気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

黒杞よるの

フシノカミ 辺境から始める文明再生記8

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「ヘルメスさんの夢を叶えることは 私の夢を叶えることでもあります」

「これからは共に歩みましょう」

 

3438話と幕間を収録。

相変わらず原作を上手く拾ってアレンジしているのが良いですねぇ。

そもそもここでの人狼との戦いだって、原典や編纂版だとアッシュ個人で戦う羽目になっていたところに、ジョルジュ卿が駆けつけてアッシュを拾って撤退する流れでしたしね。

ただ都市内部で動き出したことで、より「逃げたらマズい」という緊迫感が増して、夢追い人であるアッシュが守るために戦う理由付けになっている。

 

上手く受け流しつつ隙を探してましたが、人狼は疲れを知らずだんだん押されていくアッシュ。本当に危険だ……という時に、アッシュが走馬灯を見るかのようにシーンが挿入されているわけです。

アッシュ自身は、全ては自分の夢の為の積み重ねだから、夢を叶えたいと強欲になると言ってますけど。多くの人の助けを借りたからこそ、叶えたいという想いがより強くなっているのだ、という描写でこれまで協力してくれた多くの人が描かれているの良いですねぇ。

見開きで一番右のコマでマイカが本を見るため背中を見せていたところ、一番左のコマでは笑顔をこちらに向けているの、構図の見せ方が上手くて流石だなぁ……と思いました。

死地でもただ「死んでたまるか」じゃなくて「叶えてやる」と、前のめりなの実に暴走特急アッシュ君らしいな……と思いました。

 

人狼に抗ってる場面は荒々しい筆致・コマ割りだったのに、病床で意識を取り戻してからハッキリしているのも良いですねぇ。

「おにくたべたい」と言ったアッシュ君と、それを聞いたマイカとアーサーの2人のなんとも言えない表情が味わい深くて好きです。

 

幕間「マイカの閃き」。マイカとアーサーのやり取りメインで、傷付いたアッシュを見て、治療の手伝いに踏み込んだとき、ハッキリと自分の想いを口にしてるマイカの覚悟が決まってる目が良いですね。

マイカ、活発な村娘という顔も間違いではないんですけど。なんだかんだ言いつつサキュラの領主家の血を継いでいるので、個人の感情で結婚を同行できる立場では実はなくて。

イツキはまだアッシュに毒されすぎてないので、平民であるアッシュは有能だけど、貴族家に迎え入れるのに吊りあうのかという視点なのに、マイカは「自分の方が彼と釣り合うか」という視点なのが、よくわかっていらっしゃる。

 

療養のためにアッシュがノスキュラ村に戻ったの、短いページでしたが描いてくれたのも良かったですねぇ。今の状況が見れたのは嬉しい。

そして無事に帰還したアッシュが、次なる計画を実行しようとしたところで、勉強会に参加しつつも上手く馴染めていなかったヘルメス君の「夢」について知り、それを深掘りしていくことになるわけです。

ベルゴ達も技能を持っている集団として協力してくれて、同じ方向を見て協力してるのが良いですねぇ。そして苦労はギュッとまとめて38話の間で製作開始から形になるまでを描いてるのお見事過ぎる。


フシノカミ~辺境から始める文明再生記~7

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「うん アッシュ君はこういうのに手間を掛けたくないんだなってよくわかった」

「あれの相手はあたしがするよ」

 

29話~第33話を収録したコミカライズ第7巻。

アーサー君についての事情を知って、良い笑顔でアッシュ君のところへ行くマイカちゃん可愛いですよね。「心配してくれてたの…!」と赤面しているのが特にカワイイ。

そして次にやる予定であった、領都周辺の地図の更新について。リインから「流石にちょっと待って」と言うようなことを言われたため、肥料の実験に移ることに。

 

