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「一日一前――なんでもいいから、迷ったときは一歩だけでも前に進め、が小さい頃から俺のモットーなんだ。そういう風に生きろってのが母親との約束でさ。それを守ってるだけ」

「一日一前……ですか」

「昨日より、何かひとつでも成長しろ、みたいな意味かな。それか単に、迷ったときは後ろに引かずに前に出ろ的な精神論かもしれないけど。今のところ破ったことはないんだ」

 

電子限定レーベル「ダンガン文庫」作品。

当初は自社サイトでの販売のみでしたけど、近ごろBOOKWALKERなどでも販売スタートしました。記事作成時点では自社サイトだと660円、他社ストアでは880円と手数料とかの関係かちょっと値上がりしてますね。

個人的には今以上に閲覧サイト増やしたくなくて、他社配信スタートを待っていたので思ったより早くて嬉しかった。

まだ1作しか読めてないのでレーベルの性質なのかは知りませんが、カラー口絵だけで物語中の挿絵は無し。カラー口絵2回(見開き1回、左右それぞれのページが見られる拡大状態で1回)出て来たのは謎。

 

と、そんなレーベルそのものについての話はこれくらいにして。本編の感想。

舞台は大宮。涼暮先生は、他作品と繋がりのある物語作りをされている方なので、色々と嬉しい描写が多かったですね。

ざっくり言うと、現代舞台の群像劇。

メインキャラは4人。

一般人である男子高校生・道風夕介くんは、ある日血を流して倒れている少女を見つけ保護することになって。

そんな夕介くんの隣に住む後輩、曾木原御伽。実はSF的な技術・組織に通じた人物であり……怪しげな事件の調査を上司から依頼されることに。

 

さらに喫茶店店主(代理)である和谷仄火。あくまで喫茶店店主(代理)が本業であるそうですが……実は魔術師であり、曾木原とは別の形で秘された世界に通じている人物であった。

最後の一人は、鈴木一郎という運び屋の人物。ケースに刀仕込んでそうな後ろ暗い人物だろうとなんだろうと、仕事で有れば運びおおせる人物であり……危険な場所に近づくと、嫌な味を感じるという異質な能力を持っていた。

 

夕介が見つけた白い少女、ロク。未来で作られた人工の精霊……的な何かだと自称する怪しい人物ではありますが。夕介は彼女を助けることを決めて。

ただ夕介があった時彼女は負傷していた……つまりは、それを為した人物がいるわけですよねぇ。そもそも、ロクは妙な出生であるようでしたし。その根源に通じる人物もまた登場して。そうした様々な問題に4人が、各々の事情から関係していくことになって……。

終盤にそれぞれの道が重なって、協力し合うという展開が実に良い群像劇してて好きでしたね。

 

夕介とロクのやり取りが最初から最後まで好きでした。群像劇なので4人全員主人公みたいなもんですけど、純粋なボーイ・ミーツ・ガールやってる夕介が特に好きかな。

曾木原ちゃんの特殊さとか、和谷の抱えていそうな事情とか。鈴木の奇妙な縁だとかいろいろ、掘り下げていったらもっと面白くなりそうな要素は多いので、続き読みたいものですけどね。

 

涼暮先生の作品好きで。先述の通り他の作品との繋がりが強い作風なので、大宮の結界壊されちゃって、「あらぁ」って気持ちにはなりました。

どうか腕の良い修復師が見つかるといいんですけど。それはそれで、大宮で新しい騒動が巻き起こりそうで不安ですがね。

あとは「きょーちゃん」の描写と、「きょーちゃんの妹」の情報が出てきたりするのが、ねぇ。他の作品とかをちょっと読み返したくなってきましたね……。