気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

SQEXノベル

滅亡国家のやり直し 今日から始める軍師生活4

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「レイズ様の意思を継ぐ、ルデクを救うって、約束」

 

「ああ。守るよ」

 

ロアの知る歴史において、ルデク最後の勝利として記された屈指の戦果を齎した『レイズ=シュタインの大遠征』。

「最後の勝利」とある通り、その後ルデクが亡国と課す流れが激化していくわけです。

これまでもロアの行動によって歴史は変わってきており、彼の知るタイミングよりも早く『大遠征』が発生したわけです。ロアはこの戦いの後にレイズに自分が未来を知っている事を打ち明けようと決意し、戦場に赴いたわけですが……。

 

ロアが故郷の悲劇を回避するために手を尽くしているように、ルデクを滅ぼそうとする裏切り者たちだって、変化した状況に合わせて行動してくるんですよね……。

大遠征に合わせてルシファルが配下を動かし、ルデクの希望となりうるレイズを排除するための手を打つのは敵ながら、間違いのない一手ではあると思います。

ただ第10騎士団にはロアという特異点がいるので、敵の思惑通りにはいかないんですけどね。

 

レイズが暗殺者の一撃に倒れ、死の間際に「ロアは未来の知識を持っているのではないか」という推測に辿り着いていたのはお見事。

そして自身の死すらも利用して、ルデクのために動いたレイズは本当に偉大ですよ。そんなレイズから評価されたロア。もとより、故国の滅亡回避のために尽力するつもりだったでしょうけど、真剣さが増したというか。覚悟がより強まった感じがして良いですね。

ロア、グランツの想いをくみ取れない場面があったり、まだまだ未熟な部分もありますけど。そんな中でもレイズの薫陶を受けている、軍師としての才能をいろんな人が感じ取っているのが好き。

 

レイズの策と第10騎士団をはじめとする各騎士団の奮闘で、裏切り者たちの動きを掣肘できたのは良し。そうやって出来た時間で、本来の歴史ではあり得なかった「帝国との同盟」という札で状況を変えようとしているのがロアらしい。

少しでも同盟成立の確立を上げるために、ロアは出来るだけのことをして……そしてついに、幾人かに自分の秘密を打ち明けることにもなって。

ロアの歴史改変によって本来とは違うタイミングで失われた命も、確かにありますけど。それでも救われた者だっているんだと喪失の後に描いてくれるのは良かった。

オリヴィア嬢は愛されると死ぬ~旦那様、ちょっとこっち見すぎですわ~

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「…………私は愛していない」

「ええ、そうね」

「私は君を、一切、愛していない」

「ええ。わかってるわクラース。ちゃんと、わかっているから大丈夫よ」

 

大商社の父が国の威信をかけた品を運ぶ最中に嵐に飲まれ……財産を失うことになったオリヴィア。

母は病に倒れ、未成年の弟妹もいる状況で、オリヴィアは一度はいれば出られないと言われる悪名高き娼館に身売りに行こうとしたわけですが。

そんな彼女に声をかけたのがオールステット家の使用人だった。

地獄の扉を開こうとしている相手に「どうせなら我が家の主人のために死んでほしい」と提案してきたわけですが……娼館で身売りするよりも高い値段をつけてくれる交渉相手に、オリヴィアは食いついて。

 

彼らの主人は、王家に伝わ古文書に読み解くことを許された歴史学者のオールステット家の当主クラース。

クラースの祖父の代に、祖父が浮気をしたことで怒った奥様が、「オールステット家の男が愛した女は、十二月の満月の夜に死ぬ」という呪いを残して自殺。しかもその時に「三代呪う」とまで言っており、最初の妻は死ぬけど後妻を迎えれば血を繋ぐことはできる、と言うあたりに呪いらしい悪辣さを感じる。

祖父の浮気相手が亡くなり、クラースの父である先代もまた愛した妻を亡くした。

既に2代分の呪いは実を結んでしまっており……最後の呪いを受ける三代目がクラースだそうで。

 

まだ呪いが続いているということでクラースは、物心ついた時から「もうこの家にかかった呪で死ぬ女性が出ないように」と女性に触れないように過ごしてきたようですけど。

オールステット家は呪いなんて醜聞がありつつも、今も求められている有能さを示している家でもあって。

だから使用人たちは「どうか血を継いで欲しい」と思っていた。それは誰かの命を奪う方法でもあり……だから、悪名高い娼館に踏み込もうとしている相手に「どうせなら別の地獄を選びません?」なんて誘いを持ち掛ける形を選んだ。