そこに農村出身であるアッシュの事を良く思わない、モルド一派が文句を言ってくるわけですけど。隣にマイカが居て、その作業に忌避感を示していないのにぐちぐち文句を連ねることが、自分たちの首を絞めると気付けないのが、実に小物なんだよなぁ……。

「マイカ様のことではありませんよ」と、様づけしているのが滑稽に感じる。

まぁ、小物過ぎてアッシュ君に時間かける価値もない、と言葉をスルーされているわけですけど。そういうアッシュ君のフォローをするために、マイカは行動を開始。

 

モルド一派を排除した状態で、勉強会を開催することにして。

味方を増やすことで敵が手を出しづらくする狙いがあって。そうやって知己を増やすことで、参加者たちにも利点が多いというのが、巻末書下ろし漫画「天使の策略」で描かれていましたが。アッシュ君が農村出身ながら、夢への暴走特急として活動していろんな実績上げたりパイプ広げたりしているのを見て、視点が歪んでましたが。

農村出身の真の一般人、サイアス君とかも「軍子会で縁をつくれ」って言われてたけど、なかなか難しかった、とそれまでの状況を評価していましたし。マイカに負担をかけているんじゃないか、と協力を向こうから申し出てくれる関係を築けたのは大きい。

 

マイカにとって一番大事なアッシュ君も、そうやってマイカを通じて知己が増えることで、情報を収集できる場所が増えて行ったわけですからね。

今回問題になったのは、近ごろスラムの炊き出しが行われていないため、ひったくりとかの小さい騒動が増えている、との話。

商会の娘ケイだったり、農業計画協力者の囚人ベルゴ達だったりから話を聞いて。飢えの厳しさについて知っているアッシュは、どうにかできないかと奔走することにして。

 

業務が立て込んでいて領主主導で動けなかった状況を、見事打破してみせたのはお見事でした。

イツキ達も、未来への希望を抱けるようになって、表情が明るくなっているのが良い感じです。アッシュ君、石材の貴重さを知ったことでレンガ造りを画策。工業計画ロードマップの夢を語っていましたが、いやぁ、相変わらず人をその気にさせるのが上手いというか。当人が本当に望んでいるのがよくわかる熱量があって良い。

アッシュの記憶にもない、この世界の脅威「魔物」。人狼が迫っている、という話がジョルジュ卿からあって。原点とも編纂版とも違う、変わった見せ方をしてくれたのは興味深くて面白かったですねぇ。

 

巻末SS「ベルゴの直感」。炊き出しについてアッシュに相談する前のベルゴ視点。

スラム街のまとめ役たちと顔を繋ぐのと、アッシュと顔を繋ぐの、はたしてどっちがヤバいか迷う所っていうの、正直笑ってしまったな……。

フシノカミ~辺境から始める文明再生記~6

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「…そんなこと言われたら気になってきちゃうよ」

「そうでしょう? だからそんな好奇心だけで旅立つ人は絶対にいますよ」

「知らないことを知るのは楽しいですからね!」

 

アッシュがアーサーから見せてもらったのは、竜が大陸上部の山を蓋していたり、海を封鎖している実にファンタジーな地図だった。

王都はサキュラの南にあるのに、アーサーの地図上ではサキュラの西に描かれていたり、正確な地図というものを知る読者目線だと衝撃を受けてるアッシュの方に賛同してしまうんだよなぁ……。アレはあまりにもあんまりだ……。

 

縮尺も方角も位置も全部メチャクチャで、アッシュ君が憤慨。いつかやることのリストに、地図の作成を書き加えていましたが……。

アッシュの語り口の熱とか、夢の輝きにあてられたアーサーが自発的に地図作成を任せてほしいと名乗り出ることに。

未知についてアッシュが語っているシーンで、未踏の地のカットが載っているの読んでいるだけでもワクワクしちゃいますし、アッシュの目がキラキラしてるのが伝わってくるのでそれを間近でみたらそりゃ惹かれちゃいますよねぇ……。

 

