気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

電撃の新文芸

BabelⅣ 言葉を乱せし旅の終わり

ico_grade6_5

「あの時お前は、俺と戦うために塔から跳んだな」

「はい」

「ならばその命をもう一度使え」

 

雫がキスクに言っている間に、「出来そうだから」で英語の勉強を続けて雫を追い抜いてしちゃうエリクのスペックの高さが凄い。追い抜かれたかも……って雫はショックを受けていました。

無事にファルサスに帰ってきた後は、キスクでやっていたような子供向け勉強グッズの作成をしたり、研究者っぽくなってるなぁという感じ。

 

言語に関する病気の研究はファルサスでも進められていて、雫はこれまでも示されていた通りこの事象を病気とは考えてないけれど、こちら側の魔法士には違う人も居るというのをリラとの会話で示してくるんですよねぇ。

すれ違いがあったけれど、リラが研究に熱を入れているのは妊娠している親族がいるからと言う、一概に責められない事情もあって。

 

それを思うと雫と交流して色々と情報を得ていたとは言え、「いつかそれが当たり前になるかも」と考えられるエリクの考え方は、とても尊い。今回もある部分で引用されていた「混入された便利さよりも、あるべき不自由を望む」って言葉を初期に彼女に伝えてくれていたのも、とても大きいと思います。

 

エリクとの対話を重ねて来て、旅路の中で多くの人と知り合ってきた積み重ねは、雫の糧になっている。

それをシンプルに成長というのは簡単ですけど、カイトに指摘されたように変化・変質でもあるんですよね……。痛いところを突かれて、それで激昂するのではなく「痛みに鈍感で居たくない」と思える彼女の強さが好きです。

 

そんな「強さ」を持っているからこそ、新たに現れた七番目の魔女の居城に踏み込んじゃうんですけどね……。

まぁそれは、今回明らかになった彼女の抱えていた秘密と、ファルサス国王ラルスからの命令が上手く合致して、行かないって選択肢が無かったからでもありますが。冒頭で引用した、改めて彼女が覚悟を示すシーンが好きなんですよねぇ……。

 

エリクの心情とかが加筆されていて、かなり分かりやすくなっていた印象がありますね。彼、超然としている……とまでは言いませんが。苦労する事が分かっているから、止められないって判断を下せてしまう理性が、憎らしかった。

普通に考えるなら、あの考えは正解なんですよ。幸福を願うならば、見送った方がいい。それは間違いなくて、だからこそ最後の雫の判断がまた輝いて見えるんですよねぇ。

あとは、塔外部のエピソードも追加されてたと思います。オルトヴィーンが伝手で連絡を取ってる下りとかもそうですかね。

 

WEBからの書籍化である『Babel』には後日譚となるエピソードも結構掲載されているので、小説家になろうなどもご覧になって下さいな。レウティシアのその後を描いてる「飛ばない鳥」が好きなんですよ、私。

巻末の「手紙」も、姉・海の視点がメインになってますけど、WEBだと他の家族の反応も載ってたりして差がありますし。481Pであっさりと関係が変わったことが明かされた二人の経緯が描かれた「幸福の色」なんかもあります。

 

作者さんのサイト「no-seen flower」に行けば、SSも結構ありますね。「企画作品」内部の「幕間のおはなし」とか、逸脱者側の状況がちょっと描かれていますし。他にも「百題に挑戦」の中にもBabelのエピソードありますので。

Unnamed MemoryⅥ 名も無き物語に終焉を

ico_grade6_5

『お前の言うことも分かる。だが、昔と今は違う。自分一人で何でも背負うな。後で悔やむくらいなら俺を頼れ』

(略)

『そうしたら、俺が一生一緒に背負ってやる』  

 

Act.2の幕引きとなる、完結巻ですよ!!

