気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

TOブックス

隻眼・隻腕・隻脚の魔術師―森の小屋に子も言っていたら早2000年。気づけば魔人と呼ばれていた。僕はだただ魔術の探求をしたいだけなのに―

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「これが魔術だよ。願いや欲望を自然界の摂理から脱したところまで昇華させ、世界に干渉する『術』を持つ者を魔術師と言うんだよ、――賢い魔法士くん?」

 

主人公のエインズは、隣国との国境に接する北の僻地にあるシルベ村の村人だった。

狩猟のため、そして村の防衛のためも込めて村の男たちは、幼少期から木刀を振って鍛錬をすることになっていた。

……しかしエインズはどうしてもその鍛錬に気乗りしなかった。

彼の興味は、辺鄙な村なため情報がまったくない魔法に注がれていた。村の女性が家事のために使っている水の生成魔法などの生活魔法に興味があって。

 

そんなある日、シルベ村を帝国の兵が蹂躙。その際にエインズは雷の攻撃魔法を見て……それに心囚われることに。それに興味関心が注がれるあまり、逃げる脚も止まってしまい、家の瓦礫に埋まり……近隣にあるタス村からやってきた人々に助けられたとき、エインズは隻腕・隻脚になった上、片目も見えなくなってしまっていた。

北方の実り薄い土地で、まともに働けない食い扶持が一人増えることに、タス村の住人の中にも思う所ある人はいたみたいですけど。エインズを保護した家の娘が、気を配ってくれて。

 

そんな中でも、攻撃魔法を実際に見たことで魔法の研究を始めるあたりエインズは、生粋の魔法バカですよねぇ……。

ある日、危険な魔獣も出る森に踏み込んだ村の子供達を助けるためにエインズは森に入り……魔法の研鑽結果をお披露目し、子供達を救うことに。

それによって村に受け入れられることになったものの、エインズは魔法への探求心を抑えられず。森の小屋に拠点を移しつつ、時に外に出てその成果をタス村の人々に還元するといった生活を続けていたみたいです。

 

そうやって生活を続けつつ研究に没頭していたある時、行き詰りを感じたエインズが外に出てみたら、実に2000年もの時間が経っていて。

……いくら没頭するっていったって限度があるだろ! とか。魔法バカではあるけれど、タス村の人に良くしてもらってる分を返せない罪悪感を抱く程度の付き合いはあったのに、その恩人たちの死を把握できてないのとか。いろいろと欠けすぎなんですよねぇ、エインズ。

ただ魔法に関する成果だけは本物で……アインズが村の役に立てばと残したメモが製本されて『原典』として魔法使いたちに崇められる貴重品になっていたり。その成果から、タス村のあった場所には自治都市が築き上げられるほどになっていたりするんですよねぇ。

 

エインズからすれば『魔法』と『魔術』には明確な違いがあり……世界のルールを超えられる「魔術」にエインズは傾倒してるみたいなんですよねぇ。

魔法は使えないけど魔術を使える才能のある少年には手ほどきをしたけど、騎士相手に優位を取れる魔法使いにはさっぱり興味がなさそうでしたし。

サブタイトルにある通り魔神と呼ばれてもおかしくない領域に踏み込んではいるみたいですが……エインズの認識がまだまだそこに及んでいなくて、常識破壊される周囲の人々が大変そうだなぁって思いました。


拾われ弟子と美麗魔術師~ものぐさ師匠の靴下探しは今日も大変です~

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「ああ……せっかく人が弟子の我儘を聞いて穏便に、店主は被害者で、加害者の小娘は恥を隠したい家族の手で修道院行き、そのまま幽閉で済ませてやろうと思ったのに。お前は恩人になるはずだったアリアを害した」

 

訳ありの魔術師、ルーカス・ベイリー。

彼はオネェ口調で喋り、その日の気分で香水を決めるから準備に時間がかかるのよ~とか言う、美しさにこだわりを持つ人物だった。

死の森と呼ばれる場所に結界を張り、古城に住んでいる彼はある日その森の中で少女を拾い……育てることに。

ルーカスの弟子として育てられたアリアは、ルーカスを師匠として慕いつつも、彼の生活がだらしなくて汚部屋量産しまくっていることには苦言を呈しまくることに。

 

自分の美しさにこだわりある癖に、部屋の綺麗さにはこだわらないルーカスよ……。

とは言え、彼が色々と手を打ってくれたからアリアは助かって、健全に育ってるのも間違いはないんですよねぇ。

ルーカスの知人から聞いた話によれば、アリアは誰かに掛けられる呪いを吸い寄せる「呪い避け」の禁術の影響を受けていることで、発見時ボロボロだったって言う話ですし、アリアの過去も掘り下げていくと厄介な事情出てきそうではありますねぇ。