 

オリヴィアはそういった事情をすべて了承した上で、クラースとの交流を始めることになって。

大商会で育ったオリヴィアは結構スペック高く、それなのに奢らず善良な娘で。そんな彼女を死に追いやろうとしていることに、使用人たちが罪悪感を感じる場面もあったりして。

クラース、女性に対する免疫なさすぎるところに、オリヴィアなんて可愛いらしい優良物件見せつけられて、心グラグラ揺らぎまくってるし、速攻で恋に落ちていたの、正直微笑ましかったですけどね。

 

オリヴィア、どうせ死ぬんだからと好き勝手振舞うようなこともせず。

クラースの妻として求められている事をしっかりこなした上で、自分に出来る事をやっていたのはお見事というか。

代々続く呪いには「術者の血を吸わせた針」が必要ということで、今も続くならその針をどうにか探せないものか、というアプローチも試していたのは偉い。……そして、その過程で隠されていた想いを見つけることになったのは、えぇ。物語の展開として綺麗だとも思うし、どうしてアレに誰も気付かなかったんだというもの悲しさも胸に去来しましたね……。


滅亡国家のやり直し 今日から始める軍師生活3

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「私は平和が好きです」

「僕もだよ」

 

過去知識を駆使してゼッタでの大戦を乗り越え、望みうる戦果を掴んだロアたち。

とは言え、一つの戦を乗り越えただけで周辺国との関係も変わってないし、ロアの知るルデク内部の裏切り者たちも未だ健在なわけで。

長く落ち着けるわけではないですけど、少しだけでも穏やかな時間を過ごせたのは良かったですね。

 

それには北の大陸に通じる不文律として年末年始は戦わない、というのがあったからともいえますが。

一つ違えば大陸統を成し遂げたかもしれない傑物グランスウェウル。非凡な才能があったが、目的のためには苛烈さを示す人物で……年末年始に限らず時を選ばず戦いを続けた結果、民草から反乱を起こされて討たれたという故事に則っているとかなんとか。

こういう作中で通じる設定が開示されるの、楽しくて好きです。

 

年末年始は争わない……が、年が明ければロアの知るルデク滅亡の年を迎える節目のタイミングでもあって。

ロアがウィックハルトを救うことになったハクシャで、亡くなった人への献花をしたり。それまで縁のなかった第七騎士団のトップに会いに行ったり。

そんな事をしていたある日、ツェツェドラ皇子がルデク王への会談を申し込んでいるという話が、ルルリアに手紙を届けに行った南大陸の大臣ダスさんから持ち込まれて。

本来の歴史では死ぬ運命にあったツェツェドラとルルリアが無事で、ルデクとの縁を結ぶきっかけになってくれたのは良かったですね。

ロアと出会ったことで良い方向に変化したゼランド王子が、他国の皇子が来るのならこちらも同格の相手が出迎えるべきだと自ら提言したのも成長を感じて良かった。

 

そういった変化以外にも、ロアによって歴史が塗り替えられて運命が変わった人についても今回は明らかになっていくことになりましたが。

ルデクがゼッタの大戦で勝利したことで、ゴルベルでは粛清の嵐が巻き起こったとかで。ロアの知る歴史でも長く生きた英雄ローデライトが処刑されたり、かつてルデクに損害を与えウィックアルトも浅からぬ因縁のあるフランクルトが亡命を希望してきたりと、今まで以上に激動の時代、って感じがしてきましたねぇ……。最後でロアがとある決意をしていましたし。



忘却聖女5

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「エーレはきっと、ずっとエーレなんですね」

「お前は変われ。だが変わるな」

「えぇ……」

 

忘却の中でなんとかマリヴェルと神殿が合流し、これから協力していけるか……と思ったタイミングで、襲撃によってエーレが死亡。

彼が抱えていた聖印の効果によって、神官長たちが記憶を取り戻したのは良かったですが、それゆえに聖女を守るために彼らは命を掛けることに。

やっとお父さんと呼べた神官長を置いて逃げざるを得なかったマリヴェルでしたが、彼女は諦めるつもりはなく。王子と共に身を捧げることで、神の奇跡によって全てを治めようとした。

 