最悪3巻まで出たところで終わる愉悦ルートすら示唆されていただけに、ここに来られただけでも感慨深い。

そして、今回は今まで以上に加筆されていて、WEB既読組でも楽しめる事請け負いです。書籍版初出のネタが登場するので、「加筆多いっていう6巻だけ読もうかな?」はあまりオススメしませんが。

 

初っ端から女王として君臨していた当時のティナーシャの様子が描かれていました。

なにこれ知らない……。王候補のラナクが乱心したこともあって、女王には支持者の他に反発する勢力も居て。それを、女王として切り捨てて。

ファルサス王家から遊学に来た王族と、ちょっとした交流をしていましたが。この当時は、建国当時の逸話が口伝で残っていたんですね……。ディアドラ……。

 

即位してから面倒事にばかり巻き込まれるために、在位期間を削ろうか、という提案がレジスから出て。

ティナーシャが伏せていた情報を告げて、オスカーが交渉した部分もあるみたいですが。

婚礼衣装が出来たら退位する、と言う話になりました。幸せそうなティナーシャが良いですよね。

その報告をしに行ったら、「聞いたら死ぬ歌」を聞きに娼館に行く計画をオスカーがたててるんだからもう……。

扉が一瞬で潰されたり窓にひびが入ったり。ラザル達が逃げ出したそうにしてるのも分かるわー。

 

この歌のエピソードが、Act.1とはまた違った方向に話が進んでいくのが楽しいんですよね。

噂を流した娼館の男、シモンの過去。呪歌によって故郷が滅ぼされた、と言う話から大陸規模でひっそりと進行していた事件が明らかになって。

犯人を捕まえた後、オスカーとレジスが酷薄な会話をしてる場面も好きです。敵には容赦しない王族の覚悟が見れる気がする。

 

加筆部分で、調査の過程で水の魔女が登場するのも嬉しい。

元々古宮先生が、設定上はいるけど本編に登場しない「全員揃わない」ネタが好みだったとかで、本編には関与しない筈だったんですよね、水の魔女。ただ、都度「本編に登場しませんよー」と言うのも何なので、加筆で登場する事になったとか。

実際、私も他の短編とかですれ違ったりするのも好みだったんですが。こうやって絡んできてもそれはそれで美味しい。精霊たちの中に、彼女を知っているって情報も知れてよかった。

 

鏡に関する騒動では、ティナーシャの女王としての顔がより鮮明に描かれて。

オスカーが珍しく足踏みしてる感じはありましたけど。動きだしたら止まりませんよね、彼。

暗黒時代を知るティナーシャの隣に立とうとする気概を感じるというか。

彼女に言わせれば「存るがままにしか言わな」くて、絶望を超えるために支えてくれるという理解が、とても尊い。

 

5章がまるまる書き下ろし章なんですが……ヴァルトが、オスカーに使えていた時代とか、最高ですよね……。

ヴァルトのオスカーへの態度と言うか、感情が明瞭になったのはいいですね。たった一度仕えただけだけど、他の人間の様に上手く操れない、と言う彼が好き。時読の一族であるが故、相容れない相手ではあったけれど、憎んでるわけではないこのさじ加減がもう最高ですね。

 

帯で明らかになっていますが、長月達平先生による「完結に寄せて」と言う寄稿文が収録されていて、愛を感じてよい。

そして、その後に章外としてのオマケがあって、先の話を垣間見れるのはとても楽しかったです。

 


(※以下に巻末で明かされた情報についての叫びを収録します。未読の片はご注意下さい)


続きを読む

リビルドワールドⅣ 現世界と旧世界の闘争

ico_grade6_4

「もう一つ確認する。お前は俺達の敵か? 答えろ」

 

賞金首騒動も落着した後、アキラは車と装備の更新も終えてリオンズテイル社の端末を探して荒野を放浪していた。

しかしまぁ、いつもヨノズカ駅遺跡みたいな当たりが出るわけでもなく。徒労が続き、アキラのモチベが去ってきていたのでアルファは既存の遺跡の、未踏破地区への挑戦を提案して。

 

そうして新たに彼が訪れたのが、ミハゾノ街遺跡。

ハンターオフィスの出張所や、駐車場が整備される程度には実入りが良い遺跡で。

まだ稼働している工場まである、機械系モンスターが多い遺跡にアキラは挑みます。

WEB版だと「セランタルビルを攻略せよ!」って言う感じの展開でしたけど。書籍版だと結構展開が変わっていて「ミハゾノ街遺跡に生じた異変!?」みたいな(わかりにくい)。

 

今のアキラの実力では、セランタルビルに挑んでも死ぬだけだ、とアルファに止められて。

代わりに工場区画の調査をしにいったところで、地図屋のキャロルと出会ったりします。

顔見世だけを済ませた後、異変に巻き込まれて逃げ延びて。

アキラ達が遭遇した問題以外にも、遺跡全体で異変が起きていて……エレた達に連絡を貰ってからの救援依頼とか、WEBの要素は拾いつつ無理が無くなっているというか。より洗練されていて読みやすく感じましたね。

