気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

虫籠のカガステル

虫籠のカガステル7

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「どこでどう生きたっていいさ 眼と耳塞いで選んだ人生じゃないならな」

「…どうせ言い訳じみた覚悟しかできないんだ」

「だったら…声も姿も思い出すときは 首の骨を砕く音と共にでも構わない」

「怯えながら一緒に生きてみたいんだ」

 

商業版カガステル、最終巻。

アドハムも……彼は虫籠を作り、独裁的ではあったかもしれない。

けれど、カガステルという奇病が広まった世界において、未来を見て動いていた。

「理想も野心も…掴めなければただの狂気だ」と自分の行いをしっかり自覚している。

だからこそ、多くの兵隊が彼についてきたんでしょうけど。

 

イリがフランツと通信で会話できたのは良かったなぁ。

「グリフィスが本当の父なら良かった」と叫ぶイリに、「タニアが自分を選んでいなかった可能性」を考えたことがなく……それは嫌かもなぁ、と零したフランツ。

全く勝手だよなぁ。他に色々と見えすぎるせいで、結局自分の大切にしていたものが見えていなかった様だし。

 

一方で、因縁の相手と対峙したキドウ。アハトと三度目の戦い。

バケモノでありたい人間と、人殺しの駆除屋。

この男どもは不器用ですねぇ、ホント。

キドウが剣を離した時のアハトのきょとんとした顔が良いですね。

純粋な人ではなく、かといって虫にも届かず。泣き言を漏らすあたり、年相応の部分が見られて、少しほっとしました。

随分穏やかな表情を浮かべることも出来てましたし、「自分の生きる道を探す」と一人で動き始めた彼も……いつか居場所を得られることでしょう。

 

そして巻末の短編は、グリフィスのエピソード。

A区へ逃げた後、物語が始まるまで。彼がイリの父親として生き、キドウ達へ託したモノ。

もう一つは……彼がみた、夢の話。

こんな世界がありえたのなら。あぁ、それはきっと幸せだったろうなぁ。最後にこの話を差し込んでくるあたりは、卑怯だ。

良いシリーズでした。……後書きとカバー裏が相変わらずで、ここまでくるともう流石としか言えない。



虫籠のカガステル6

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「一言望めば 駆除屋の剣は今だけお前のものになる」

(略)

「私の願いを叶えてくれるなら 私のそのあとはあなたの自由にしていいわ」

 

E05での戦闘も激化して。

07に忍び込んだキドウ、連れ来られたイリもそれぞれの覚悟を決めて行動する。

いやぁ、格好いいですね皆。

最初の方に在るマリオの「もう帰ってこないんですって」と言った後の「けど私は待ってるって言ったから死んでもここを退かないのよ」というのがもう。

商区長も、戦いにおいては役に立たなくても、長として命を使う覚悟があるって言うのは凄まじい。

 

フランツが追い求めていたもの。アドハムが掲げていた理想。

蟲によって追い詰められたこの世界で、「選別」をしたくなる気持ちは分からないではないですけど。

そんな世界だったら。キドウの養父や、優しい軍人には出会えなかった。

それを思うとどうしたって賛同はしかねます。けど、実際に戦っている軍人たちとしては違う想いもあるのでしょう。

フランツの策によって、制御が失われた虫籠。その中であっても、理想を掲げる彼らの主の命令に従う覚悟を示したのは敵ながらあっぱれ。

 

女王の娘として覚醒したイリが、これまでとは違った顔を見せてますが。

キドウとのやり取りはテンポよく進んで、これはこれでいいコンビなような。

そして極東の駆除屋が戦い続けて。戦力差があり、地の利は敵にあり、それで負傷こそしますが倒されることなく戦い続けるって言うんだから、さすがというかなんというか。

本編は、イリと別行動を始めたキドウが、アハトと対面したところで引き。

この後の戦いがまたいいんだよなぁ。最終巻が今から楽しみです。

 

短編は2話収録。一つは幼少期のイリとアハト。

少年が読み聞かせていた絵本の話。「人魚姫」を読む彼の心中が物悲しいというか。

そしてもう一つは、学舎へ行くことになるリジ―へ贈り物をしたいという西区の少年たちの願いとその顛末。

カシムが居なくなり……その代わりに助けてくれたのは「カシムを討った駆除屋」だった、って言うのが。キドウの不器用な優しさがいい味出してました。

 

巻末のネタは、マジカルカーラ。

……あんた、ここまで出張ってくるのか……!

