「そうよ、デニス。わたしを見て。わたしには昔はない。過去の栄光なんかわたしには何の意味もない。あるのは見えない明日だけ――そこに何があるかは行ってみなければわからない。そう考えたらどう? どんなことだってできると思わない?」
連邦大学の惑星で映画撮影を行うことにしたサイモン。
地味で小さな映画ではあるけれど、その中でも良い人材を揃えられた。ただ、監督が望む「謎めいた高校生」の演技を、役者が出来ず。
良い人材が居ないかと学校を観察していた所、ヴァンツァーに目を付けて。光る人材を見つけると「こんな役が似合いそう」とマシンガンの様に語る変人で……「頭脳明晰な犯罪者タイプ」とか初対面で語り掛けてきたら、そりゃ通報されても文句は言えないでしょう。
ひとまずは主演女優のアイリーンの嘆願などもあって、一度だけ見逃されることになっていましたが。
彼女はヴァンツァーが良く知る人物に似ていて、怪しい監督はともかく、好感の持てる相手からの声がけがあったために見学に行くことも了承していましたが……ジンジャー、なにしてるの。
そしてジンジャーに協力している怪獣夫妻とか、ヴァンツァーの縁でリィやシェラまで見学に顔を出したりしていました。
メインはこの映画撮影の現場で起きるトラブルなんですが……冒頭は、とある惑星で起きた事故で橋が落ち、そこから白骨死体が見つかったという話なんですよね。
そこからいきなり変な監督の話になるので、初見だとびっくりします。白骨死体になるほどの時間が過ぎた、過去の事件。
映画撮影現場では関係者に毒を盛られそうになったり、財力のあるグループが契約で上映権を取り上げようとして来たり、狙撃手が手配されたり、一介の監督を狙うにしては大掛かり過ぎる騒動が起きてるんですよね。
リィにシェラ、ヴァンツァーにレティシア。怪獣夫妻。そんな存在が関わっていたからこそ犠牲が出ないで済みましたけど、場合によっては被害甚大だったと思うとちょっと背が冷える。
216P以降の、種明かしする瞬間の関係者各位が衝撃を受けているシーンが好きです。
審査員たちが「命拾いした!」って思っているの、正直他人事だから笑えましたが、実際その立場だったら胃が痛かったろうなぁ……。共演者たちの反応もむべなるかな。