 

ミハゾノ街遺跡でのトラブルにおいて、アキラはまたアルファが居ない状況下での戦闘を強いられます。

そして、序盤は押されるものの。彼によって譲れない一線を侵した、改めて示された時の覚悟を決めた姿は中々格好良かったと思います。

 

アキラとの交流を得て、成長しようとしているレイナとトガミの不器用な若手たちが好きなんですよねぇ。

反カツヤ派の期待の星と担ぎ上げられかけたトガミが、賞金首戦を経て自制できるようになってるのが、凄い好きなんですよ。

「自分を自分で誇れるだけの実力を再び得ることだ」と言う彼の目標(これすらも、完全な正解ではないと終盤に思い至ってましたが)が、ハンターとしての矜持を感じてよい。

 

レイナはレイナで、自信の非力を実感して。「123話種明かし」でシオリがアキラに投げた、「使えるはずの装備を、使わない人間をどう説得するか」への返答も、アキラの判断基準が明瞭で、その割り切りが頼もしい。

 

全体的に、世界観を大事にしつつ増えたキャラも上手く動かしていた印象。

しかしまぁ、相変わらずアルファがアキラの行動を操ろうとしている、怪しさがあってこれからどう転がっていくのかが楽しみでもあり怖くもある。

異修羅Ⅳ 光陰英雄刑

ico_grade6_5

「そうだよ、何もしなかった。それが俺達の罪なんだ」

 

六合上覧、第三~第五試合が行われる運びとなって。

一番真っ当にぶつかっていたのは、柳の剣のソウジロウと移り気なオゾネズマですかねぇ。

まぁ、オゾネズマの切り札を真っ当と呼んでいいのかどうかは判断に迷う所ではありますが。

残滓ですらソウジロウに異常を来す辺り、恐ろしいにも程がある。

 

そして、今回は黄都が作り上げた英雄ロスクレイの戦いがあるとあって、彼の陣営の話も多かったわけですが。

二十九官の謀略の手はどこまでも伸びてるんだな、と空恐ろしくなった。

そして、彼の戦いぶりとそれに対する民衆の反応も。負ける事を許されない英雄程、悲しいものはないでしょう。

 

それと対峙したのが、まだ二つ目の名を確立していなかった少女だというんだから、あのマッチングは残酷だった。

キアを擁立したエレアの事情も描かれましたが。……その背負った闇も苦しかったし。彼女につきづけた嘘を隠して、彼女の前では優しい先生であった彼女の挿絵と終わりもまた悲しいものでありました。

 

この世界は悲しい話ばかりだ。本物の魔王の爪痕は深く、闇に囚われた人々の救いは遠い。

それでも生きている人々の在り方は尊いと思うけれど……六合上覧は、様々な思惑が混ざり合った蠱毒みたいで、息苦しさも感じる。

だから澱んだ想いをぶつける先が必要で、“教団”がスケープゴートにされたのも、納得できずとも理解は出来る。

その果てに嘘だらけの、罪を背負うことになる英雄が生まれるって言うのは皮肉と言うべきかどうか。

 

読み終えると、「光陰英雄刑」というタイトルが。表紙にロスクレイとクゼ、そしてキアとエレアが明暗分かれた背景に描かれているのが。とても秀逸に感じられますね。

それでもキアとエレアは立つ位置こそ違えど手をつないでいるのに、ロスクレイとクゼは視線すら交わらないというのもまた良い。

修羅たちの中では、やっぱりクゼが一番好きですね。ああいう、真意を隠しながらも行動できるキャラ大好きです。

BabelⅢ 鳥籠より出ずる妖姫

ico_grade6_5

「そうなんですけど。でも逃げても取り返しがつかない、失くしてしまって、きっと一生それを後悔するだろうって……そういう時があるんです」

(略)

だから退かない。

 

かつて文庫版が出ていた時、2巻で終わってしまったため描かれることが無かったキスク王女オルティア。麗しいわぁ……。

満を持しての登場に、目頭が熱くなりました。苦節4年? 5年? まぁそれくらい。
思い入れの大きさを加味して星5です。いやまぁ、普通に好きなエピソードではあるんですが。

