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「どんな程度であれ、理不尽な悪意に慣れてはいけない。何かあったらすぐに言ってほしい。できる限り対処する」

「……ありがとうございます」

 

貴族だけが魔法を扱える世界。貴族であれば幼少期から学び、使用することはできるようですが……。

16歳になったら通うことになる王立の魔法学院を卒業できなければ、それ以降は使うことを許されないとか。使用を禁じるための魔封じの腕輪とかも用意されているみたいですし、業の深さを感じる部分はありました。

 

主人公のアメリアは田舎領地の伯爵令嬢。

かつては作物の育成を促進するなどの作用を齎す土属性の魔導師を輩出してきたことで、領地を富ませてきたようですが。曽祖父が水属性の魔導師と結婚してから、水属性を使う子しか生まれなくなってしまったとか。

そのためアメリアの父は、娘の婚約者として土属性の魔導師を熱望しており、侯爵子息のルースとの婚約を早い段階で結び、アメリアは彼と恋ではないにせよ親愛の情を育んできた……つもりだった。

 

しかしルースは1歳上な関係で先に王都の魔法学院に通うことになり……それ以降、ほとんど音信不通状態になってしまった。

タイトルから察せる通り彼は現地で見つけた浮気相手との恋に熱を上げて、婚約関係にあるアメリアへ必要な配慮をしなかった。どころか、アメリアの悪評を流し彼女の生活を脅かし、追い詰められた彼女に自分の要求をのませようと画策していた。

 

そんなルースの計画は、アメリアがしっかりと領地改良のために続けていた研鑽が、同じように研究に没頭するタイプの第四王子に認められたことで破綻するわけですが。

一部貴族はアメリアの悪評を鵜吞みにして、彼女と距離を取ったりいじめを行ったりしてきたわけですが。トップである王族は、地位に見合った責任ある態度が求められることを自覚していて、馬鹿を排除するために動いてくれたのは良かったですね。

タイトルで気になって手に取った人は、その通りの展開をお届けしてくれる安心して読めるラブコメだと思いました。

いや意外と駆け落ちするまで長かったな、とかは思いましたが。

 

世界観には気になるところ多かったですけどね。

土の魔導師が貴重ってことは、土と土で結婚するみたいなケースって少ないと考えられるじゃないですか。

それなのにアメリアの曽祖父の代で、土と水で恋愛結婚したらそれ以降は水しか生まれなくなってしまった、とか聞くと魔法属性の血の継承ってあまり当てにならないじゃないですか。むしろアメリアの家はそれまでよく土が続いてきたな、とか思ったんですが。

 

それまで上手くいっていたからあまり意識されなかったのかもしれないけれど、曽祖父以降のように系統が偏る可能性があるのに、土の魔導師という個人の才能に頼りすぎてる感じはしたかなぁ。

ここしばらく天候不順が続き、作物の育成を助けたり品種改良を進めるために必要だっていうのも分からないではないですけど。

アメリア父が当初望んでいたように、土の魔導師の血を取り入れても上手くいくとは限らないんじゃないかなぁ、と思うと別の解決法必要だろうとは早い段階で思いました。

だから終盤でアメリアが魔法水という新しい発明をしてくれたのは、そういうの必要だよね、と思っていた展開だったので綺麗にパズルをできたような達成感があった。

 

他にも他国では途絶した光魔法が、現王家では数百年継承され続けてるっていうのもちょっと気になる。

聖女を王家に迎え光の女神から祝福されたからっていう伝承、時代を経て盛られた話ってわけでもなさそうな気がすると言いますか。

かつてはそうやって神から祝福を賜る機会があったらしいのに、作中ではあまり信仰に関しての描写が見られなかったのが気になるというか。昨今の天候不順とか、神様絡みで何か問題が生じた結果なんじゃ、とか穿ってみたくなるなぁ。考えすぎかもしれませんが。

 

アメリアと王子の関係はかなり良好で1巻でハッピーエンドって感じなんですが、今月には2巻が発売予定とか。ここからどう話を広げるのか楽しみですね。