……しかし、王子もまたそれをただ受け入れるだけの器ではなくて。

ハデルイ神の前で、マリヴェルを必要とする主張をしてくれて。ハデルイ神、マリヴェルを人形と呼び、愛する人の子を守るために彼女を砕こうとしたわけですが……。

かの神は確かに人を愛していた。強大な力を持つハデルイ神は、十一柱の神を喰らったエイネ・ロイアーであろうと滅ぼすことは可能だった。

しかし、それだけの力を得たエイネとぶつかれば、余波でアデウスの民は死んでしまう。人でありながらエイネは同胞を人質にして、それを神が見捨てられなかったという背景が書かれていたのは、エイネの周到さや神なりの愛とか感じる描写で良かったですねぇ。

そして一度死を迎え、残滓となってなおハデルイ神はいろいろと手を尽くしてくれていたのが良いですね……。

 

エーレも、死ぬつもりは無かったけど最悪に備えて呪いに近い聖印を刻んでいたわけですが……死が確定する前に、マリヴェルが贄となって開いたハデルイ神と対話する世界にかくまわれたことで、神による治療が間に合ったと。

愛する人の喪失を知ったことで、神殿勢がこれまでマリヴェルが自分を大切にしない、喪われる前提での物言いに傷ついていたんだぞ、と改めて釘を刺しつつ「自分の喪失でそれだけ絶望してくれたのは結構嬉しい」とか言っちゃうあたり、エーレも愛が重い。

 

エーレやルウィがその身を捧げ、共に人の理から少し外れることで、神の器となる運命から解き放たれたマリヴェル。まぁ始まりが「器」なので、そういう助力があっても全く「人」と同じという訳にもいかないようですが。

人の意志が起こした奇跡は、実に尊いものであったと思います。4巻で神官長たちが記憶を取り戻してくれたことと言い、これが見たかったんだよ……というのが見れる終盤の展開、実に良いですよね。

 

想えばこの物語は終始、人の想いによって紡がれてきてましたよね。神が存在する世界で、神術とかも色々存在はしていますけども。

エイネ・ロイアーこと初代聖女アリアドナ。

マリヴェルは彼女の過去を垣間見て、その想いの一端を知ってましたが……あくまで彼女の始まりもまた、人としての愛ゆえの暴走だったというのが何とも。

復讐という強い炎に突き動かされて、多くの犠牲を出したアリアドナを自分だったら許せはしないな……と思ってしまいますが。マリヴェルが最後、彼女と対話する時間を設けようとしていたのは、関心しちゃった。マリヴェル、なんだかんだ結構ちゃんと聖女やってるんですよね……。

 

エーレの呪いが伝播して記憶を取り戻した神兵たちが、マリヴェルを忘れたことに強い罪の意識を持ってるのも、彼らとしては苛まれ続ける悪夢みたいな感情でしょうけど、それだけマリヴェルを聖女として抱く神殿の一員としての意識がしっかりしてる、ということでしょうし。

アリアドナの策略によって北の隣国が攻めて来たのと、大樹が君臨しアデウス王都が壊滅状態に陥ったのは派手でしたけど。これだけの大騒動の終わりは、予想以上に穏やかなもので……神の愛によって守られたものも多く、悲劇的な別れで終わらず神官長との再会が叶ったのは本当に感動的でした。

 

……アリアドナによって歪められ続けた神殿ではありますが、マリヴェル就任の際に新体制を整えたのが多少は効いてましたかね。後始末に際してアリアドナ関連の情報は全て開示したみたいですし、このままという訳にはいかずある程度形を変える必要はあるだろうとされてましたが。……難工事であるのも確かで、先送りにされているのも無理はない。

 

全てが終わった後、これまで他国の聖女との交流を立っていたアデウスの聖女という厳しい立場になって、マリヴェル大変そうではありましたけど。それでも為すべきことを為してるのは偉い。

とある神殿関係者が「マリヴェルが脱走できてた頃は平和でしたね」とこぼして、あの頃みたいになれるように頑張りますと返したところ「脱走はするな」と真顔で返される一連の流れ、正直トップクラスに好き。

滅亡国家のやり直し 今日から始める軍師生活2

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「いや、盤上遊戯の話ではない。ロアは、第10騎士団で何を目指したいのだ」

(略)

「僕は、ルデクの平和を目指します」

 

