気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

鈴木理華

海賊と女王の航宙記 海賊王と開かずの《門》

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「きみがいつか、泣けるように祈っている」

「…………」

「思い切り泣いて、悲しんで、亡くなったご家族にさよならを言って。――きみの人生はそれからだ」

 

テンペスタで起きた事件は、一先ず決着した。

しかし、犯人たちの要求したのはダイナマイトジョーの八百長以外に、門調査の延期も含まれていたわけで……まだ裏がある。

まずは厳重な警備が敷かれている筈のテンペスタに、どうして犯人たちが潜入出来たかの調査をすることになりましたが……案の定、ボンクラ元2代目社長のところに辿り着いて。

いやぁ、更生することなく好き勝手生きて、無責任極まる振る舞いをしてて逆に凄い。全く尊敬できないけど。

 

そこで得られた情報について調査を進めていく途中で、別のところで起きた問題の相談も受ける事になって。

連邦非加盟の辺境にある惑星。そこでは軍事独裁政権と対抗勢力の内紛が勃発していた。

そしてそこにあるマース企業の開発品が横流しされている可能性が出てきたとかで。

部品だけじゃなくて兵器まで持ってかれてしまったのは、流石に脇が甘かったのではと言わざるを得ませんが。

 

各地で起きていた騒動が、1つの門を通して辺境惑星に通じていたのは面白い展開でしたね。

数値が安定せず場所だけは把握していたが、ケリーも飛んだことのなかった門。そこの安定期に遭遇して、飛ぶことが出来たの彼が楽しそうで何よりです。

……それの目撃者が多数出てしまったのはちょっと頭の痛い問題ではありますが。差し迫っていたからなぁ……。それを承知の上でケリーも飛んだわけですし、彼ならどうとでも対処してくれるでしょうけど。

海賊と女王の航宙記 パピヨンルージュと嵐の星

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「きみは……魔法使いなのかい?」

「昔、そんな渾名で呼ばれたこともあるな」

 

「海賊と女王の~」とついている通り、ケリーとジャスミンがメインで展開していくエピソードですね。

今回は、峡谷競争の時に世話になったブラケリマの整備士ガストーネがジャスミンに頼みたいことがある、と連絡してきた事から物語が動き始めます。

パピヨンルージュとして名を馳せ過ぎたため、最初はあまり気乗りしていなかったジャスミンですが、かつての騒動の折ディアス社の筆頭株主になっていたのを引き合いに出されると無下にも出来ず足を運ぶことに。

なんだかんだでガストーネも彼女との付き合い方が分かって来てますね……理解者が増えてくれるのは良い事です。

 

なぜわざわざジャスミンを引っ張り出す必要があったのかと言うと、近頃の峡谷競争での流行に原因があって。

いくつものレースが開催されるブラケリマでは、どうしたって人気のある場所とない場所が出てくるわけで。そんな中で、地方の1か所が「障害物競走」という新たなレースの形を提示。

 

ハート形とかあみだくじ状とか、特殊な形にしたビームネットをかい潜るレースが大うけで、その流れには逆らえずついには怪物級でも実施されることになってしまったとか。

しかし管制頭脳を乗せていない怪物級はそのサイズなどもあって、他の階級とはまとめて語れない。けれど、研究者とその辺りの意思疎通がうまくいかずに拗れてるとか。

そこでパピヨンルージュに実物を見て、飛んで貰いたいって要望で……実際に飛ぶ羽目になったわけですが。流石にジャスミンとクインビーのコンビの敵ではなかった。

とは言え、本来の怪物級が飛べる配置ではなかったというのも間違いはなくて。納得できない研究者を複座に乗せて飛んでみせることで納得させたのは、力技でしたがお見事。

 

