「こうなることがわかっていたのに、あえて勝負に乗った理由……見せてもらうよ、ラス」
人類が魔獣と戦うために生み出した、狩竜機という名のロボット。
それを駆り、上位竜を討伐するという実績を上げた優秀な騎士ラス・ターリオン・ヴェレディカ。
しかしその戦場では、彼の婚約者でもあった皇女フィア―ルカが亡くなるという悲劇が起きていた。
竜を討伐したけれど、婚約者を失ったラスは失意のまま王都を去り……その後娼館通いを続けたことで「極東の種馬」なんて蔑称で呼ばれることになるわけですが。
その実、彼の通っていた娼館の主は黒の剣聖と称えられる女傑で、その教えを受けていたとか。あちこちで女に関わっていく女好き、という噂の中には困窮した女性を救った逸話もあるとか。
娼館に通っているいじょうそういうコトと無縁ではなかったでしょうが、完全に腐ってしまったわけでもなかった。
ただ、過去の出来事にとらわれて前に進めずにいただけなんですよね。
そんな彼の下に、フィア―ルカの兄でありラスの友人でもある皇太子アリオールの使いとして騎士がやってきて。
彼を力づくで連れて行こうとしますが、近衛連隊長相手に優位を取っていたのはお見事。同行していた人物の予期せぬ仕込みによって不覚をとってましたけど。
そうして連行された先でラスは、2年前に起きていたことの真相を知らされるわけです。
実は2年前亡くなったのは、皇女ではなく皇太子だった。アリオールは、別の戦場での負傷が重く、妹を生かす道を選び……フィア―ルカは、姿の似ていた彼になり替わることで国を守ろうとした。
実際、色々と状況がよろしくなくて、そうしていなかったらより面倒な状況になっていたのは間違いないでしょう。
ただアリオールとして生きている以上、女性との縁談が持ち込まれるわけですよね。そこで秘密がバレてしまうとよろしくない。だから、相手の篭絡をラスに頼みたい、というとんでもない話に巻き込まれるわけですが。
婚約話が持ち上がっているティシナ王女、国内では悪名が広がっているけれど、それを気にせず何かを目的として動いている御仁のようで。
政略結婚の駒で終わるようなタイプではなく、むしろ自分から状況を動かしていく指し手側の人間みたいなのが、どう転ぶだろうか。
今回は世界観説明と、突如として騎士に復帰したラスを気に入らない若手に実力を示すところ、そしてティシナ王女の存在というプロローグを丁寧に見せられた感じなので、ぜひとも続きを見たいものですね。
あと、なんだかんだ相思相愛で彼の事を今も想っていて、国のために王女の篭絡を頼んだのに、嫉妬してるフィア―ルカが可愛かったので、彼女は彼女で幸せになって欲しいものですけど。ラスには是非とも奮闘してもらいたい。