「いや、実際とんでもない能力だよ。魔物の素材は物によってはかなり入手が困難だ。魔剣製作や魔道具に使える物も多く、量も必要だしな。だがそんなものを自在に生み出せるなんて、とてもじゃないが俺にはこいつを殺せないよ。……もったいなくて」
極めた魔術バカであるところの第七王子ロイド。
彼が今回目を付けたのは、教会関係者が扱う神聖魔術。
……実のところ、昔にも興味を持ったことがあったみたいですけど。その当時は、姿を隠す技術が今ほど秀でておらず……捜索が露見してしまって教会に出禁を喰らってるとか、いったい何をしているのかと。
音楽に打ち込んでいて、演奏中には他の声が聞こえなくなったりする集中力を持つ、音楽バカ版ロイドみたいな存在である第四王女サリアを頼って教会を訪問することに。
姉や教会のシスターなんかは、いつも通りロイドの才能に別の期待をしているのでちょっと協力してくれることになったわけですが。
どこまでも魔術の事しか考えてないロイドには届いてないんですよねぇ……。
普通の魔術とは違う形式で成り立っている神聖魔術は、ロイドをして一目で見抜けないものみたいでしたけど。
……魔力の痕跡を察知して、神聖魔術を授けた天界に棲む住人の存在を察知。そこに空間転移することで無理やり縁を持ち、自分の力を見せつけた上で協力体制を築くことに。
その天使、ジリエルは女性大好きで目をかけたシスターを天界から観察しているような変態でしたが。
ロイドの前では興味深い研究対象でしかなくって。グリモのようにロイドに宿って色々と知識を貸してくれるのありがたかったですね。
……天使と魔人とを宿した王子とか、後の世代に伝説の人物として語られる可能性もあるな……。マッドサイエンティストとして名を遺す可能性もワンチャンあるけど……。
今回、敵として現れたマッドサイエンティストを「素材として貴重だから殺せない」とか、倫理じゃなく損得で判断してるあたりとか素質はあるよ。
魔術に打ち込みすぎるだけで、根は善良だからそこまで道を踏み外したりはしないとは思いますが……。「他人も自分と同じくらい、魔術に打ち込めるはず」という前提で無茶ぶりしたりしてるからなぁ。結果的に今のところ良い結果になってるから良いか……。