……それで終わってれば、良かったんですけどねぇ。

パピヨンルージュの人気は未だにブラケリマでは根強く、大統領が彼女の一番のファンだと公言してのけるほど。

付き合いでパーティーに参加する事になったり、研究施設となっているオアシスで起きた事件を解決する事になったりと、相変わらずトラブルを引き寄せる運みたいなものを持ってますなぁ。

でも、この2人が居たからこそ問題が大事にならずに済んだのも確かなので、ブラケリマは運が良かった。

 

飛ぶ空の形は違えど、実力者としてジャスミンの事を認めてくれるダイナマイトジョーとか、好感の持てるキャラが多いので楽しめましたね。

96Pの「知らない世界の扉が見えた」とパピヨンルージュの飛行を評し、「ぼくには必要ないものだ」と言ったシーンとか結構好きです。

天使たちの課外活動8 ガーディ少年と暁の天使(下)

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「……残念です。どんなに望んでも、神はわたしに魂を描く術を与えてはくださらなかった……」

「代わりに魂を見抜く眼をくれたよ」

 

店の住所などを公にしないように誓約書を交わす、特殊な臨時店舗「テオドール・ダナー」。

しかし人の口に戸は立てられず、ひっそりと噂が広がっていくことに。そんな中、変色気味の娘でも、テオドールの神業のごとき皿なら食べられるかも、なんて相談まで持ち込まれて。

夜の営業時間に子供を連れてくるわけにもいかず、昼に店員たちと賄いを食べる形になって。ハンバーガーですら絶品作るんだから、お見事というか。……消えるホットドッグ作ってる時点で今さらか。

 

その後まーたテオドールが誘拐されてましたが、この人本当に料理と店が関係しない事柄に関しては隙が多いというか。もう四六時中護衛張り付かせておくべきなのでは……?

今回はそこまで悪意のあるものでもなかったのと、テオドールがついて行ったのも料理に使えそうな香りを察知したからだったり、あまりにも筋金入りなアレではありましたが。

 

そして、もう一つ。いくらなんでも毎日美術館から絵を運んで、戻すなんてことをしていたら、流石に引っ掛かりを覚える人も現れるか。

本職だったので尾行されても撒いてはいましたけど、スタートとゴールに運搬用の車両を変えられないとどうしても限界があると言うべきか。

核心には至らなかったけれど行動を起こした人も起こした人ですが……まぁ、天使たちが居るお店に手を出して目的を達成できるはずもなく。返り討ちにあってたのは笑った。あっけないわぁ。

 

テオドール・ダナーの熱狂的なファンである2世閣下が、父親である1世を引っ張り出して来たのも、1世は1世でそうとは知らずとも彼の料理のファンだったと明らかになったり、本当に凄まじい。

人の名前を覚えられなくても客の顔は忘れず、求められる品を提供する彼は本当にプロだよなぁ。

そして終盤に明らかになった、ガーディ少年の正体にはびっくり。意外なところで縁があったんだな、と言いますか。あの絵師は死後に好き放題動き回りすぎでは。多分蘇生できる類の魂でしょ、アレ。

この上下巻でシティでの臨時営業は終了となりましたが、さてこの後はどんな感じでシリーズ展開されてくんでしょうかねー。楽しみ。

天使たちの課外活動7 ガーディ少年と暁の天使(上)

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「テオ先生を見てるとな、料理人は生涯修行だって言う基本中の基本をいつも思い知らされるのさ」

 

ついにシティで営業を開始した「テオドール・ダナー」。

あくまで本店が改装工事をして言える三か月間の期間限定であること。そして後任が誰になろうとも、テオドールと同じ料理は出せない。

そんな事情が重なってルゥはお客さんに、店の住所などの情報を公にしないことを求める誓約書を用意していましたが……いい仕事をしてると言わざるを得ない。

まぁ、訪問するお客さんは地位が高いだけあって我が強く、食って掛かるような人もいましたが、軽くあしらってました。

 

店の方は概ね問題なく進行してるようですが。テオドールが去った後の店に残るスタッフたち、特にテオドールの後継者として見られる料理長の立場を争う若手2人は流石に可哀想になったな……。

