気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

講談社タイガ

占い師オリハシの嘘

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「ええ。代役とは言え、これも商売なわけですし」

(略)

「アフターサービスも万全に、っていうのが理想じゃないですか」

 

よく当たると評判の占い師オリハシ。

芸能人や財界関係者からも日々依頼が舞い込み、リピーターも多い人物が……失踪癖があり、たびたび妹に代役を任せているとか。

この物語は女子大生の奏が、姉の友人である修二と一緒に代役として持ち込まれた依頼を解決していく物語ですね。

 

まぁ奏には占いの力とかないので、依頼者から事情を聞いて論理的に解決を導いた後に、それっぽい理由付けをしているんですけど。

今回も含めて何度も代役を務めてボロを出していないのはお見事というほかない。

奏は自身の想い人である修二を相手にしている時だと、テンションがバグりがちなちょっと面白い子、の範疇なんですけど。

洞察力だったり、いざという時に危険に踏み込める覚悟だったり、秀でているというか尖った部分もある良い主人公でしたね。

 

オリハシの下に持ち込まれる依頼は「婚約者の様子がおかしいのは魔女の呪いではないか」だったり「蛇神憑きと噂があるメンバーを起用すれば、映画コンペで良い結果を残せるだろうか」みたいな、オカルトを絡めた話題になるんですが。

それに現実的な答えを見つけていく流れが、結構好きでした。失踪癖のある姉は、彼女なりに妹の奏を大事に思っているみたいでしたけど、何も説明せずに代役任せていくのはもうちょっとこう……どうにかならない? みたいな気持ちにはなった。

なので、終章の描写は個人的にポイント高かったですねー。奏ちゃん、洞察力鋭いのに見えてないものもありそうなのが面白かったです。



蓮見律子の推理交響楽 比翼のバルカローレ

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「きみの詩が、たしかに聞こえた」

 

大学を留年しブログで小銭を稼ぐ引きこもりの葉山。

何の因果か、天才作曲家蓮見律子に興味を持たれ引きずり出されることに。

普段は色々と足りないけれど最終的に帳尻を合わせる男子と、多くの事を見通せてスペックは高いけれどどこかズレている女子のコンビ、というあたりいつもの杉井節な感じ。

久しぶりにこの作者の作品読んだのですが、安定している、って印象ですねぇ。

 

律子は、天才作曲家で演奏のセンスもあるけれど……作詞のセンスはなかった。

曲のイメージが固まるとどこだろうと楽譜を描き始めてしまう悪癖もあるようですけどね……

自室で発露するならともかく、公共の施設や歩道で始めたら駄目でしょう……

いや常識的に見て警察呼ばれたりするだろ、って以外のもありますが。実際少なくとも一度は呼ばれたみたいだし。

今のご時世だったら、なんか変な事してるって動画取られて、公開前の楽譜の情報がネット流出……とかもありえそうで怖い、とか思ってしまった。

 

詩情が分からない律子が拾ってきたのが葉山で。

もっとも、素人がいきなりいい詩をかけるはずもなく、ボロクソに言われながら、流されるまま、律子の近くで時間を過ごしていますが。

そうすると「天才作曲家・蓮見律子の知り合い」という情報を得た演奏家と知己を得たりとか、色々と葉山の周りにも変化が起きて……ある事件に遭遇する事に。

 

しかし、何とも物悲しいというか世知辛いというか、ここまで破綻する前に踏みとどまれなかったのか、と考えてしまいますが。

無理だったから、あぁなってしまったんだよなぁ。不幸な出来事が重なって、命が喪われることになってましたが。

もし偶然が重ならなくても、別のものが失われるのは避けられなかったわけですし。

生き残った人が少し前向きになれたのだけが、救いでしょうか。きっといつか、あの楽譜を世に広めてくれることでしょう。



ジンカン 宮内庁神祇鑑定人・九鬼隗一郎

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「でも、ひとつ分かりました。なんにせよ人は死ぬんです。だったら、僕は自分が綺麗だと思うものにこだわりたい。自分がやりたいだけのわがままをしてから、笑って前のめりに倒れたい」

 

呪い緒を招く特殊文化財。

それを専門と知る神祇鑑定人九鬼と、就職に失敗し彼に拾われた夏目。

夏目は拾われた恩から九鬼を慕っている部分があるようですけど……

「怪しいものを持ち込まれてはたまらないから脱げ」と言われて実際に脱いで見せる人を信じちゃあかんのでは……

いや「僕は脱ぎませんからね」とちゃんと自己主張は出来てるので、まだ大丈夫かな……?

