「ああ。ウルの力を貸してくれ――お前と一緒なら、俺は初めて英雄を目指せる」
「……まったく、世話の焼けるご主人様です」
科学も魔術も発展していた旧文明。
しかし今では見る影もなく……生きた機械によって追いやられ、人類は滅びる一歩手前だった。
それでも諦めず人類文明圏外域に踏み込む探索者も居て、過去には今の最前線となっている街一つを解放した英雄だって現れたが……彼もまた圏外域で倒れた。
今の人類は明確な先導役もなく停滞しているような状態のようですが、そんな彼らの希望となるのが『予言の英雄』。教会が公布する「絶対に当たる予言」に紡がれた、世界を救うに足る5人。
主人公のレリンは、幼少期からそれに選ばれるための努力を重ね、救道院というこの世界の学校において主席を取るまでになった。
――そして、彼は『予言の英雄』には選ばれなかった。
レリンの幼馴染や友人から4人も選出されていて、彼女達もレリンの夢を知っていたからか、傷に触れないように気を使ってあえていつも通りに振る舞ってくれたりもするわけですよ。
でも、その気遣いに気付けるからこそ、余計に痛いんですよね。
だからグレるって宣言して、一人で圏外へと踏み込むような自暴自棄とも取れる行動に出てしまうわけですが。
「――賭け金が俺の命だけなら、全てのハードルはクリアされている」とか言って、実際行動に移せてしまう辺り、覚悟決まりすぎてる涼暮作品の主人公味を感じましたね……。
目的が全くない訳では無くて、10年以上前に父が辿り着き「もし同じ仕事を選んだなら言ってみろ」と残した記録を相手にした、自分はまだ出来ると証明するための儀式みたいなものでしたけど。緩慢な自殺でもあったわけで。
それでもレリンは死ななかった。悪運強いなぁ。辿り着いた先でレリンを主と仰ぐ、美少女型で会話も成立する、特殊な機械生命体ウルと遭遇。
ウルはレリンに、このままでは人類は滅亡する未来を知っている。防ぐために必要な予言書のデータを持っている、という気になるが怪しい話を持ち掛けます。
それでも、親しい人々の命もかかっているからとレリンはウルと一緒に活動を開始して、「予言の英雄」にはばれないようにこっそりと戦い始めることになるわけです。
結構気になる情報も散りばめられているんですが、総じて1巻は世界観とキャラ説明が中心だった上、予言の英雄はまだ全員登場できてないって状態。
これからが面白くなりそうな作品ですから是非とも続きを読みたい……!
ちなみに電子版の巻末に特典SSが収録されているんですが、涼暮皐先生曰く「1巻だとほぼ出番がない《もうひとりの英雄候補》と一生コントする話」で、あながち間違ってなかったので、電子版もオススメですよー。フィリア、結構好きな予感がする。