 

でも、3巻サブタイトルが妖姫だったり、これまでの旅の中で悪い噂を聞いていた通り。

オルティアは、かなり気ままで理不尽な王族で。

ラルスも雫を初手で殺しにかかって来たり、その後も疑い続けたりしていましたけど。

それは、ファルサスに伝わる口伝を知るが故の態度だったわけで。……いやまぁ、性格がぶっ飛んでるのも否定しませんけど。

オルティアの抱えている闇は、ラルスの敵意が剣だとしたら毒のような感じで、じわじわと彼女自身をも蝕んでいた。

 

遊興を欲する彼女の前に立った雫は、エリクとの会話で気づいた「言語障害」に対策が打てる人員として自分をアピール。

1人の少女と一緒に生活しつつ、教育をしていくことに。異世界の知識を基にした教育を与えても良いものか、と迷いながらも出来る事をやり続けた彼女の戦いに敬意を。

 

結果を出したことで姫に気に入られて、側近のような扱いを受ける事になって。

オルティアの過ぎた行いに対して、雫が意見具申をガンガンしていくので、保護者の居ない状況で無理しないで……と凄いハラハラします。

ファルサスで塔から飛び降りた時もそうですけれど、「これ以上は退けない」というラインの見極めがシビアに過ぎるというか。

「退けない」ってことは「退かない」ってことだと、激痛に見舞われながらも意地を通す彼女の強さが光るエピソードでもありました。

 

正直に言うと、初見時のオルティアの印象は割と良くないんですよね。

横暴な王族って感じのものをお出しされるので。けれど、雫が立ち向かったからと言うのを加味しても、言葉を聞き入れる度量はあって。

彼女がそんな性格になった、過去の事件の事なんかも踏まえると、どんどん好きになっていく。雫が、彼女の背を押したくなるのも分かるなぁ。

 

新文芸は文庫2冊分の分量! と古宮先生がよくおっしゃってますが。

実際、ボリュームが凄いんですよね。雫とリオの試験対策に始まり、キスク内部の描写と十二家審議までやるので。

469Pの雫とオルティアのイラストが、偶然から始まった二人の培った、確かな絆を感じさせてとても尊くて好き。

その色の帽子を取れ—Hackers’ Ulster Cycle-

ico_grade6_4

「あなたのほうが苦しい思いをしているわ」

「俺は失敗したことの後始末をやろうとしただけだ。それももう終わりだ」

 

同レーベルで書かれてる、古宮九時先生が個人的にプレゼントキャンペーンをやっており、頂きました。

……訳が分からないと思いますが、私も良くわかっていません。ともあれ、頂いた以上は早めに読まないとなぁと手を出して、少し時間がかかりましたが読了。

こんな機会でもないと読まないかもしれないジャンルでしたが、かなり面白かったです。

 

学生時代に出会った友人、サクと一緒にIT分野を学んでいったショウ。

サクが天才的な技能で作り上げたツールを、ショウが営業していくというスタイルで、二人は、順調に成長していたはずだった。

しかしある日サクは失踪し、シュウは失意の中で怠惰な生活を送ることに。

 

定職には付かずサクを探し続ける日々。

そんな中で、以前の職場にいた友人から仕事を割り振られて。

そこから、大規模なサイバー事件に巻き込まれていくことになるものの……追求していくと、その裏側にはサクの影があって。

 

実際に起きたIT事件や、現行技術の話が盛り込まれた、サイバー犯罪の話。IT分野の知識が多いとより楽しめたのかもしれませんが、詳しくなくても十分満喫できます。

技術の発展という輝きが大きいほど、影が大きくなる、とでも言いましょうか。

誰かが悪意を持ってツールを扱った時に与える影響も、甚大なものになるのだ、という混乱模様を突き付けられると少し思う所がありますね……。

そこそこ前に、Twitterが落ちた時とかも「Twitter落ちた? って呟くTwitterが欲しい」とか言ってましたし。不便さを感じる事があっても、一度掴み取った利便性を捨てるのって、中々できませんよねぇ。

 

シュウの葛藤っぷりは中々のモノで、うじうじしてるな……とは最初ちょっと思いましたけど。

それだけサク相手に真摯だったからこその最後なんですよね。読み返すと印象変わりそう。

ネームドのキャラは誰も個性立ってて好きですが、それだけに命を落とした人もいるのが辛い。

あ、ホテルのモブ君も結構愉快で気に入ってます。「有酸素運動に最適なジムを完備しております」じゃないよ! 

