「私の勝手な考えですが。シナリオに気を取られて暗い顔をするより、思いっきり楽しんで笑っている方が、どんな結果であれ後悔は少ないと思います」
なろうからの書籍化作品でWEB既読。
タイトルから分かる通り「乙女ゲー世界に転生する」系の作品です。
ゲーム的には乙女ゲームにバトルファンタジー要素を足して、悪役令嬢役の子に虐められるヒロインと、ヒロインを想う攻略対象がいて。
最後には悪役令嬢は、悪の魔法によって怪物と化す破滅エンドに到達するとか。
しかし、本作の主人公は転生者ながら、そうしたゲームの事はさっぱり把握していないラゼという少女です。
ある事件によって家族を失い軍人になった彼女は、前世の知識を持っていることもあり年齢不相応に優秀で。情勢が良くなかったこともアリ、実績を上げてかなり昇給してるようです。
「狼牙」なんて称号までもらっているようですが、名前と容貌は知る人ぞ知る秘匿された状態。
そんな彼女に、学園に通い「金の卵」と呼ばれている王子と同世代の子供達を見守るように、という任務が下されるところから物語が始まります。
大人たちからするとこれは、これまで戦いで酷使したラゼに与えた休暇というか。三年間とはいえ、学生とした若いなりに楽しんでほしいという思いやりの想いが含まれてはいるようす。
最も、ラゼ自身がかなり軍人としての思考に染まっているというか、既に個を確立してるからなぁ。
特待生になれるくらいには優秀で、ちょっと浮いて見える時もありますが。同姓の友人を作って、癒しを得たりしてるので、少しずつ安らいでくれればいいなぁとは思います。
ちなみに、ラゼが乙女ゲームの事を知らないので、その部分をサポートする事になるのが本来悪役令嬢になるはずだったカーナ嬢。
彼女も転生者で、破滅を回避したいと思い悩み、ラゼという相談相手を得た事で安心してくれればいいんですが。
ラゼとカーナの介入によって変動しつつも、「乙女ゲームのイベント」が発生する強制力のようなものもあるようなのでどうなる事やら。
カーナは婚約者の王子といい感じですし。本来のヒロイン相当なフォリアにも、攻略対象以外に想う相手が居たりと、既にゲームから大分離れているようでもありますが。
この「イベント強制力」がどう作用するか分からないのが困りものですなー。
書き下ろし番外編で「とある少女の過去」として、ラゼが軍人を志すきっかけが描かれたりしてます。これだけでも書籍化してよかったですね。
……彼女の家族が失われる前後のエピソードなので、そこを想うと心が痛みますが。立ち止まらないのが、ラゼらしいよなとは思いました。