そこから自分の本来の身分も駆使して、「兄」や「従者」の手助けを借りた上でまとめ上げて言ったの良いですよねぇ。

自分の執務で追い込まれていても弟を気遣えるイツキも、従者として成長を促そうとするリインも良い味だしてるんですよねぇ。

なんでこんな良いエピソードが絵伝版での新規なんですか。後に断章としてWEBに追加もされましたけど。絵伝版、こうやってたまに新規エピソードで刺してくるし、そうでなくても再構成にこだわりがあるので読んでて楽しいんですよねぇ。

 

アーサーの頑張りを否定せず、その上で後押しが出来るように測量機器の作成をしていたアッシュ君、「こんなこともあろうかと!」を農民の子がやるんじゃないよ。

常識人のレイナがふらっと立ち眩み起こしていたのも無理はない。まぁ読者的にはアッシュ君が常識はずれなのは今に始まったことじゃないから、まーたやってるよって受け入れられますけど。まだレイナちゃんはその領域にまで到達してないかぁ……。

 

そうやってアーサーがアッシュ君の影響を受けて成長していってるわけですが。

2人の距離が近づいている中で、マイカちゃんもとある事実に気が付いて。同室のレイナとの会話を経て、イツキのところに乗り込んでいく流れが好きです。

これ編纂版とかで描かれているんですけど、そっちだと帯刀していたらしいので絵伝版のマイカちゃんは行動力は変わらないながらも、ちょっと穏やかですね。

 

巻末書下ろしは『リインの姉代行業務』。リインがアーサーのフォローをするように、イツキから頼まれるシーンのSS。業務に忙しそうにしていて、そっちの手伝いに呼ばれたのかと思いきや、領主ではなく兄としての願いを伝えられて。それを聞いてくれるリインの優しさが良い。

描き下ろし漫画は『悪魔の罠』。軍子会に参加している商会の娘、ケイが大物二人に近づきたいと願う中で、気になって暴走しかけた彼女を止めたアッシュ君。さっすがぁ。



フシノカミ~辺境から始める文明再生記~5

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「私には夢があるのです 本の中にしかないような 便利で豊かな生活を送るという夢が」


1921話、幕間、2223話と書下ろし小説と漫画が収録。

アッシュと同室になることになった人物「アーサー」。アッシュ君も即座に気付いていましたし、19話最初のページでも明示されてますが、実は女の子で。

王都出身の彼女は、立場があるために利用しようと近づいてくる人や、助けてくれない家族に挟まれて籠の鳥状態であった。

「なんだかんだと理由をつけてろくに助けてくれない父」と書かれているの、原典・編纂版読者としては思う所ありまくる表現でしたねぇ……。

 

問題が大きくなったため、性別も名前も偽りサキュラに逃げてきた形になるようです。

そんな境遇のために、何かと「我慢することは得意」で乗り切ってきてしまったの、見ていて痛々しくもある。

……でもまぁ、アッシュ君と同室になって「ゆくゆくは協力してくれれば大満足」と思われている時点で、運のツキというとアレですが。

後の幕間でマイカもレイナに「もっと大変になっちゃうね!」といい笑顔で言ってましたし、あながち間違ってないと思うんだよなぁ。

 

寮生活で男女別の階ではあるけれど、「一緒の建物で生活できる」とウキウキしてるマイカちゃんがカワイイし、マイカワイイポイントが多くて今回も楽しかったですね。

恋に生きてるポワポワな顔もあるけれど、母から「頑張らないとアッシュ君が夢中になってくれる日が来ないかも」という釘刺しがきいていて、これまで以上にフォローしたりしようとしてる、利発な顔もあるんですよねぇ。頑張れマイカちゃん。

 

ノスキュラ村から領都サキュラに場所が変わり、勉強の場所も神殿から軍子会に変わり、新キャラ・新情報の紹介が多いんですけど、見せ方を工夫してるからかテンポよく読めるのが良いですね。

