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「領主としての重責を果たしたいと考えています。皆さんが望む領主がどういうものかはわかりませんが、私は皆さんの暮らしが少しでも向上するよう、出来ることを惜しまずやっていくつもりです」
母が亡くなった後、父親から無視されて育った伯爵令嬢マルティーヌ・モンテンセン。
彼女が十二歳の時に、父親が後妻を迎えようとして結婚式を盛大にあげようとしたものの……父親は女遊びが激しく、嫉妬に駆られた女が乱入してきて刺されて死亡。
モンテンセン伯爵家の血を継いでいるのがマルティーヌだけになってしまったため、彼女は幼いながらに伯爵家当主に就任することになってしまった。
家庭教師もつけられず教育を受けられていなかったマルティーヌは、そのままだったらかなり苦労することになったでしょうけど。
時を同じくして、マルティーヌはOLとして働いていた前世の記憶を取り戻して。
貴族としての常識なんかにはどうしても疎いけれど、それでも必要なことを考えて行動できるだけの下地を得る事は出来た。
マルティーヌは伯爵位を継ぐことになるが、未成年であるため後見人を立てる必要がある。
しかし、通例である三親等以内の成人男性の該当者がおらず……数少ない知人を頼って、モンテンセン伯爵家と主要産業が被らず頼れる相手の候補として挙げられたのがリュドビク・フランクール公爵だった。
マルティーヌは、縁もゆかりもなかった公爵に後見人を引き受けてもらうために、せめて領地の現状は視察したいと馬車を走らせ、数日滞在して王都に戻るという強行軍をこなして。
その上で前世知識も活かしてプレゼン資料を作成したり、この世界で主流であるお砂糖ジャリジャリで甘すぎる菓子とは違う、前世流のお菓子で持て成したりと出来る限りのことをしてるのは好感が持てます。
まぁ、幼い少女と領地を食い物にしようとする不届き者の動きを察知していたので、マルティーヌが期待外れだろうと後見人を引き受けてくれるつもりではあったみたいですけど。
思ったよりも譲歩を引き出せた感はありますね。
マルティーヌはまだ十二歳で本来なら大人の庇護下にあるべき年齢だ、と言ってくれるのは母を亡くしてロクデナシの父親には見放されていたマルティーヌにとってありがたい言葉でありましたけど。
それはそれとして、マルティーヌは家庭教師を付けられていなかったために教育が行き届いていない部分も多く……家庭教師を紹介してくれたのはありがたいですけど、求めるハードルが高すぎるというか。
まずマルティーヌに必要なのは教育だから領地経営に関しては、後見人の自分と家令に任せておけって言うのは、暴論じゃないかなぁ。マルティーヌ相手に「庇護されるべき」と言いつつ、当人の態度が後見人として大人として庇護するものではない。
家庭教師として派遣されたサッシュバル夫人は、途中すれ違いこそあったもののマルティーヌと話をして、折り合いをつけてくれたというのに。
いやまぁ、前世主体になってるマルティーヌ、だらけ癖があるのでリュドビク公爵みたいに、釘を刺してくれたり「最初から楽な目標設定をしてしまえば甘えが出る」と課題を貸してくれるのは、マルティーヌの為になる事ではあるんですよね。
ただリュドビク公爵がパクパク美味しそうに食べてるパウンドケーキとか、マルティーヌが「勉強以外」に時間を使わないと生み出されなかったものなんですよ? というか。マルティーヌ勉強に専念しろというのであれば、それ以外の利益享受しようとするのどうなのよ、みたいな気持ちにはなる。
……縁もゆかりもなかった伯爵家の後見人になってくれたり、人材の紹介もしてくれてるの公爵家ならではなので助けられてはいるんですけどねぇ。まぁこれまで交流が無かった2人が出会ったことで、ちょうどよいバランスを探っている状況ではあるので、上手いところに落ち着いてくれると良いですねぇ。