そりゃあ血の気くらい失せるってものでしょう。それで諦めず看板となる料理を開発しようと頑張る気骨があったのは何よりですが。

彼らの師匠、肉料理で名を馳せたザックが、テオドールの技量を見て「嬉しいじゃねえか」と言ってのけた向上心は凄まじいと思いましたね。

 

リィとシェラも学業の合間に応援に来て、料理は出来ないけど解体が得意なリィが「親方」認定されていたのには笑ってしまった。

料理と「店に置く美術品の審美眼」は冴えわたってるテオドール。彼の選んだ品の確かさは、お客さんたちの反応からも確かで。それらの品に負けないと思わせる料理を出したのは流石です。

……連日『暁の天使』を持ち出される美術館の関係者の皆様の心痛は、本当にいかほどかって思いますが。ゆ、行方不明になってた品が見つかったのは良かったですね! 問題は借りられるかどうか……。

トゥルークの海賊4

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「なにもしないなんて、よく言うよな。あれのどこが『何もしてない』だよ。やりすぎだぞ」

 

ライジャの両親が、結婚したまま僧籍を回復する事と、昇進することが認められて。

ジャスミンは貴重な女友達のめでたい席には参加したがった。さらに、ライジャの母エルヴァリータは、これは「大いなる闇」ことルゥの言葉によって決まったころだから、彼に臨席してほしかった。

 

しかし、ルゥは言うに及ばず。ダイアナにとってもトゥルークは居心地のいい場所ではなく……しかし周囲はそれをまげて赴いてくれないか、という。あまりにも嫌過ぎて、二人で家出したのには、正直笑いましたね。

 

3巻での大潮騒動の後、地上に戻ってからのエピソードでは、ダイアナとビーティのやり取りがコミカルで楽しかったですし。

一週間惑星に閉じ込められたリィとシェラの小論文発表会の様子も笑えましたね。思わず「普通じゃない君らの目では分からない事が多い。普通じゃないんだから!」的なことを叫んだ先生は……うん、間違ってないよ。

金銀天使は言って良い事と悪い事をある程度判別できる理性も持ってるけど、衛星絡みとか常識が抜けてる部分あるからなぁ。

 

トゥルークで起きた出来事を何も知らない事実に心揺れたジェームズの暴走もありましたが。祖父母がダンに連絡をとって、しっかり言い含めろと説きに来たのも愉快ではありましたね。

アレクが情報を伝えて話してほしいと言うにとどまったけど、ジンジャーはもっと強い言葉を使うし。ジャスミンは拳骨落とそうとするしなぁ。留める役割を担う羽目になったリィとシェラはお疲れ様……。

 

リィに頼まれてケリーが説得役になっていましたが、うまくジェームズを躍らせたというか。しっかり言い含めていたのはさすが海千山千を渡ってきたキャラだけある。……ま、ジェームズの見ている世界が狭かったから容易かったというのもありますけどね。

ダンが息子とのやり取りで「父親と息子の関係」と言うものに想いを馳せて、ケリーと「自分の死亡記事」について話せたり、ランバルトから父の門跳躍の才能に関して聞いたりして、少しは見え方変わったのかなぁ、なんて思いました。

トゥルークの海賊3

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「これはおっさんの喧嘩だ。でしゃばる気はないが、俺も一枚噛ませてもらうぜ」

 

一通りの騒動に決着がつく完結編。この後、4巻も刊行されてますが、そちらは事件終わったあとの後日譚を作者さんが「もう少し書いてみたくなった」って書いてくれたものになるそうです。

 

偽物のシェンブラック海賊団は連邦軍の派遣してきた艦隊を撃破し、トゥルークの船とそこにのった人員を人質にとり、薬の材料を大量に要求。

交渉を行いつつ受け渡し期日の7日後までに、事情を詳らかにしようと奔走するケリー達の苦労が偲ばれます。……今回は特にダイアンが大変そうでしたね。調査する情報が膨大すぎて、それでも尻尾を掴むあたりが彼女だよなぁ。