リビルドワールドⅢ下 賞金首討伐の誘い

ico_grade6_4
「分かったよ! 覚悟を決めるのは俺の担当だからなぁ!」

 

ヨノズカ駅遺跡の騒動から、なんとか生還したアキラ。

本格的な探索はせず、遺物売買などの事後処理をすることになっていましたが。

売り先のカツラギがヨノズカ駅遺跡に挑むハンター相手に、荒野価格で色々売りに行ってたもんだから、遺物を持って往復する羽目になってましたが。

その結果、遺跡から出てきた変異種との遭遇に、アキラを護衛として雇えたのだからカツラギとしては不幸中の幸い……なのかな? なし崩しでタダで護衛させようとしたカツラギの思惑を、アキラがちゃんと潰してるのも成長が感じられて良い。

 

遺跡から出てきた変異種が、かなり強大になっていてハンターオフィスから「賞金首」として通達が来て。

自分の運の悪さを自覚しているアキラが、荒野へ積極的に出かけなくなったのは、正直笑った。実際これまでの彼の実績を想えば、うっかりで出くわしてもおかしくないからな……。

高額の賞金目当てで挑んだハンターもいたようですが、返り討ちにあってどんどん賞金額が上がっていって。

 

ドランカムを筆頭にハンター徒党も討伐に向けて動きはじめて……アキラも、以前の縁からシカラベに誘われて賞金首の一体に挑む事に。

ハンターだかといって、ただ危険な敵を倒したり、貴重な遺物を集めるだけではなくて。徒党が大きくなるほどに、内部の問題って言うのも出てくるようで。

ハンターオフィスを通さない非正規の依頼、という形ではありましたけど。

 

しかしまぁ、話を聞くにドランカムも大変だな、と言うか。

これまで何度もアキラと出くわしているカツヤ一党も中々ではありましたが、新登場のトガミやリリーみたいなのを見ると、シカラベ達古参の応援をしたくなってくるな……

増長しているのが良くわかる。ヤラタサソリの時に噛みついてきたレイナみたいなのばっかりか。

 

ドランカムの若手勢力も、外部の応援を雇いながら賞金首の一角に挑むことになっていて。

カツヤに指揮を学ばせるために、別の討伐を見学させたり色々と手は打っていたようですし、カツヤ自身も慎重に判断してたと思いますが、暴走する子が出るんだからもう……

外部の応援から文句が出てましたが、アレは仕方ないと思ってしまった。

まぁ、ドランカム若手勢力の一番の問題は、カツヤに対するもう一人のアルファの侵食が大きいというか。

影響がどんどん広がって行ってる所ですよねぇ。アレを見てると本当に、遺跡の亡霊が怖くなってくる。

 

アキラが雇われた以上は、しっかり働くという考えてかなり奮戦していたのは楽しかったです。アルファのサポート付とは言え、あそこまで動けてランク21ってのは、周囲の反応見るに相当詐欺なんだろうな……

シカラベに誘われた一件の後も、別の徒党の賞金首討伐のサポートとしてバックアップに従事して。さらには後日、エレナ達に声をかけられたとはいえカツヤの指揮する作戦にも参加する事になって。

 

結果として、4体現れた賞金首の内3体の討伐に参加してるんですよね、アキラ。キバヤシが目にかけるのも良くわかる。まぁ、サポートに徹したマイマイは直接賞金首とぶつかってはいませんけど。

終盤の101話~102話でもトラブルに見舞われていましたし、本当にキバヤシを飽きさせないな……

 

巻末の閑話「運の問題」は、また装備を更新する事になったアキラが、普段より軽装でシェリルの徒党に顔を出しに行ったら襲われる話。

軽装とはいえ、しっかり武装していたので返り討ちにしていましたが。色々とスラムでも蠢いているというか、暗躍してる人が多いな、という感じ。次回に向けた伏線エピソードなんですよね。

巻末の次回予告でも「WEB連載版より全面改稿」となってる4巻が今から楽しみです。

 

 

BabelⅡ 魔法大国からの断罪

ico_grade6_4h

「まるで人間のようなことを言う」

「人間ですから」

「ならば証明してみろ」

 

ついに出ました、『BabelⅡ』!