ルデクが滅亡した40年後の未来から過去に戻ってきたロア。

未来に広がり始めた瓶詰めという保存食の技術を再現したり、出来ることをしていくことでウィックハルトを救ったり、少しずつ成果を上げています。

早い段階でレイズと知己を得て第10騎士団に加入しただけではなく、2巻冒頭で実施された模擬戦でレイズに食らいついたことで、第10騎士団で中隊を任されることにもなってました。

 

ロアは多くの書物にあたり、未来の知識も持っていることで情報には強いですけど……あくまで一文官としての意識が強いんですよね。模擬戦でもレイズの部下であるグランツの癖を見抜いて策を建ててましたが、同じように自分も分析されるということや、いくつもの成果を出した彼の評価は一般には高い、という点とかレイズに指摘されてたのは良かったですね。

ウィックハルトの件のように未来を少し変えることには成功してますが、まだまだルデク滅亡を回避するためにはやらないといけないことが多くて……成功に甘えることなく、思考し続けているのが彼の強みですよねぇ。

 

滅亡の未来においては一文官に過ぎなかった彼には、過去の事件について知り得ないことも多くて。第一騎士団が裏切ったのは確実だが……滅亡までの早さを考えると、他にも裏切り者が居るのかもしれない、と考慮してるのは偉い。

ロア自身は考えすぎかもしれない、自分の妄想かもしれないと思っていますが、自分でもそう思う位の可能性でも、来るべき時の為に不安の芽を潰そうとしてるのは……滅びを、知っている彼ならではですかね……。

 

ドリューという技術方面の才能がある変人との縁もあるので、本当にいろいろやってますからね……。行軍中に苦労したから、と簡単に着火できる装置を考えたりもしてましたが。戦時中なんだから火付けに使われる可能性もあるだろう、と指摘されるまで思い至ってなかったあたり根は小市民すぎる。

10騎士団預かりとなっている少女ルファ。彼女の秘密が今回明らかになって、庇護者を得ることになったり、第10騎士団の中で役割を与えられることになったり。

そしてロアが知る大きな戦……ゼッタの大戦に彼は自身の中隊を率いて参戦することになるわけです。

ロアの知る歴史よりは多少マシにはなってましたが、それでも戦である以上犠牲は出る。特に今回は彼を信じてついてきてくれたウィックハルトに危険な役回りを任せることになったりしてましたが……それでも、ロアは自分で決断したんですよね。少しずつ成長している感じがして良いです。まぁ気負い過ぎて過労でぶっ倒れたりしてたので、まだまだ青くもありますが。それでも、今回も勲功積み上げてるのは流石。



滅亡国家のやり直し 今日から始める軍師生活1

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「レイズ様も言った通り、貴方は良くやった。さ、胸を張ってみんなの元に戻りましょう、ロア」

 

ルデク王国の平民、ロア

彼は記憶力が異常に良く、同僚からは人間辞書として重宝されていた、ちょっと本を読むのが好きなだけの文官だった。

しかし戦乱によってルデク王国は滅び……彼は40年間放浪した末に、異国の地で死んだハズだった。

 

死んだハズのロアが次に気が付いたのは42年前。

ルデク王国が滅亡に転がり落ちる前、なんとか踏みとどまれる可能性のある地点であった。未来の記憶も有している彼は、まだ過去に戻ったことに現実味がなく……友人たちとの会話の中で未来で知った情報をポロっと零すことになって。

「盗賊騒ぎに騎士団が派遣されることになったが、あれは領主が他国とつるんでいるから簡単には解決しない」と言う彼の言葉を、第10騎士団の副騎士団長であるレイズが聞きつけて。

 

ちなみに第10騎士団の騎士団長は国王が就任しているそうで、レイズは全権を任されて現場で動いているそうで。現場のトップが、ロアの荒唐無稽ともとられかねない発言を聞いて、その根拠を聞き、しっかりと対応に反映させてくれる柔軟さを持っていたのは救いでしたね。

そのことからロアはレイズに見出され、第10騎士団に登用されることに。

ロアは未来で知った様々な知識を用いて、悲劇を回避しようと試みていくわけです。

ただ、ロアはあくまで一介の文官であり、祖国滅亡後は放浪していた身であって。出来ることには限りがあるんですよねぇ。

 

例えば瓶詰という新しい保存食が作られたのは知っていても、職人ではないから適した瓶をつくれたりするわけではない。……まぁアイデアは知ってるから、出来る範囲で形にしていったりしてるんですが。