 

海賊たちの決戦の舞台に、名を汚されたグランド・セブンの乗組員たちが駆けつけてくれたのも熱かったですし……2巻の最後に飛び立った船の正体には驚かされました。

この海域で異常事態が発生しまくる原因は不明ながら、起こると知っていれば対応できる。その情報を持つ人員が来てくれたのはありがたかった。

 

付けるべき決着をしっかり付けて、無事地上に帰還したケリー達もティーナの乗組員もお見事でした。

このドタバタ騒動というか、トゥルークの僧侶たちの特殊さ。50年おきに発生している「大潮」の実態などなど。ダンや連邦関係者が今回目にしたわけですけれど。

これはまぁ、事前に語っていたところで信じては貰えないだろうし、これを仮に報告書にまとめあげたとして、読んだ人が誰も信じられない怪文書になるんだろうなぁ……。

 

トゥルークでの海賊騒動が終結してから、薬の問題が決着したわけですが。まさか出所が、ねぇ……。ジャスミンが居たからこそ解決までが早まっただろうなぁ、というか。

連邦、意外と足元に厄ネタ抱え込んでますよね。関わってる人員が多いからこそ、トラブルも怒り得るんでしょうけどそれにしたって……。

事後処理のあわただしさを思うに、かなり広まっていたんでしょうけど、完全に爆発する前に火元を抑えられたのは何よりでした。

 

巻末にはトゥルークの海賊序章「大いなる闇が来た」を収録。

トゥルークの僧侶に初めて会った時、ジャスミンがその強い在り方から「本当に女性ですか」と問われているのは笑う。ジャスミンは体躯も大きいから、よく言われることながら不快感を感じさせなかったというあたり、彼らの積んできた徳を感じる。

 

1世に招待されて、トゥルークの高官とアドレイヤに対面して。ライジャの父が現れて、ライジャがやってきて……街中でルゥと出会ったライジャの母親までやってくるんだから、もう大変ですよ。

特に普通に講演聞きに行っただけなのに、ライジャの母親の秘書してる人に跪かれたルゥが。ライジャの両親は、僧籍を離れてなお高位の僧侶が持つ感能力を失っていない、というのも1世からすれば見逃せない情報だったようですけど。

ここでの会話が、あの大騒ぎにつながるのか……とちょっと天を仰ぎたくはなりました。

 

トゥルークの海賊2

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「せっかくここまで来たんだ。こんな物騒なものをわざわざ見たいなんて物好きだと思うけど、面倒は一度ですませたほうがいい」

 

最初に描かれた、ケリーとグランド・セブンと呼ばれた海賊たちの交流がとても好きですね……。

連邦に知られていない門の先につくった海賊たちの保養所。そこで名の知れた海賊たちが鉢合わせて。ケリーのことを評価している人と、侮ってるやつらと態度が綺麗に分かれてていっそ清々しかった。

 

ケリーを評価していたグランド・セブンの面々は、なるほど名の知れた海賊の仁義を感じるというか。荒くれ者ではあるんだろうけど、好感の持てる部分もある良いキャラになってましたね。

これを見ると『スカーレット・ウィザード』でケリーを攫った馬鹿どもや、ショウ駆動機関が広まってから残虐さの増した近年の海賊たちとは一線を画すというか。グランド・セブンの名に心躍る船乗りが居るのも頷ける。

 

そして彼らはケリー・クーアの正体に気が付きながらも表社会に漏らすことは無かった。かつての縁に対する義理と恩がある。そんなケリーの前で「二代目シェンブラック海賊団」を名乗ったのは、あまりにも愚かすぎる。

 