これはまぁ私がWEBも小説版も読破してる民だから、というのはあると思いますが。

新キャラだと、アッシュ君の無茶ぶりに応えていた都市側の神官ヤエさんが、初対面でめまい覚えているシーンとか。レイナちゃん初登場シーンとかが特に好きです。

 

巻末書下ろし小説は『レイナの修行』。なんだかんだ良い家の出身なので、普段は召使に任せていたような仕事も、寮生活では自分の事は自分でやる必要があって。そのために必要なことを学んでいく話。微笑ましくて良かったですね。

書き下ろし漫画『とびきりの甘さ』は、原作で好きだった「対人精神干渉型化学物質クレープ」が登場するエピソードで、レイナ勧誘の流れが絵伝版だと違うので本編だと登場せず残念に思っていたんですが、描きおろしてくれたのには感謝しかないですね。

 

あとは雨川先生がマイカがアッシュの抑え役に回っていることに「ユイカさんもにっこり」とか言ってるの笑った。某資格は取れる人どれだけいるんですか。

電子版にもカバー裏収録してくれてるのはありがたいですね。新キャラの補足とか

囚人衆の名前とかの情報があって、こういうこだわりがある作品は好きです。今回も堪能しました。



フシノカミ~辺境から始める文明再生記~4

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――だからなんとかしなくてはならない

そうだ 抱くべきは絶望ではなく まず決意の火種であるべきだった

 

1518話を収録。

熊がやってきたと知らせがあり、村人は教会へと逃げ込むことに。

アッシュも本来であればマイカと一緒にそこへ行くべきなのですが……アッシュ君の聡明な頭は、現状の問題にすぐに気が付いて。

 

熊に対処できるクライン村長や、狩猟経験のあるバンやジキルが各々の事情で村を離れている。ということは今熊に対抗できる手段を持っているのは、バンから教えを受けている自分だけだ、と。

そこで一度自宅へ戻り、狩猟用の道具を回収してから教会へ向かったわけですが……途中でバッチリ熊と遭遇してしまうあたりが、アッシュ君の引きの強さというべきか。

 

害獣と遭遇しても慌てず、避難場所である教会との距離を測り、対処を選ぶあたり覚悟が決まってて強い。

「ここは私の村だ」と決意表明するシーン、読書会によって本に希望を見出したアッシュが、「ほんの12ページ目に過ぎない夢物語」と語るノスキュラ村での出来事が、本の見開きで表現されているのがとても好きです。

 

まだ成長途中のアッシュは、熊に辛勝するのですが。毒を使って弱らせて、一度死んで前世の知識を持っているがゆえに「死の恐怖に抗える」という自身の強みを押し付けて、討ち取ったのですから流石です。

 

そのうえで負傷して寝込むというのが、この作品の儘ならなさを描いているというか。

ノスキュラ村の一般村人たちが、アッシュの出血を見て狼狽えたり、もう助からないかも……と思ってしまうのが、この世界の文明レベルなんですよね。

マイカもまた、自分の想い人が失われてしまうかもと一度は立ち止まってしまうわけですけど、アッシュの教えを胸に他の人に協力してもらいながら彼を救おうとするのが熱い。

 

アッシュがノスキュラ村に与えた影響は大きいですが、あくまで辺境の寒村に過ぎないこの場所では、彼の目的である「古代文明のような快適な生活の再現」という夢には不足してるものも多くて。

そんな彼に「都市に留学できる機会」なんてものを与えたら、そりゃ飛びつきますよねぇ。

まぁ肝心の領都の外観は彼の期待に届かないものでしたけど。不足してるなら変えていけばいいと奮起してる彼を見てると、やってくれそうな気がしてくる。

 

巻末の書下ろしSSは「シェバの灯」。アッシュを見送った後のシェバの視点で、息子を心配してる母に対して、父ダビドは信頼が厚いというか。

酔っぱらってぶつかって以降のダビドは本当にアッシュを理解してくれるようになりましたよね……。まぁ理屈でいえばダビドの言う通り、アッシュ本人は問題ないですけど。それでも心配になる気持ちまで止まるわけではないですよねぇ……。