例えば、異国の王子が死を賜る結果になった事件は知っていても、なんでその時その人物がそこに居たのかは知らないし。

 

それでも、歴史を知っているからこそ出来ることは間違いなくあって。

本来ならもっと多くの犠牲が出来ていた事件を、早期解決したり。負傷した引退を余儀なくされた人物を助けることに成功したり。

もっとも、国が滅びに向かう前……戦乱の時代の中ではあるので、まったくの犠牲が出ないなんてことはなく。

ロアはそういった犠牲とかとも向き合いながら、それでも祖国滅亡回避のために前へ進んで行くんですよね。WEBは完結済みで、既読なんですが好きな作品です。刊行続いて欲しいなぁ。

魔術師団長の契約結婚

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「お前は今後、どうしたいんだい」

(略)

「……これからも仲良く暮らしたいと思っています」

 

魔術師団長を務めるレイは、魔術公爵家筆頭であるミラー公爵家に生まれた容姿端麗の青年。しかし親しい人からは「外見は派手でも、中身は地味」と称されるような人物でもあり……要するに、見た目で寄ってくる人は多いけれど、それを楽しめるような性格はしてなくて。

彼に近づこうとする女性たちがもめる様子を見てきたせいで、妙に枯れた部分を持ってしまって今に至るまで独身だった。

 

そんなある日、占いを得意とするレイの祖母の手配で縁談をすることになってしまって。

お相手はテイラー公爵家の令嬢、ブリジット。最年少で監査を行う部署の班長を務める女傑であり、「鉄の女」とまであだ名される人物だった。

2人とも仕事に打ち込んでいて、出会いを求めるようなタイプではなく。とりあえず家族の手前、顔合わせだけはして断ろうと思ったから、送られてきた身上書にすら目を通さなかった。

 

そんなどこか似たところのある2人だったので、不思議とウマが合って……今後同じような縁談を持ち込まれるのも面倒でしょうから、もういっそ条件を突き合わせて相手を尊重した「契約結婚」をしませんか? ということになって。

時に仕事に協力をしたり、時に夜会に参加したりして。お互いの素の表情なんかを見る度に、じわじわと気持ちが育っていって……。

仮初の契約だったはずの2人が、本当の夫婦になるまでの物語。本編は半分程度の分量でサクッと終わっていて、後半は書下ろしの短~中編が収録されています。

 

「猫耳花粉症」はタイトル通り。前魔術師団長が作成に失敗した魔法薬が拡散してしまって、花粉症の人々に猫耳が生える、という奇怪な症状が広まってしまうことになって。

ブリジットもまた猫耳が生えてしまって、レイが妻を愛でるの楽しんでるの癖が出てて笑った。それとは別に、軽い男である前師団長とのやり取りに嫉妬してるのとかも、ちゃんと恋人してて良いなぁと思いましたよ。

 

「詐欺師」は、地球で言うとマルチみたいな悪徳サービスを提供している男がいるが、作中の法では明確にしょっ引けるものでもなくて。それに対抗するためにちょっと工夫することになる話。

「レイと出会う前のブリジット」はタイトル通り、実家から見合いについての話が持ち込まれてから、見合いの席でレイに会うまでの彼女の心情が見られる話。真面目だなぁ、というのが良く伝わってきました。

「嘘がつけなくなる薬」は前師団長が作成した表題の薬をもらったブリジットが葛藤することになる話。微笑ましくて好きですね。

 

そして「花祭り」は、好きな相手に女性が自作した紐飾りを贈るという風習のある祭りについて。ブリジットもレイもそのあたりの事情に疎いのは、なんからしくて笑っちゃった。でも2人ならではのやりとりをして、幸せそうなんだからそれで良し!

転生したら最強種たちが住まう島でした~この島でスローライフを楽しみます~1

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「まあアラタの異常性はこれで良くわかったわ。それと、これからたくさん頑張ってもらっても大丈夫ってことも。というわけで、これからもよろしくね」

 

神様のミスで死んでしまい、異世界に転生することになった主人公のアラタ。

彼は『病気と怪我をしない強い肉体』を与えられて異世界に送り込まれることになったわけですが……タイトルにある通り、目覚めたのは最強種が住む島だった。

この島に住む神獣族や、鬼神族、古代龍に真祖の吸血鬼などなど。人間社会においては、歴史書どころか神話レベルの古さと逸話のある種族だとか。

 