 

初っ端から眼帯のみ着用した全裸の男という驚愕の要素がぶち込まれて、衝撃を受けましたが……内容は面白くて、流石としか言えない。

片方はベテランで、片方は拾われたばかりの訳ありの新人。

現代において、魔術だとか呪いの品だとかの総称――特殊文化財を扱う部署に所属している二人がメインとなって話が進んでいきます。

古くは権威を持っているところだったようですが、どんどん影響力は落ちている様子。部長がノルマ果たさないと査定が厳しい、とか零してて世知辛い。

 

魔術という、一般的ではない手法に手を出した人、特殊文化財に魅入られた異端の側に寄っている人々を上手く描いている、と言いますか。

一話の「イェイツの日本刀」、三話の「月の小面」で描かれた呪いに囚われた人々の、情念は凄まじく、それを端的に描き切っているので引き込まれます。

それぞれの事情についてもまだまだ深く追求できそうですし、刊行続いてほしいなぁ。

 



大正箱娘 怪人カシオペイヤ

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「明けない夜は、あると思うかい?」

 

副題にある通り、今回は怪人カシオペイヤ絡みの事件が多く収録されております。

後ろ暗い秘密を暴く義賊のような行いをしているかの怪人の目的はなんなのか。

そして、もう一点。近頃町ではやっている、万病に効くとされる「箱薬」なる怪しい薬の存在。

あらすじの「少女・うららと調査に乗り出す」って言うのは割と語弊があるのではないかと思いましたけど。

 

相変わらず紺が、突っ込んでいって、悩んで、うららや周囲の人に助けてもらうというようなお話でありました。

彼女が踏み込まなければ、状況が変わらなかったかもしれない、という面もないとは言いませんが……見ていてハラハラするんですよね、紺。

 

彼女自身、覚悟があるから色々と進めてしまうのは危ういと思います。

いつかしっぺ返しを食らいそうな気もしますけどねぇ。

怪人カシオペイヤの標的に「箱娘」の存在も入っているようですし。そもそも「箱娘」予想以上にヤバそうな機密の塊みたいですし。

怪人が秘密を暴き回れる程度には都の闇は深いようですが……紺がそれに呑まれてしまわないよう祈るのみです。



小説の神様

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「俺は、お前が屑だとは思わない。退屈だとも、空っぽだとも、日陰だとも思わない。お前は凄い奴だよ、一也。お前は、それを当たり前のようにできるから、気付けないんだろう。けれどお前は、俺達では決してできないことが、できてしまえる人間なんだ」

 

学生で小説家デビューしたものの、鳴かず飛ばずな千谷一也。

物語を書く意味を忘れ、どうすれば売れるか、という部分ばかり気にするようになって。

悩める後輩から相談されても、割とばっさりと切り捨てるというか……

「小説が人の心なんて動かすもんか」と正面から行ってしまう辺り、かなり余裕がなくなっている感じはありますね。

そんな彼が、同い年の人気作家小余綾詩凪と出会い、二人で合作を作成する事に。

 

一也が、小説家であっても先が見えず絶望の渦中にいるので、終始暗いんですよね。

後半ようやく多少巻き返してくるんですが……そこに至るまでが合わない、って人が出てしまうんじゃないかとはちょっと思いました。

一也の友人でる九ノ里がいい性格していて、彼が居なかったら、一也は詩凪と会う前に心折れて筆をおいていたかもしれない。詩凪の方が抱えている問題にも気づけなかったかもしれない。

いい友人を持ってますねぇ、ホント。巡り合わせってこういう事だと思いますが。

支え合いながら、一つの作品を書き上げた彼らは止まることなく、次なる目標へ進んでいく。

 