WEB版のオマケでは大変笑わせてもらいましたが、今回もわずか2ページながら圧倒的な存在感があったというか。

 

虫籠のカガステル5

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「誰もが満足のいく道を生きるわけじゃない」

「お雨に用意された選択肢の中に望むものはないだろう」

「そのどれもが分かり切った終わりしか与えてくれないとしても」

「お前は自分で決めるんだ」

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「目を開けて最後まで生きろ 命の価値は自分で探すんだ」

 

今回は後ろ半分が中編「プリンセス・バタフライの冒険」となってます。

イリとリジーたちが巻き込まれた騒動の話。

まだカシムがいて、平穏だったと言える時のエピソード。

これは同人誌版の入手に失敗してたので、今回収録されて嬉しかったですねぇ。

 

商業コミック化に当たってコミックリュウで連載された短編は、キドウがマリオに拾われるまでの経緯。

負傷してるとはいえ、極東の駆除屋として働いていてキドウをあしらうとかマリオおっかないわ……

 

そして本編は今回は2話収録とちょっと少な目ですが、内容は十分濃密です。

E05を得る為に総監の配下が動いて。けれど、それで容易く折れるような輩はこの時代に生き残っていなくて。

それぞれに譲れない理由や誇りがあって、戦う道を選んだ者達。

 

今回収録の話は気に入ってるシーンがいくつもあるんですよね。

「帰りたくなったらいつでも帰ってくるのよ」と送り出してくれたマリオとキドウのやりとりとか。

「これで『願いが叶いますように』ってオレたちは祈ることが出来るんだ」とリジーたちは戦えないながらに願いを託すところとか。

キドウが、先が見えないと知りながら虫籠に踏み込んでいった所、最後アハトが研究者たちへ啖呵を切るところなどいい場面がたくさんあります。

かなり切羽詰まってますが、だからこそ読んでいて引き込まれますよね。

 

 

虫籠のカガステル4

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「…夢を見たわ」

「とてもキレイな夢だったけれど」

「夜が明けて目を覚ませば」

「みんな忘れるわ」

 

戦車隊のハディは、カシムを殺せなかった責によって解雇されて。

カシムが残したものをリジーに届けたり、色々と調べたりしていたようです。

E07の上層部が更迭され、後釜がやってきたりと軍もドタバタしてる状況。

そして、ここにきてイリの過去が追い付いてきてしまって。

 

なぜ、彼女とその父は虫籠にいたのか。

A-47区という果てからE区まで来たのはなぜなのか。

軍でトップが入れ替わったときに持ち込まれたA区の資料。

それらが意味することは、何なのか。

「駆除屋殺し」の正体と因縁。隠されていたことが明らかになり、追い込まれていく流れは圧巻です。

 

最初に蟲が人から生じたと気付いた研究者。

その息子と、軍の上層部が行っていた実験。

蟲の軍事利用が目的なのかと思いきや、別の目的があって。

虫籠になってしまったE-07の真実も明らかになるわけですが。

 

アドハムやフランツは、この世界においても歪だよなぁ、とも思います。

イリの手を取って逃げたグリフィスの気持ちも分かる。

そして、彼が苛まれていた罪悪感も。

 

イリが過去を想いだし、これまでの事を「夢を見ていた」と評するわけですが。

確かにそんな感じですね。夢から覚めて、現実を突きつけられて。

悩み、悔やみ、娘を助けたいと零したグリフィスを責めることは出来ません。

グリフィスの戦いは、道半ばで途絶えてしまいましたが。こんな世界だからこそ、彼の用な人がいるべきなんじゃないかと思います。

その嘆きを聞いたキドウたちには、この後頑張ってもらいたいところです。

 

今回の描き下ろし短編は、アハトが駆除屋殺しとなるまでのお話。

職員に怪我をさせることも増え、庇いきれなくなる前に、身内ではなく外の誰かを襲うように仕向けたフランツの思惑があったようで。

けれど、人に作られた彼が、人と虫の境に立つ彼が「その剣で人とバケモノを分かつ」という駆除屋の剣にかけた願いが悲しい。

 

虫籠のカガステル3

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「この世に神がいるとは思わん いたとしてそれは人を救わない」

 

E-05で実施される祭り。

前回カシム達が地下道で戦い、蟲を撃退したこともあり無事に実施されて。

まぁ、キドウは無駄にイリの地雷踏んで機嫌悪くしたりとかしてるんですが。

「駆除屋は総じて好かんが、キサマ個人はそうでもない」とカシムとキドウが交流したり。

リジーが過去の失言を彼に詫びたり、とカシム絡みのイベントが発生していたんですが。

 

その結末が、アレか。ハディが躊躇したのも、仕方ない。

人が虫になるという現実を改めて突き付けられた気がします。

この世界では、コレがいつでも起こりうるんだ、と。そりゃあ駆除屋なんて職業が出てくるわけだ。

 

