「この格好が客寄せになるっていう理屈は正しいと思ったからさ。本当にいやなら、おれはやらない」
ヴァンツァーが論文に不可を出されて相談にやってくる「一般市民のすすめ」。リィが寮長のハンスにロッドの腕を見込まれる「常識の問題」。
学園祭で喫茶店を開くことになり、リィとシェラが給仕を務めることになる「ヴァレンタイン卿の災難」。シェラがかつてつくった衣装に再挑戦する「趣味の時間」の4編が収録されています。「ヴァレンタイン卿の災難」だけ中編で他は短編。
単位を餌に夜の誘いをしてくる教授はバカ過ぎるけど、とりあえず要求を呑んだ後消そうとするヴァンツァーもまだこっちの常識に馴染んでない感じがして笑える。
……これまでも同様の手口で被害者が出てるので、笑えないですけど。ヴァンツァーに声かけた時点で破滅確定してるようなもんだからなぁ……。実際、見事に沈んでいったので痛快でした。
「常識の問題」は、本調子ではないリィがうっかりハンスをロッドで倒してしまって、腕を見込まれてチームに勧誘されていく話なんですが。一般市民を目指すリィはそれを断って。真剣勝負の片鱗を見せて、ハンスを鍛える方向に行くのは、リィ達ならではだなぁ。
「ヴァレンタイン卿の災難」に関しては、表紙にある衣装――ウェイトレス姿になって接客をするという喫茶店のはなしですが。シェラ渾身の作品を金銀天使が纏うだけあって映えますねぇ。
チャリティーも兼ねていて、諸々を最後オークションに出していましたが。マーガレットが全力で落札したのも頷ける。
「趣味の時間」はかつて王妃に作った衣装を、シェラが改めて作る話。自主制作衣装の発表、その代表の代理に選ばれたからですけど……既に決まっていた人物が、デザイン画提出前日に骨折してしまったというのは不運でした。
そこで短い期間でウェイトレス衣装を仕上げたシェラに話が来たようですけど。こちらの世界に来て、あの衣装の基となったデザインも見て、再挑戦したいというのはシェラらしいですねぇ。