「もう一度聞きます。聖也さんは過去にしかいないんですか? 本当に『これから』はないんですか?」
九曜先生の新作―。
同年代や先輩キャラがヒロインの事が多かったイメージなので、今回は年下キャラがメインと言うことで新鮮。
とは言えその少女黒江美紗は、中学生とは思えない程身体が成長していて、それを自覚して武器にしてくるんだから、なるほど小悪魔……
でも、メンタルまで育っているわけではなくて、沈んだり悩んだりするところもあるのは年相応な感じがしてよいですね。
主人公の比良坂聖也は、両親の離婚を切っ掛けに母について引っ越してきた高校2年生。
以前はバスケをしていて、プロを目指していたくらいだったが……離婚前後の騒動がもとで引退。引っ越しの際に持っていた道具なども全部処分してしまって、無気力になっている状態。
何の展望もないが「余生」を送るつもり……とか言っていますが。
彼は彼でまだまだ青くて、全然バスケへの想いを振りきれてないんですよね。
学校でもバスケをやっていた事は伏せたり、陰キャぶったりしていましたけれど。
実際にボールを手にしてしまえば、それまで積み重ねてきた時間に嘘を吐くことができず、つい真面目にプレイしてしまう。
美沙相手にフリースロー勝負でちょっとした賭けを持ち掛けられた時とかも、良いようにからかわれて、彼女の願いを叶える形になってますしね。
不利な条件設定な賭けに乗らなきゃいいのに……と思いますけど、それが出来ないくらい真剣だったんだろうな、というのが伝わってくる。スイッチが入る感じが分かりますからね……。
美沙との交流を通じて少し前向きに慣れたのなら良かった。美沙の方は美沙の方で、抱えていた悩みが落着したようですし。
そうポンポン立ち消えにしていい話なのかなぁ、と美沙母に対してモヤっとしたというか。お相手が少し可哀想に思えてしまったのは歳か。
タイトルが「小悪魔ガール『に』」じゃなくて「小悪魔ガール『は』」なのが美味しいというか。それを踏まえると美沙のアピールが可愛く思えますね。頑張れー。