そして、キドウは職務を果たし……マリオによって彼の過去が明らかに。

キドウの過去編は、気に入っているエピソードです。

この世界の残酷さをしっかり描いていて、その上でそこで生きていく人々の覚悟が感じられる。

 

「極東」。その先に人類がいない、生存権の果て。そこで駆除屋であったという事。

かつて祈りに生き、駆除屋たちのまとめ役となったキドウの養父ラザロ。

キドウに多くのものを与えたリーダーで、過去の騒乱で全てを失い剣を取った悲しい人でありました。

彼の生き様もまたどうしようもなく痛いよなぁ。

祈りによって変わることが無く、憎しみを抱き、その果てにかつて憎んだ存在になりはてて。

最終的にキドウは、自らよりどころを離れる決断を下すことになるわけですが。「こんな世界」でも生きていく彼にこそ幸いあれと願わずにはいられない。

虫籠のカガステル2

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「…昔 駆除屋は剣だと教えられた 後ろを見ず眼前の敵を討つ刃であれと…」

「…あんた達は違うんだろ?」

「ここの『盾』やんのが仕事なら最後まで立ってねえと意味がねえよ」

 

発売後即重版掛かったようで、ファンとしてはうれしい限り。

おつかいに出かけて財布をすられたイリ。まとめ役の少女となぜか「鬼ごっこ」をする羽目に。

羊の解体できると言ってましたし、割とタフですよねぇ、彼女。

 

一方で、隊商の護衛から戻ったキドウは「ポエム付きのラブレター」をもらって。

駆除屋殺しの被害者の詳細が添付された怪しい手紙。

明らかに罠の誘いなのに、それに乗るあたりキドウも肝が据わってるよなぁ。

……戦闘中のイリの行動には驚いたなぁ。それがあったからキドウも危機を脱したんですが、逆に自分がピンチになってたら意味ないよイリ……

 

駆除屋殺しと対面し、生き延びたキドウ。

けれど、駆除屋殺しは虫が存在するこの世界においても異質な存在で。

軍に事情聴取に連れていかれてましたが……その軍こそが黒幕という。

それもかなりトップクラスが裏で動いているのが、恐ろしいというほかない。

人類の三分の二が滅んだという中でもなお、狂気渦巻くって言うんだから人間は業が深いなぁ……

 

今回のカバー裏もネタ度高いなぁ。

ルミノール反応も出ない白さ!が売りの漂白剤は色々とダメだろう。

あと、キドウはなんであの手の本を採点してるんだ……イリも「少し点数が厳しいと思います」じゃないだろ……



虫籠のカガステル1

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「父親の遺言だ 母親が見つかるまで手を貸してやる」

「だが自分から立つ気のないヤツは助けようがない」

「生きる気がないならここで死ね」

 

元々はWEBの自サイトで作者さんが連載していたコミックです。

それを同人誌化して、フランスでは商業コミック化もされたとか。

『アルボスアニマ』という別作品で日本でも商業デビューされましたが。

原点ともいえる作品が、日本でも刊行されることになって。

元々WEB時代からのファンなので、もう迷わず購入しました。

同人誌の方も持ってるんですけどね。この作品を買う為だけにコミケに行ったぐらいには好きです。

 

人が異形と化す奇病『カガステル』。

発症したものは、巨大な虫と化し人を襲う。さらには、虫同士繁殖しその数を増す。

元が人間であるため、対処にも遅れが生じていて。人口は激減。発症率が千人に一人と割と高いのも影響したんでしょう。

対策取ろうとしたところで、その対策チームの中から虫と化す存在が出るかもしれない。指導者的立場にあった存在が虫になり混乱を加速させたなんてことだってあるでしょう。

それを思えば、割と人生き残ってる方なんじゃ。この荒廃した世界でも、行商人とかもいて逞しく生活してますし。

 

そして、虫が増えたことによって、ある職業が誕生。

『駆除屋』。虫となった存在を狩る、戦闘職。

完全な虫となるまでには多少の時間があり、より大きな害となる前に処理することが望ましい。発症から20分以内の処理は「殺人」ではなく「駆除」である、と。

故に、駆除屋は人殺しと恨まれることも多くて。

そんな駆除屋のキドウが、商人の護衛をしながら移動中に、虫に襲われた父娘をみつけ。父は死ぬ寸前だったが、娘は無事で。

そうしてであった、二人の物語。

イリがその過去故に揺れながらも、必死に生きているのは良いですねぇ。この時期は多少なり騒動あるけど、やはり平和だ……

 

カバー裏とオマケページが描き下ろし。

あと短編が1話追加されてる感じですね。カバー裏のイリの超反応が面白かった。WEB、同人誌、フランス版、日本版と4回目だからね、さすがに学ぶよ、って……笑った。


 
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