描きおろし漫画はこのSSに影響された黒杞先生が、この後のエピソードを描いたものらしくて、こういう試みは面白くて好きです。

フシノカミ3

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「…全部うまくはできないですよ」

「むしろ 私一人ではできないことをみなさんに助けていただいているのです」

 

編纂版こと原作小説の完結7巻と同時発売したコミカライズ3巻。

作者の黒杞よるの先生は、屈指のフシノカミ愛好家でご自身のTwitterにて月1ペースでその時WEBで無料公開されている話について語る、フシノカミラジオを開催されているほど。

原作者の雨川先生もリスナーとして参加していたり、お便りが届く時もあって中々楽しいスペースなので機会があったら聞いてみてくださいな。

ちなみにそこで、「WEB掲載分=原典」や「書籍=編纂版」のような呼び方をコミカライズにも付けられないかと言うような話があり、後に絵伝版と命名されました。なので今後は絵伝版の表記も併用していきたいと思います。

 

さて、今回収録されているエピソードは絵伝版独自のエピソードも多いですね。

元々原典や編纂版、断章のエピソードを上手くミックスして漫画として分かりやすい様に描写を作られている方だなとは思っていたのですが。

その勢いでどこにもなかった新エピソードを創出されていって、それがまた上手く作品世界に融和していくのでシリーズ既読勢としても楽しいですし、ここを入り口としてフシノカミに手を出してくれる人が増えてくれればいいなぁと切に思います。

 

神殿での勉強会にターニャが加わって、養蜂業に向けて動き出したノスキュラ村。

けれど姉の変化が面白くないジキル君は態度を硬化させていて……。あまり親しくはないアッシュ君が、話を聞きに行くわけですが。ここ、原点とかよりエピソード膨らんでるんですよねぇ。

その後の12話でも絵伝版が初出となるティーレ君が登場したりするわけですし。アッシュ君が沈み込んでいたときの様子を絵で見ると、これは確かに「灰の底」だ……ってなって胸が締め付けられる想いです。

だから1314話にかえて、沈むだけではなく浮上するシーンも盛り込んでくれたのは本様に良かったですねぇ。まぁ、良い話あったら悪い話があるので人生中々上手くいきませんが。

 

巻末SSはティ―ㇾ君が夢を語る「遠い日の夢」。描き下ろし漫画で、ジキル君の勉強会初参加エピソード「教会の賑わい」を収録。

あとがきで黒杞先生がモブ枠のサブキャラ達の名前と、ちょっとした情報を描いてくれてて、1巻から読み返したくなりましたねー。

カバー裏収録の4コマも甘い話と可愛い話でとても面白かったです。

フシノカミ~辺境から始める文明再生記~2

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ならば考えていただきたい

この強欲な夢追い人が 転ばずに走り続けられる方法を――

 

5話~第9話までを収録。発売直後の今だと、9話はWEB先読み枠なので、本を買うと実質先読み! 嬉しい!

まぁ読者の喜びに反して、5話は採取に出かけたアッシュが行方不明になったっていう驚愕の情報を聞いて固まるマイカちゃんの扉絵から始まるんですが。

慌てて村長夫人である母親のユイカに報告に行くマイカちゃんの困惑っぷりと、泣くのは帰って来てからにしなと励ますフォルケの図が結構好きです。

 

これで当の本人はケロッと帰ってくるんだからそりゃあ文句のひとつやふたつ言ってやりたくなるってものでしょう。

編纂版だとアッシュ視点に加えて、他キャラ視点を挟むことで情報量を増やしていたんですが、コミカライズに当たっては上手く統合してキャラの魅力引き出してるんですよねぇ。

たとえば、帰還したアッシュに最初に駆けつけるのって、WEB・編纂版だとマイカとジェバなんですけど、コミカライズだとジェバ・ダビドの両親なんですよね。

 