書店員として、一読者として、辛い部分はありましたねぇ。

部数の話とか、売り上げ見込みから打ち切りになる話とか。よくある話なんですよ。よくあるからって、慣れるかってそんな筈はない。

作者が、どれだけ熱を上げていても、2巻の原稿が既に編集者の手に渡っていたとしてもそれが形になる保証はない。

 

最近は打ち切りになるまでの速度も、早くなってきてる感じがしますし、ネットがあるからすぐに情報が拡散していく。

良い評価が広まって、売り上げ伸びて重版につながるなんて流れなら歓迎ですが。酷評されてもそれが広まってしまう。

言葉によって傷付けられることだって、ままあるのです。それでも負けずに、何かを書き続けている二人の事は尊敬します。

 

小説の神様 (講談社タイガ)
相沢 沙呼
講談社
2016-06-21
 

大正箱娘 見習い記者と謎解き姫

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「――命を絶つのは、なりません。ならないんですよ。若いみそらで、女だからと、死んでしまうことはならないと思うんです」

(略)

「だって、こんなに。残されるものはこんなにも、悲しいのだから……」

 

時は大正。

主人公の英田紺は、新米の新聞記者。

「魑魅魍魎や怪異、そういった話をまことしやかに、あるいはそんなことなどなかったと証明するために」記事を書いている部署に所属していて。

最も上司と紺くらいしかいない零細部署で、新人の紺があちこち派遣されて、調べて……と行動している部署なんですが。

 

ある日、「呪いの箱が倉から見つかったので処分してほしい」という依頼が舞い込んで。

上司から「箱娘」なる、一風変わった存在の話を聞き、会いに行くことに。

箱にまつわる厄介ごとに相談に乗る娘、うらら。

紺は厄介事ばかり持ち込まれる部署で、走り回りながらうららとの交流も増えていき。

 

閉ざされた箱の話……と言う訳ではなく、様々なものに振り回される女性たちを描いたお話でありました。

旧家に嫁いだ女、舞台女優、妹を亡くした姉など。彼女たちにはどこか諦観が付きまとって。

もう取り戻せぬ物に思いを馳せたり、叶わなかった願いを胸に抱いていたり、喪失を嘆いたり。

そんな彼女たちと向き合う紺は、未だ癒えぬ傷を胸の内に負いながら止まらず、進み続けている強い人で。

 

「だってあなた、これだけ傷ついても」

(略)

「救いたいとは言っても、救われないとは、一度も言わないんだもの」

 

と作中で評されていましたが、まさにその通りで。

若く、無謀で無鉄砲で。見ていてハラハラしますけどね……。

紺が交流を続けている箱娘にも、並々ならぬ事情がありそうですが、その辺りの事情に触れる続編が出てほしいものですが……未だ出てない所を見るとどうだろうか。

 

晴追町には、ひまりさんがいる。 はじまりの春は犬を連れた人妻と

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「他人にお節介をやいたり親切にしたりする人間は、自分も淋しいんだって。だから淋しさに共感して、放っておけなくなってしまうんだって……他人の受け売りだけど」

 

心に傷を抱えた大学生の春近。

片道2時間ちかくかけて実家から大学まで通っていたが、ある事情から一人暮らしを始めて。

それは心機一転してのものではなく、傷から逃げ出すためのもので。

 

「なにをやっているんだろうか」と自分でも思うのに、変わることはできず。

悩んでいる時に、犬を連れて散歩している人妻、ひまりさんに出会い。

彼女に相談することで、憂鬱な気持ちが少しマシになった彼は、少しずつ変わってく。

 

通学時間が短縮されたため、サークルに入ろうかと動き出し、交流する範囲を広げてみたり。

おせっかいな性分がでて、いろんな問題に巻き込まれたり、解決のために動き回ったり。

まだまだ不慣れな部分もあり、振り回されるばかりだったり、動いて失敗したりなんかもしているんですが。

 

でも、周囲には優しい人がいて、相談に乗ってくれる相手もいて。鬱屈していたものを上手く昇華して、いい方向に変わることができたんじゃないですかね。

とりあえず、当初抱えていた問題はマシにはなりましたが。彼自身がもうちょっと報われてほしいかなぁ、とも少し思いました。

 
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