アラタはこの世界の常識に疎いんですが、王命によって伝説にある島捜索していたチームの一人であるレイナが打ち上げられているのを発見。

彼女を助けたことで、一緒に過ごすようになって……色々とこの世界の常識について教えてもらえるのは助かりましたねぇ。

レイナ曰く、この島の住人一人でも外の世界でその力を振るえば『天災』として、総力を挙げて戦わないといけないレベルだそうで。

彼女自身人類としては強い部類だったのに、チート肉体を貰ったアラタよりも戦闘面では下になってしまう、というあたり魔境っぷりが伺えます。

 

というのもこの神島アルカディアは、創造神によって作られた強力すぎる生物たちを外に出さないために作られた場所で、外に出られないような結界が張られている場所だって言いますし。

中に入れるのも、一定以上の強力な魔力を持つ者だけっていう閉ざされた島であるようです。とはいえ無為な争いに飽いている長命種も多く、言葉も通じるしアラタのチートスペックによって魔獣にも対処できる。

そしてレイナは持ち込んだ資材で生活面や、料理などでフォローしてくれる。現地の住人を餌付けして、良いコミュニケーションも取れているしで、安心して読める作品でしたね。



忘却聖女4

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「仮令我々が壊滅しようが、君達は生きてこの場から落ち延びる必要がある。その責がある。――君には、分かるはずだ、マリヴェル。私は君に、その責を教えたのだから」

 

神に作られた人形であった聖女マリヴェル。

そんな彼女を愛し、人としての生き方を教え込んだ当代の教会。その忘却が痛かったわけですが……記憶を残したエーレの足掻きが、ついに実を結ぶことになって。

そこに至ってしまってなお、自分を大事にしなさすぎて怖い部分はありますが、吹っ切ったエーレが都度修正かけてくれてるので良いコンビだなぁ、と思ってみていました。

 

幼少期のエーレが眠っていた時期、マリヴェルと想い出を紡いでいた時の断片が描かれていたのも良かったですねぇ。

モノとしての価値基準で語るマリヴェルに、人としての生を拒絶しつつも返答を返してしまうエーレ、真面目だなぁというか。彼女の影響を受けて外に出る覚悟を決めたの、良いですねぇ。

始まりがそうだからこそ、エーレがマリヴェルの傍に居ようとするのは決まっていたんだな、というか。エーレが「自分は勝手に幸せになる」と言いつつ「俺の怒りはお前にやる」と語っているの、良かったです。

 

自分の使い方を定めたというエーレは、本当にそれをやり遂げたんですよね。

十三代聖女に就くことを決めた当代の神官たちに、マリヴェルとの繋がりについてエーレが指摘して言ったことを、それぞれが心当たりあるシーン好きです。

そういう指摘などの積み重なりもあり、記憶が戻らないままマリヴェルが聖女として教会に帰還することに。

 

先代聖女が犯した罪についての調査を進め、彼女が遺した呪いの根源も見つけた。

王城との会談の席を設けて、潜んでいた先代聖女派を炙り出しもした。

……そうした諸所の準備の間には当然書類仕事も挟まるわけですが、意識が逸れている隙に重要書類に署名させているエーレ、強すぎて笑っちゃった。

当代聖女が帰還したことと先代聖女の暗躍について気付き、聖女選考を停止して候補生たちを神殿に留めることにして。彼女たちの抱えている事情についても聞き取りをして、良い方向につなげようとしていた。

 

……とはいえ、敵も当然大人しくはしてくれないんですよねぇ。

先代聖女派の計略はとても長い時間をかけて積み上げられたもので、最終局面になんとか踏みとどまろうとする状況なわけで、いつでも苦境だったわけですが。

それにしたって、まさかあんな事態に発展しようとは。衝撃的すぎて、読んだ瞬間ちょっと固まっちゃいましたからね……。

彼の仕込みの影響で、望んでいた変化もまた訪れてましたが……タイミングがタイミングで、素直に喜べなかったのが悲しい。

ボロボロに追い込まれていった状況で、最後のあがきをマリヴェルは示そうとしてましたが……どうか救いがある結末を、見せてほしい。

 

巻末書下ろし外伝は『忘却神殿・Ⅳ』。

マリヴェルに縁談が持ち込まれて、相手が意欲的だったことでエーレとバチバチバトルすることになる話。その裏で、神官長との距離も近づいていて……「家族にならないか」という提案をされることになる、という名シーンもあり味わい深いエピソードでした。

