「さっきから何言ってるのかわからないよ。法律や武力より強い力って何? まさか神の力とでもいうの?」
「神ですか。言い得て妙ですね。ですが少し違います」
(略)
「金。それこそこの世の全てを支配しうる『力』です」
魔族が作った建物であるところのダンジョン。
そこに挑む冒険者たちには、魔物討伐のための超法規的措置として治外法権が適用されており……罪もない少女に暴力をふるったり、形見の宝石を奪おうと法的に咎められることはなかった。
力と地位に驕る者が多く、一般市民たちからすると魔物なんかよりも恐ろしい存在だった。
さらに冒険者たちはダンジョンの中で死んでも、即座に「本当の死」を迎えるのではなく、近くの教会で蘇生代を払うことで生き返ることまで出来て。
この物語はそんな冒険者たちに、法外な金額の蘇生代を請求していく「詐欺シスター」ことシスター・レイチェルの物語です。
彼女はとあるAランクダンジョン前の教会で、冒険者をだましていたわけですが……新たな狩場としてSランクダンジョン近くの街に足を運んで。
そこで横暴な冒険者によって窮地に立たされ、危機感と恐怖によって死を選ぼうとしていた少女セイラと遭遇。
何の気まぐれか、レイチェルはセイラを助けることを決めて、実際にセイラが奪われた形見を取り返したりしていたわけです。
横暴な冒険者を騙すことに忌避感のないレイチェルと、許せる相手ではないけれどだからと言って見捨てたり追い打ちを掛けようとはしないセイラは、水と油……というほど相性悪くはないけど、相容れない部分がある相手ですが。
だからこそ、というべきか不思議と交流が続いていって。その過程でレイチェルがどうして詐欺シスターとして金にガメつい行動をとっていたのかという過去が明らかになるわけですが。
「治外法権」を逆手に好き勝手してる冒険者の行動があまりにも目について、法治という概念が既に死にかけているのではないか、とすら思える状況ですな……。そんな中で良く普通の生活をセイラ達は送ってるよ。偉い。
まぁ好き勝手していた輩にしっかり反撃する展開になってくれたのは良かったですね。