「私が貴方たちに魔法を教えてあげよう。貴方たちにもかけられる素敵な魔法を。だから貴方たちも、私のために素敵な水着をつくってくれないかな? これが成功したら、きっとエルダーナ伯爵領はもっと栄えて、皆で幸せになれるよ!」
これはただの願いでしかないけれど、私は願いで終わらせる気はない。だから、一緒にやってみない? これは、そんなお誘い。
きっと、私が待ち望む反応がくるのはもう少し後だ。
前巻から変わらず帝国滞在中のアニスたち。
ユフィというパートナーを得て、キテレツ王女として遠ざけられていたころとは違い、王姉殿下として慕われるようにもなって。立場が向上した以上、それに相応しい責任なんかもついて回って、王侯貴族であれば社交なんかもその範疇に入ってくるわけですが。
帝国訪問が順調に進んでいた……いや進みすぎたことで、アニスのキャパを超えてしまうことになったわけです。
がんばっているのは間違いないけど、「限界を迎えた姿を見ると残念さが際立つ」なんてユフィにすら言われる始末。まぁ最初の挿絵にもなってる、ソファでユフィに抱き着いてイヤイヤモードになってるアニスは残念度増してましたが……。
ルークハイムが帝国の都合で振り回してばかりなのも申し訳ない、とエアドラという足があれば帝国各地を訪問することが可能だろう、と息抜きの視察に連れて行ってもらえることに。
そして選ばれたのがエルダーナ伯爵領。皇帝に親しい派閥であること、アニスたちが視察するのにふさわしい港町であることなどが理由で。
この世界、海にも当然ですが魔物がいて、そのせいで海は恐ろしい場所とされて開拓が進んでいない領域でもあるとか。
王国でも手を出していきたい部分であるため、道半ばであっても形になっている領地を見られるのはありがたい話ですね。
前世知識のあるアニスは、海水浴的に遊びたいという欲求も沸いてきてましたけど……先述の通り、魔物が多いこともあってまだまだ海は遊びの場ではなく。水着も、実利優先で可愛さに欠けたものしかなかった。
海に親しんだ前世を思い出して、ついつい情報を零してしまって。関係改善中とはいえ、他国で皇帝とかも居る前で、前世知識を零してるのはうっかりが過ぎる。まぁ、懐かしくなるのも無理はない。
ただそうやって前世の事を懐かしんだりしつつも、アニスは「前世の世界の方が良かった」とは微塵も思っていなくて。今生きるのはこの世界だと受け入れているし、何よりこの世界にはユフィがいるから、とストレートに言うのがアニスらしいですねぇ。
そして空飛ぶドレス王天衣のような、海中での活動をサポートする魔道具は作れないのかと言う話になり……ユフィから後押しももらったので、アニスが夢に向かって駆けだすことに。
途中でサーペントという、海に住む魔物が現れて……その素材をアニスが欲したことで、より力を注ぎ込むことにもなって。周囲を驚かせていたのは、流石と言うかなんというか。
実に良い息抜きになったんじゃないですかね。めでたしめでたし……で終われるかと思いきや、急報が飛び込んできて騒がしくなりましたが。さて、どうなるやら。