「どこでどう生きたっていいさ 眼と耳塞いで選んだ人生じゃないならな」
「…どうせ言い訳じみた覚悟しかできないんだ」
「だったら…声も姿も思い出すときは 首の骨を砕く音と共にでも構わない」
「怯えながら一緒に生きてみたいんだ」
商業版カガステル、最終巻。
アドハムも……彼は虫籠を作り、独裁的ではあったかもしれない。
けれど、カガステルという奇病が広まった世界において、未来を見て動いていた。
「理想も野心も…掴めなければただの狂気だ」と自分の行いをしっかり自覚している。
だからこそ、多くの兵隊が彼についてきたんでしょうけど。
イリがフランツと通信で会話できたのは良かったなぁ。
「グリフィスが本当の父なら良かった」と叫ぶイリに、「タニアが自分を選んでいなかった可能性」を考えたことがなく……それは嫌かもなぁ、と零したフランツ。
全く勝手だよなぁ。他に色々と見えすぎるせいで、結局自分の大切にしていたものが見えていなかった様だし。
一方で、因縁の相手と対峙したキドウ。アハトと三度目の戦い。
バケモノでありたい人間と、人殺しの駆除屋。
この男どもは不器用ですねぇ、ホント。
キドウが剣を離した時のアハトのきょとんとした顔が良いですね。
純粋な人ではなく、かといって虫にも届かず。泣き言を漏らすあたり、年相応の部分が見られて、少しほっとしました。
随分穏やかな表情を浮かべることも出来てましたし、「自分の生きる道を探す」と一人で動き始めた彼も……いつか居場所を得られることでしょう。
そして巻末の短編は、グリフィスのエピソード。
A区へ逃げた後、物語が始まるまで。彼がイリの父親として生き、キドウ達へ託したモノ。
もう一つは……彼がみた、夢の話。
こんな世界がありえたのなら。あぁ、それはきっと幸せだったろうなぁ。最後にこの話を差し込んでくるあたりは、卑怯だ。
良いシリーズでした。……後書きとカバー裏が相変わらずで、ここまでくるともう流石としか言えない。