……と思いましたが。トゥルーク近郊の宇宙に生じる「異常」はダイアナですら判別不能のもので、逃げられてしまったのは痛い。とはいえ、ケリーが絶対逃がすはずもなく。残り僅かの余生を楽しみな……って気分になりました。

調査の過程で知り合ったミラン中佐に連絡をとって、貴重な情報を送ってた場面。その報告をきいた他の面々のリアクションも含めて笑えましたね。

 

そうしてケリー達が海賊のことや、トゥルークに関わるきっかけになった薬物に関して調査を進める傍ら。

トゥルークの僧侶たちの間でも騒動が起きていて。ルゥの「感想」を聞いたアドレイヤが、彼らにとっての神を見た事。その神様が還俗した彼の両親に言及したことを、評価しようと提言したものの……それを認められない勢力によって地位を追われそうになって。

ライジャからの依頼を受けて、リィ達もトゥルークを訪れることになってましたが……まさか、ここにきて麻袋が活躍する場面が再び訪れようとは。デルフィニア戦記、読み返したくなりましたね。

トゥルークの海賊1

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「トゥルークに降りる? あなたが?」

「ああ」

「それは――ご愁傷様です」

 

ライジャの故郷である、トゥルーク。

連邦内部で起きている事件にまつわる品がそこから輸出されていること。トゥルーク近くの宇宙では海賊被害が続発している事。護衛として派遣された筈の連邦軍で、度々不可解な異常が起きた事など。

 

様々な事情が重なり、Ⅰ世はケリーとジャスミンに協力を依頼して。ケリー達が事情を聞く場面から始まるんですが、その前にひと騒動あって落ち着いた後、みたいなんですよね。

その前になにがあったのか、というのは3巻の巻末に「大いなる闇が来た トゥルークの海賊序章」として収録されているので、気になる方でまとめて手元にあったら、そちらを先に読むのもいいかもしれません。私は気になってそっちから読みました。序章感想は3巻書くときに触れます。個人的には序章先読みの方が分かりやすくなった感じはします。

 

最終的に二人は、トゥルークに向かうことを決意。以前訪問経験のあるらしいダンから情報収集をしていましたが……いやはや、聞くと見るとでは大違いというか。

ライジャの存在があるので、トゥルークの僧侶が他とは決定的に違う性質があるってのは分かってるつもりでしたけど。予想以上におかしかったな……。

怪獣夫妻をして、地表に降りるのを避けたくなるというは凄すぎる。とはいえ、かつて連邦はトゥルーク相手に交渉や諜報で敗北しまくった過去もあるらしいですし。トゥルークの特殊さと、最後に海賊が名乗った名を思えば、ケリー達を派遣したⅠ世の判断は正しかったというほかない。

天使たちの課外活動6 テオの秘密のレストラン

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「きみは、自分は料理しかできないという。それでいいんだよ。いつものように料理をしてくれれば、それでいいんだ」

「……どのみち、他にできることは何もねえよ」

 

テオドール・ダナー関連のエピソードが増える度に、故アンヌ女史の株が上がっていく……。テオドールの事を本当に好きだったんだなぁ、という想いも伝わってきますけど。

自分が死んでしまった場合でも、問題なく状況が進むように段取りを整えていたのはお見事でした。近しい人達ほどなにも知らず、死人からメールが来て驚く羽目になっていたのは……彼女なりのジョークだったのだろうか。

 

店舗を建て替えなくていけない時期になっていること。隣のビルのテナント契約が切れるため、念願の「テオドール・ダナー美術館」の建設を始めようと思っていること。

そして店を締めざるをえないのだから、他の場所で腕を振るえるように環境を整えておくこと。根回しが完璧すぎて笑うしかありませんな。

 

美術館建設のために、一時的に倉庫の物資を移送する専門の業者と鑑定家たちがやってきてましたが。パラデューと和解していて本当に良かったな……って思いましたね。

彼が居たから説得力も生まれたでしょうし、口下手すぎるテオと読解力に難がある彼の家族だけじゃ捌き切れなかったでしょ……。

 