帯に在る通り終盤に「衝撃の展開が待ち受ける」巻となってまして、読んだ方ならかつて電撃文庫から出た時はここで切られてしまったんですよ……という既読者の嘆きが分かってもらえることと思います。

 

未読の方向けに書くのならば、タイトルが「バベルの塔」を思わせるものであるように、この作品のテーマには「言葉」があって、そこに切り込んでいくことになるんですよね。

ここから更に面白くなっていく作品で、完結済みの書籍化ということもあり、全四巻と予定も立ってるのでどうか読んで欲しい。

 

文庫版には収録されなかった「無言の花嫁」。

過去に囚われて、どうしようもない結末に辿り着いてしまった男女の話なんですが……

あの二人の行動をどうしてか咎めることは出来ない、そんな気分になる。

罪を犯しているので、罰せられるべきとは思うんですが。そもそも二人とも、自らを許さなかったからあんな結果になるんだからなぁ……という感じ。

 

それはそれとして雫のウェディングドレスのカラーイラストはとっても素敵だと思いました。綺麗だ……。え、この子の個性を埋没させる姉と妹って何者……(姉と妹だよ)。

イラストで言うと、カラー口絵に登場しつつ、ほぼ同じ場面のモノクロ挿絵もついてたリースヒェンが推しです。かわいい。

 

転移失敗した後もトラブルに見舞われつつ、なんとかファルサスに辿り着いた2人。

エリクの伝手も頼って、王様との面会を取り付けたものの……

魔法大国ファルサスの王・ラルスは、異世界から来た雫を異質な存在として切り捨てようとして。

一度はその場から離脱したものの、即座に取って返して、啖呵を切りに行く雫の覚悟の決まり方が凄い。

 

雫もエリクも、戦闘能力は低いんですよね。でも、それは戦いを選ばない理由にはならない。それが必要であるならば、出来る事を躊躇わない。

かなり覚悟は決まっている、といいますか。頑固さは作中でもぴか一だと思いますね……

27年ニンジンを嫌って食事を疑い続けているラルスも、中々ですが。

「あるのは言葉と――自分自身だけだ」と割り切って、手札として扱えるのが普通の大学生としては稀有な資質だと思います。……出来れば発揮されない方が良い資質ですがね……

 

辛くも命を拾って、ファルサスで情報収集を行っていくことになり。

今まで聞いたことのなかったエリクの事情だとか、探していた240年前の事件の事とかについて知ることに。

得た情報が信じられずに、1時間ほども議論している辺り、文官よりなんですよね雫もエリクも。

 

そんな二人が、ガンドナの時と言い危機の最前線に踏み込んでいくことになるんだから皮肉と言うか。

「前例が無い少女」の手がかりを追うんだから、否が応にもトラブルに巻き込まれやすいってのはあるでしょうけど。

コチラが気を付けていても、異質な少女に目を着けて向こうからやってくるからな……さて、WEBで結末を知っていても続きが気になる終わりでした。3巻で出てくる新キャラの挿絵が今から楽しみです。流石にあるだろ……


異修羅Ⅲ 絶息無声禍

ico_grade6_4

「くだらなくなんてない」

「……そうかよ」

「…………ハルゲントとの勝負なんだ……」

 

ついに、六合上覧が開始する第三巻。

関東に用語解説とか、黄都二十九官の名前一覧とか乗っていて楽しかった。

こういう設定部分が見れるのは個人的に好きなんですよね。

まぁ、私の嗜好を抜きにしても、修羅を擁立している面々の情報が整理されてるのは良いことだと思います。いくつか空席あるんですねー。

                                                                                                      

サイアノプみたいに、離れた地域で産声を上げた修羅なんかも居ますけど。

黄都からも警戒されている、最大の傭兵ギルドが作った国家、オカフ自由都市。

本物の魔王。そして魔王軍が居た場所に続く、最後の地。

前半は、この二か所の描写が多かったですねぇ。特に最後の地周りでは、過去編として本物の魔王に挑んだ「最初の一行」の描写もあり、本物の魔王の名前なんかも明らかになっていて情報量が多い。

 