……でも、最新時系列においてああなっているの思うと涙が……。

忘却聖女3

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「何だ……俺達が叩きつけてきた願いは、きちんと形になっていたんじゃないか。……ざまあみろ、ざまあみろマリヴェル。非力な赤子のような扱いを受けてきた俺達の願いが、神の定めた定義をねじ曲げた」

 

もう口絵のマリヴェルからして、いろいろとヤバい。

かなり限界が近いことが見てわかるのが……とても辛いんですよね……。

「十一聖 物」からスタート。スラム時代のマリヴェルのあり方が描かれるわけですが……いやぁ、歪んでるわ。

厳しい環境ゆえに他者を下に見て、自分たちの惨めさを認めない風潮がスラムにはあるようですが。それ以上に、マリヴェルの自身が物だという認識が強すぎる。

 

神殿で生活して諭され続けてきた今も、自分の優先順位低いとは思っていましたが、原点がコレであることを思うと、だいぶ人間味増してますよね。神官たちの努力が伺われる。

書下ろしパートでも描かれてましたが、国政の失策で生まれたスラムを、かつて救おうとした聖女もいたようですが失敗。先代聖女は成功の公算が低いと放置して……。

聖女の認知があったころのマリヴェルは、いつかそこにも手を入れたいと王子と話し合っていたとか。

本当に。突拍子もない言動とかもするし、常識外れではありますが、聖女であろうとする彼女の姿勢は本当に好きです。

 

神殿の医務室でマリヴェルが覚醒した時には2日ほどたっていたようですが。いまだにエーレもベッドの住人で……ここで「当代聖女陣営、壊滅です!」とか思っちゃうあたりノリが軽い。

本園後半部分でも緊迫してる状況で、「こってりどろ~り濃厚呪詛新発売って感じです」「最低最悪な商品に許可を出した部署を叩き潰せ」とかいうやり取りするし。マリヴェルとエーレの会話、好きなんですよねぇ。

 

事ここに至っては協調した方がいいとマリヴェルが判断したこともあって、神官長達との情報共有が行われることになったわけですが。

マリヴェルへの信頼が培われたわけではないので、微妙な距離感ではあるんですよねぇ。他者を交えたことでマリヴェルとエーレの抱いた「忘却」について深堀りする余裕ができたのは良かったですけど……それこそが、致命的というか。

国全体に及んだ忘却はどうしても粗い部分がある中で、異常を認識しづらいマリヴェルとエーレの忘却は性質が異なった。違う忘却がかけられていた理由が、あまりにも切ない。

 

真相に迫れば迫るほど、マリヴェルの限界も近づき……聖女を大切にしているエーレの慟哭も深くなっていくのが、こちらにも刺さって痛いんですよね……。

どうやってそれを為したかはさておき、エイネ・ロイアーの傲慢な行いの一端や、神々の動向なんかも知ることができたのは良かったと言えますが。じゃあその問題をどう解決していくかっていう取っ掛かりはまだ足りないのが悩ましい。

……でも、エーレがマリヴェルの忘却を思い出させて心残りを作ったり、涙を流すこともあったエーレが笑って彼女の錘となってくれたのは、胸が暖かくなりました。

彼が本編最後に見つけた役目をはたしてくれる時を待ちたい。

 

で、今回半分くらい書下ろしなんですよね。『外伝・忘却神殿Ⅲ』が驚きの厚さで笑った。いや電子で読んでるんですが、この時点でページ数50%とかでしたからね。

マリヴェルが神殿で過ごしていた穏やかな時期の話。ボリュームたっぷり作ってくる料理長によって、エーレがグロッキーになってるのとか笑ってしまった。

聖女と王子の関係はそこそこ良好でも、神殿と王城の間には先代聖女の作った溝があって、どうしたって問題が生じる時もあるみたいですけど。それでも未来を見据えてるマリヴェル達が好きです。

 

神殿の業務として聖女が神殿を出ることが、年に数度あるそうで。今回はそれの話。当然ほかの神官と一緒なんですけど、マリヴェルと神官たちの距離感がとても良いからなぁ。

過去編大好きなんですけど、いまそれが失われてるのを定期的に思い出すので痛くもある。

一般的な人が思う神官らしさも聖女らしさからも遠いマリヴェルですけど、信仰心とかは本物で……だからエーレが胃を痛めるんだな。「任務に出る度~」って文句言われるのも納得。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
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