各ジャンルの鑑定家たちが倉庫に保管された、数多の美術品を見て驚愕している様子も面白かったですねぇ。それだけのものを、テオドールのためだけに揃えたアンヌの手腕も恐ろしい。

二年前に亡くなっていなければ。リストのナンバリングは1万点に迫ってたんじゃなかろうか。

 

テオドール夫婦の事を知っている御仁が、新しくシティでホテルを開業する。従業員の特訓のためにもうけた3か月の期間だけ厨房に立つことになったテオドールでしたが……。

息子夫婦も連れだって向かったものの、口下手すぎる彼は厨房でひと悶着をおこして。

意思疎通がまだ叶う人材としてルゥに助力を願ったのは、身も蓋もないと思ったけど正しい。中学生に声をかけるのは流石に……と常識を持っているのも素晴らしいですよねヨハン夫婦。

 

引き抜かれてきた若手の中でも腕利きとされる二人は、プライドを傷つけられて各々の師匠に泣きついて……その師匠たちがテオドールを尊敬していた為逆に叱られる珍事も発生してたのは笑う。

テオドールが理想の環境を作るために高額な美術品を(パラデューの出資を経て)購入していったのも面白かったですよね。奇しくも、4巻で言っていた「宮殿のような店を作れば、テオが良いという美術品も増えるのでは?」的発言が正しいと証明されたような。

 

その為に「暁の天使」まで引っ張り出して来たのは……笑うどころか肝が冷えましたけど。かつて盗難騒動が起きて、前の館長がそれに関わっていたという問題が解決した後に、「絵を貸して」って逆らえない指示が飛んでくるんだからもう……関係者の皆様の胃が無事であることを祈ります。


天使たちの課外活動5 笑顔の代償

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「性別を超越した親友なのよ」

 

「よろず困りごと解決」の課外活動を行っているリィ達。

そこにレティシアが「いじめを受けてるみたいだ」とかいう冗談みたいな話を持って来たり、ライジャが女性に触れられるように特訓しようかと思うとか言い始めたり。

連邦大学は今日もにぎやかですね……それで済ませていいのか、って話ですけど。リィ達の周囲に限って言うなら間違ってない。

 

その二つの話も関わっては来るんですけど、今回メインをはるのはヴァンツァーですよね。

彼の顔によって態度を変えない相手というのはとても貴重で。奇妙な縁で繋がれた「いつもの面々」を除いた場合、特に交流が厚いのはビアンカの家族で。

ブリジットも彼女の夫であるナイジェルも、ヴァンツァー相手に冗談を言って笑いあうユーモアがある御仁だからか、ヴァンツァーも気持ちよく付き合っていたようですが。

 

氷の貴公子だったヴァンツァーが、子供連れの妙齢の女性と仲良く行動していたことが、学内で噂になって。特にブリジットの周囲で騒動が起き始めたため、黙ってみている訳にもいかず、色々と調べることになって。

 

人殺しだった自分が親しくなったブリジットには生きて欲しいと願い、尽力するのに本人も戸惑っていましたが……いやはや、本当に人間らしくなりましたね……。

今までも人間ではあったけど、感情の起伏が激しくなった……だとニュアンスが違うけど、執着を覚えた? というほど重くはない。

「諦めが肝心」、「理屈と感情は別物」というルゥのコメントが身も蓋も無いけど真実だろうなぁ。

 

今回、地味に好きなのが教師のフレッチャーですね。ヴァンツァーをからかうこともあるけれど、自分の専門分野や好きな車に関しては妥協せず。危険を察知したら、自分よりも危険な可能性のあるヴァンツァーに即座に連絡を入れる。

そして事件後には表沙汰に出来ない真実については、適当に誤魔化してくれる。初見の時の印象よりも、かなり立派な教育者をしていて尊敬できる人でしたね……。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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