「さあ、次の思い出を作りに行こうぜ。未来の人間共が、羨ましく感じるくらい、すげー何かを!」
魔王を討伐した勇者は、しかし相打ちだった。
仲間もほとんどその戦いで倒れ、魔法師エルメだけが唯一生き延びて国元に魔王討伐の成功を知らせた。
大きな犠牲が出たのは悲しいが、人類は未来に向かって進んで行ける……そのハズだった。
しかし魔王と勇者の力はあまりに強大で……限界を超えた魔力の余波が毒となって世界中に広まってしまった。それは後に【悪性魔力】と名付けられたわけですけど。
そんな名づけなんて多くの人々には意味がなく、解決方法はない。【悪性魔力】に侵された人類は滅びへの道を歩むことになってしまったわけです。
エルメは勇者一行に選ばれるくらい魔法に秀でていたため、【悪性魔力】への耐性が多少あったため国が滅びに向かってからも生きていたものの、彼女も【悪性魔力】に侵されており、死に向かうのは避けられなかった。
孤独になってしまった彼女が王都を出たところ、強大な魔力の波動によって目覚めたアンデッドの少年と出会うことに。
何も覚えていないけど、永くを生きて……そのせいか記憶を失ってしまったというアンデッドの少年。
色々と抱え込んでしまいがちなエルメを見たアンデッドの少年が、「エルメが満足に終われる結末」を探しに行こうと旅に誘って。
2人の、終わりが約束されている旅が始まるわけです。楽して、寂しくて、幸せで……時間の流れの残酷さを突きつけられる旅。
それでも、エルメもアンデッドの少年もこの旅を後悔することはなく、大切に胸に刻んでいるんだよな……というのが沁みる話でしたね。