「貴方に、何が出来るというのです?」
「そうだな。隣国からかけられている圧力を撥ね退けることくらいは」
(略)
「ならばそれを証明してみせなさい。殿下から全ての憂いが取り除かれた時……私は貴方の要求に応えましょう」
-world memoriae-シリーズの同人誌。
電子版が配信されてるのでそちらで購入。
精霊術師で薬師でもあるヘルジェール。
夜を渡り歩くと言われる薬師で、請われれば病を治す放浪者。
かつて彼女が癒した相手から呼ばれ参上した彼女は、薬ではなく彼女自身を欲しい、という男と引き合わされて。
滅亡の危機に瀕している国を救うための取引を持ち掛け、ヘルジェールの身柄を要求した。
ヘルジェールはそこまで言うのなら、証明してみせろと男に告げて。
男――オスカーは、剣の腕を見せて武門の派閥に取り入って。
侵攻する手間の割に得るものが無いと分かれば大人しくなる、という論理は分かるけど狙ってやれる人は少ないと思うぞ……
オスカー自身も「簡単ではない」というもののその後に「出来ないことでもない」と軽く言うんだもんなぁ。
-world memoriae-を読んでいると、早々にヘルジェールの秘密については察する事が出来るわけですが。
彼女はかなり不安定な部分があって。オスカーが約定を果たすか見守るため、宮中に滞在している彼女に接触して来る勢力も。
わざわざ爆弾に火気近づけなくても、と思いますけどね。
逸脱者である二人。
彼らは決して不滅ではなくて、何度も喪失を繰り返しながら、長い旅をしている。
その喪失の中で、我を忘れて一度は暴走してしまった魔女へ、それでも強く在れというオスカーは、どこまでも王なんだよなぁ。
最後オスカーの差し出した手を、彼女が握ったのが、とても美しくて……同時にどこか残酷だとも感じてしまう。
あぁ、でもこの二人の関係が好きなんだよなぁ。