ダビド、コミカライズ1巻でもアッシュ君にコロコロされかけてたり、勉強しまくる息子をどう扱っていいか迷ってる部分はありますけど、ちゃんと心配する親心も持ってるんですよね。それをしっかり描いてくれてるのが良かった。

ちなみに、WEB版フシノカミには断章って章があって、そこにある『伝説前夜』は母ジェバ視点、『見送る背中』は父ダビド視点での情報で解像度上がるのでオススメですよー。

ただ、今コミカライズしてる1章『灰の庭』完結時点の情報が混じってるので、コミカライズ派の人は読むタイミングに注意が必要です。

 

アロエを確保して傷薬を使ったら、手が綺麗になったため女性陣が飛びついて。

実験の協力者になったことでアッシュ君に手を握られて、観察されて手れまくってるマイカちゃんが可愛くて好き。

その後、アッシュのしたことが凄いことだけどトラブルの原因になりかねない、と話を通してくれたユイカ夫人は素晴らしい。正装してるアッシュ・マイカもかなり良いですよね。

アッシュ君の影響がどんどん広がって恩恵を被る人も増えてますが、同年代の少年たちにはそれを良く思わない子もいて。中々難しいですねぇ。

フシノカミ~辺境から始める文明再生記~1

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あの本当の笑顔が どうしても気になって

知りたくて もう一度見てみたくて

気付いたらあたしは 教会の扉を開けていた

 

オーバーラップノベルスより刊行されてる『フシノカミ』シリーズのコミカライズです。

好きな作品が、好きな絵柄でコミカライズされる事って、幸せですよね……と実感させてくれました。

コミカライズするにあたって、原作の展開を少し入れ替えたりしているのですが、黒杞先生が『フシノカミ』の大ファンだって言うことを公言されているだけあって、組み換え方に無理がなく、読みやすいのが素敵です。

 

1話冒頭の「本だ。本だった」から始まる描写がとても綺麗で、知識についてしっかりと向き合ってくれてる感じがするのが良いんですよ。

主人公は寒村に生まれた農民の子、アッシュ。彼には前世の記憶らしきものがあり……8歳児でも立派な労働力に数えられる世界が生きにくくてしょうがなかった。

そんな彼が、村長夫人の開いてくれた朗読会で、本によって継承された知識に目を付けて。

文字を覚えるところからスタートしてますが、驚くほどの呑み込みの早さで習得して、今後も本を読めるように契約書まで整えている辺りは強かです。

 

村長家の一人娘のマイカちゃんも、人を見る目を持っていて……アッシュ君が抱えている絶望を察していたようですが。

夢を見つけた事で生き生きとし始めたアッシュ君に影響されて、苦手な勉強にも向き合い始めるのもいい感じです。その後、夜道で手を繋いで照れてる場面とかも本当に可愛くて……。アッシュ君が本に夢中ですぐ手を離すのに、マイカちゃんの方はもうちょっと惜しんでくれても……! ってなってる所が好き。

 

アッシュ君の好きなシーンだと、4話で「大勝利」な夢見てるところとか、「いらっしゃいませたんぱく質」してる場面も良いですよね。

巻末にが原作者書き下ろしの「第二次聖戦――勃発」と中々物騒なタイトルですが、アッシュとフォルケのいつも通りのやり取りな感じでしたねぇ。SSだけじゃなくて、黒杞先生描き下ろしのイラストついてたの嬉しかったです。

 

他にはオマケ漫画もありますが、ぴょんぴょんしてるマイカちゃんと帰宅後の姿のギャップが微笑ましかったです。カバー裏にも描き下ろし漫画が掲載されてて、電子版でも問題なく見られたの嬉しかったですねー。

応援イラストなんかも収録されてましたが、編纂版イラスト担当の大熊先生のマイカちゃんがウィンクしてて可愛かった。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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