「大人が勝手に機体をかけているだけだからね、未来でお歴々の投資がどうなるかなんて君が責任を持つことではないよ。それよりもたくさん迷って、たくさん遊んで、たくさん学びなさい。今から大層なものじゃないなんて決めつけてはいけない」
だって、とフィリップ錬師は言葉を区切って口を開く。
「君達の人生はこれからだろう?」
著者がイラストも兼任しているシリーズ。WEB既読。
主人公のアリスは、銀灰色の毛を持つ獣人の女の子。双子の姉であるスフィと一緒に、故あって旅をしていたところ、体調を崩して寝込んでしまって……その時に、前世の記憶を取り戻した。
前世は男子だったと言いつつ、アリスとして育った記憶もしっかりあるので、何だかんだ少女として普通に生きて行ってるのは偉い。いやまぁ、生来病弱で、一歩間違えたら死んでたみたいですが。
割と早い段階で前世の記憶を取り戻したことを打ち明けて、スフィも受け入れてくれてるのが良いですね。
そもそも彼女達がなぜ旅をしているのかと言ったら、庇護者であったおじいちゃんが死んだから。
彼女達がいるゼルギア大陸の西方にあるラウド王国では、アリス達みたいな獣人は差別の対象となっていて。
オマケに彼女達はなぜか森に落ちていたところを、錬金術師のおじいちゃんに保護されて。いろいろな教えを受けたり、彼が代わりの居ない錬金術師だったこともあって村での盾になってくれてたらしいですが。
双子を保護した時点で死病に蝕まれていたこともあって、亡くなってしまった。彼は双子の故郷が「大陸東部にあるアルヴェリアという国だろう」という所までは分かっていたようですけど、そこまで送り届ける事すらできなかった。
自分が死ぬ前に荷物を纏めて旅に出ろ、と双子には言っていたようですけど。最後まで一緒にいることを彼女達は選んで。そのせいで遺産狙いの村人に集られて、旅の為の備えもむしられたようですけど。アリスの病弱さも併せてみると、まぁ生きて出られただけでラッキーだったとみるべきかなぁ。
旅の途中に立ち寄った街で、同じような獣人の孤児の少女2人と出会って。
最初は警戒しあってましたが、なんだかんだ仲良くなっていき旅路を共にするようになったのは微笑ましくて良かったですね。
スフィは身体能力に秀でている一方、アリスは病弱ながらおじいちゃんからしっかりと錬金術師としての教えを受けていて。ちゃんと位階を貰えるくらい知識を修めていて、そのあたりを知っている人物と出会ってサポートを受けられる街フォーリンゲンまでたどり着けたのは良かったですね。
WEBだとフォーリンゲンの錬金術師ギルド到着時に受付でひと揉めしたりしてましたが、書籍版はそのあたりサクッとカットされて、良識的な受付になってましたねぇ。
フィリップ錬師も「もうちょっと獣人に優しい街だったら成人するまで」保護するのも吝かではなかったようですけど。環境が整ったことで旅の資金を稼げるようになったりして。……まぁそこでも騒動に遭遇したりして、平穏は遠くても協力して乗り切っていってるのが良いですね。WEBの更新も結構良いところまで進んでいて、好きなシリーズです。