名を広く知られた修羅達であろうとも震える、本物の魔王の在り方はただただ恐ろしかった。己の在り方を貫く、修羅達の様子を3巻まで読んでいたからこそ、怖さが増すんですよね……。

魔王の正体が明らかになっても。本当に、だれがこんな魔王を倒せたんだ、という謎が出てくる。物語の構成が巧みで、読んでいて引き込まれる。

 

今回当登場した修羅だと、黒き音色のカヅキが好きですねー。

「英雄として、世界への責任を果たさないとね」という客人の少女。

オカフ自由都市に対抗するため、黄都が派遣した銃使い。実際に腕利きを何人も仕留めてて、活躍っぷりが見事。彼女の名を冠した章の、終盤で出てくる修羅紹介文の演出含めて好き。

 

これまで裏で動いていた灰色髪の少年なんかも出て来てましたが。

自らは戦闘力がないものの、誰もが無視できない状況を整えるのが上手い、彼なりの戦い方があるのは結構好みですねー。修羅にも多様性の時代……

 

アルスを擁立したヒドウのポリシーも分かるし、名誉に執着するハルゲントのこだわりも嫌いじゃないんだよなぁ。

冬のルクノカという伝説を引っ張り出してきて、アルスと戦う舞台を整えて。それでも、彼は。ただアルスの輝きを信じ続けていた。


アルスはアルスで、冬のルクノカを通じてハルゲントの存在を見ていますし、なんなんだこの二人は……いや、好きですけどね、こういう関係。

ハルゲントは全くもって不器用で、時代遅れの官僚とされているのも無理はない感じですが。最後のあの慟哭は、中々刺さる。嫌いな人はヒドウみたいにとことん嫌いそうですが。
これだけ迫力ある戦いやって、まだ第二試合までしか終わってないとかどうなってるんでしょうね……

EDGEシリーズ 神々のいない星で 僕と先輩のウハウハザブーン 下

ico_grade6_4

「――またいつか、共に同じ夢を見よう。今度は、現実に出来る夢を」


キャンプ場に到着して合宿編スタート。

明かせる範囲で事情を明かして線引きをしたり、トレーニングに勤しんだり。

純粋に楽しんでる感じがしてよいですねー。

90年代が舞台でありつつ、バランサーによって構成された環境と言うのがやっぱりシチュエーションとして強い。

 

当時は~ですが、○○年に新発見がありますとか普通に面白いですし。

神話関係なんかもあまり詳しくはないので、解説回が純粋に楽しい。情報量が多いので、飲み込むのに時間かかりますが。

知識神が二人いて、それぞれスタンスが異なって違った味わいになってるのも凄い。

 

思兼先輩が、神委から来たデメテルとアテナに対して、嘘を吐かずに騙して右往左往させているのは笑えました。

いやまぁ、知らない地域の電車とか迷いかねないのは分かる。下調べ大事。調べてなお迷う人はいますけどね。えぇ、そういう友人が学生時代にいまして……

 

閑話休題。

木戸先輩を交えてのテラフォーミング。水を創る方法論で、住良木が提案した方法が見事に穴をついているというか、ドッキリみたいな方法で笑った。

雷同達のイメージトレーニングにも付いていけてましたし、知識神の解説に対しても良い反応示す事があるので、住良木、わりと頭良いというか。発想力がある。

まぁ、その発想力を活かして、巨乳信仰をソッコで始めるので、えぇ。バランサーの猿呼ばわりも順当かな……みたいに思えてくるんですが。テンションの上下が激しい。

 

木戸先輩の真名と、住良木に対しての微妙な距離感についても事情が明らかになっていましたが。

距離を取ろうとする彼女の気持ちも分かるけど、それを良しとしなかった人類の行動はナイスでした。

他シリーズでもあった、連続した挿絵も良い感じでしたし。持っていた武装も痺れた。

テュポーンの持つ雷とか、えぇ。AHEADシリーズで見た事ある気がしますね……

そういう繋がりが見られるとやっぱり嬉しくなります。ウハウハですね。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
 コメント歓迎。ただし悪質と判断したものは削除する場合があります。

メールアドレス
kimama.tyaka@ジーメール なにかご依頼等、特別連絡したい事柄はこちらにお願いします。
メッセージ
アーカイブ
カテゴリー
記事検索
最新コメント
  • ライブドアブログ