、過労で倒れてしまう場面もありましたが。道を切り開いて、多くの女性たちを救っていったのはお見事。

クリスティアンは自称平民と言いつつも、節々に教育を受けた痕跡があって。

実家との確執がありつつ、絵描きとしても認められていくことになって。

各々の道で成果を上げた2人が、お互いを大事にして仮初の関係が本当になったのも良かったですね。