「でも僕は名詠式があって良かったって心から思ってるんです」
(略)
「だって」
(略)
「クルーエルさん、一緒に詠ってくれたじゃないですか」
クルーエルは消え、ネイトは「助けに行く」という約束を果たすため、戦場に戻る。
ネイトだけでなく、エイダもレフィスも、一度敗れた雪辱を晴らそうと各々準備していて。
名詠式が使えなくなる、という異常事態が発生している中で、クラスメイト達も自分に出来る形で祈っていて。
シャオたちの様子も描かれていますが。
あっちはあっちで仲いいですよね。別にネイトたち憎しで組した敵という訳ではないですし。
ただそれぞれに譲れないものがあって立ちはだかってるだけで。
エイダとアルヴィル。レフィスとテシェラ。
それぞれの戦いは、以前とは違う結末になって。若者が先達を超えていく姿は見ていて心地よい。
勝利した後、先に言った少年の後を追うエイダがネイトのところに行って「あとはちび君がやること」だから応援してる、というのも信頼があればこそ、ですな。
シャオとネイトの対峙も、結局引き分け……からのネイトが男を見せたという流れでしたし。
名詠式を失敗してばかりだった少年が、成長したなぁとしみじみ思いました。
彼が揺るがず、約束を果たすために進み続けていたからこそ、クルーエルとまた詠うことが出来たわけで。
良い最終巻だったと思います。
シリーズ感想
『黄昏色の詠使い イヴは夜明けに微笑んで』
『黄昏色の詠使いⅡ 奏でる少女の道行きは』
『黄昏色の詠使いⅢ アマデウスの詩、謳え敗者の王』
『黄昏色の詠使いⅣ 踊る世界、イヴの調律』
『黄昏色の詠使いⅤ 全ての歌を夢見る子供たち』
『黄昏色の詠使いⅥ そしてシャオの福音来たり』
『黄昏色の詠使いⅦ 新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ』
『黄昏色の詠使いⅧ 百億の星にリリスは祈り』
『黄昏色の詠使いⅨ ソフィア、詠と絆と涙を抱いて』