「皮算用か? 仕事の基本を教えてやろう」
「……ほう?」
(略)
「仕事は一つずつ、確実にだ」
なんかもういつも通りな感じがする、病室にいるジグからスタート。
荒事をやってる冒険者ばかり見ている医師のドレアから「まともな人間なら二回は死んでる怪我」とか評されているのは、やっぱり笑える。
シアーシャの仮説によれば、魔力のある異大陸の住人は魔法で底上げしてる分肉体そのものが頑丈ではなく、ジグは魔力がないからこそ素のスペックが高いという差異が現れているのではないかという事でしたけど。まぁそれを踏まえた上で、ジグ個人の回復力とか高そうですけどね……。
ジグも回復したものの、医療費や装備の修繕費で財布が寂しくなってしまったから、仕事を探そうとしていた矢先、緊急依頼がシアーシャに飛び込んできて。
刃蜂の巣に攻撃を当ててしまったバカがいて、それによって狩場が大混乱。転移陣近くに居た人々は逃げられたものの、80人近くが未帰還で……。
出来るだけ多くを救ってほしい、と言う人命救助の依頼を受けることに。ジグは傭兵としてシアーシャの警護を優先しようとしていましたが、副頭取のカークが仕事に誠実なジグに対して依頼を持ち掛けてきて。
シアーシャの同行者申請を出しているジグに、外部協力者として適切な報酬を出すという形で上手く話を持って行ったのは流石一つの組織で責任を負う側にいるだけの事はある。
要救助者の人数が多いため、シアーシャ達以外にも冒険者が派遣されることになって。
可能な範囲で助けて回ってはいましたが、それでも結構な犠牲を出してしまう状況で。そんな場所で、人を抱えたまま刃蜂の群れを引き付けて逃げおおせたジグ、凄まじいな……。
「助けた人数に応じた報酬を払い、出来具合で評価が決まる」という依頼で、ジグが直接助けたのは3人に収まっていましたが、刃蜂を引き付けたことをカークが功績としてしっかり評価してくれたのは良かった。
シアーシャ達が来てからこっち、異常な行動をする魔獣ばかり見て来たので読者目線だといっそそれが普通に想えて来ましたが。
当然、そんなことはなく。今回の刃蜂の騒動でも敢えてそれをやった、工作員のような輩が要るのではないか、と言う疑いが出てくることになって。
ジグがカークから当たらしい依頼を受けて、犯人探しをしていましたけど。目立つのもあってあまり得意分野ではないんでしょうけど、仕事に誠実な稀有な傭兵として実績を積み上げたり、偏見がないことで亜人からも裏社会からも話を聞ける立場なのは使い勝手が良い人員ではありますよね。
……まぁ、使い方を間違えるとシアーシャっていう爆弾が突っ込んでくるので、あまり無茶な使い方はできないんですけどぉ。今回上下巻になっているとおり、ちょっと最後、カークさんの胃が心配になる展開になってるので、手を合わせておきましょう。合掌。