 

ルーカスはルーカスで秘密抱え込んでそうですしね。

それ抜きにしても実力はあるし、その美貌に惚れ込んだ女性から付きまとわれたりで別の厄介事引き寄せるタイプでもあるみたいですけど。

騒がし弟子と、素直じゃない師匠のやりとりは、2人ともなんだかんだ大事に想っているけどそれを伝えきれてないというか。すれ違いも時折起きるんですよねぇ。

それぞれの事情があるとは思いますが、深掘りはまだされてない謎の多い引きとなりましたね。

凡骨新兵のモンスターライフ2

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「人類は、自分という存在を許容できない」

自他題は変われど人の本質は変えられない。国が違えば文化は異なる。価値観や考え方にすら違いを見出すこともできるだろう。「もしかしたら」とかんがえなかったわけではない。ただ、たった一つの感情は、たとえ国が違えと変わるものではないと言う確信があった。

「人は恐怖を克服できない」

 

遺伝子強化兵となり、モンスター・アルゴスという存在として生きることになったユーノス。

彼は肉体こそモンスターですけど、精神性は人間のままで。エルフの水浴びを、遺伝子強化兵の凶悪スペックを活かして覗き見とかしてますからね……。

なにやってるんだ、って感じですが。でも、それによって「川にエルフが水浴びしに来なくなった」=「エルフの国で何かトラブルが起きている」と言うのを察知して、踏み込む決断が出来たからな……。

生活に根付いてる情報源として考えると、トラブル起きたらやっぱり直接影響が出るので適してはいたのか……。

 

エルフたちの最強戦力らしい「剣聖」でも、年老いていたこともあってか傷を負わせることはできても討伐の叶わなかった「森の悪夢」と呼ばれるモンスター。

魔法が効かず、隠密能力も兼ね備えた特殊なタコ型の……これまた、帝国の遺物というかユーノスと同じ実験体の1人だったわけです。

タコを喰らったことでユーノスは、自分を変貌させた研究者の遺したメッセージを見ることになるわけです。まぁ人を変貌させるような実験やってたやつなので「この記憶は次の条件を満たすまでは忘れるようにしておくよ」とか条件付きの記憶消去とかもやってくるわけですけど。

 

タコを喰らって映像見せられたことで、一度眠りについたユーノス。

そんな彼をエルフの禁術を研究していた術士が、『支配』しようとしてきたわけですが……ユーノスは、ある程度支配に抵抗することが出来て。

ただ一度『支配』下に置かれたからか、一時的にエルフの言葉を理解することが出来たので、その状況を活かして言葉を学習し……筆談で意思疎通が図れるようになったのは成果ですね。

自分を支配した相手の命はしっかりと奪って後顧の憂いも断っているのは、ユーノスとしては間違ってない判断でしょう。

ただ短い期間で会得した知識には限りがあるというか、母語じゃないのもあって意思疎通完璧に出来てるわけじゃないのは……懸念材料、かなぁ。それほどエルフと深く付き合うことになるかどうかは別として。

 

ユーノス、2人目の同胞……モンスター化された存在を取り込んだことで、研究者からのメッセージを記憶することは出来たわけですが。

モンスター化した強化兵が意識を保つことの出来る期限について。最短で一年、最大で五年。人の心を失わないための方法も用意してくれてるみたいですが……そもそも、その理性を失う要素を混ぜ込んだの、その研究者らしいから自作自演というか。

自分の技術取られて軍事転用されたから、恨みを抱いているだろう被検体に台無しにしてもらうために仕込んだとか言ってるの、最悪すぎるんだよな……このマッドめ……。



凡骨新兵のモンスターライフ

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一ヶ月……それくらいならばまだこの体を楽しめるだろうが、それ以上となればきっと壊れる。どこかで折り合いをつけなくてはならないのは言うまでもなく、タイムリミットまでに俺は「何か」を見つける必要がある。

(…この姿で生きていくためのものか……)

 

魔法も存在する世界で、科学技術を極めて他国との戦争を渡り合っていた帝国。

とは言え戦況は悪く……主人公のユーノスも徴兵されることになった新人軍人として勤めることになったわけですが。

タイトルに「凡骨」とある通り、特筆するべき事項のない彼は「代わりの効く人材」と見なされて人体実験に掛けられることに。

……いやまぁ、抜けてるユーノス君が「新しい実験の協力者を求めててねぇ。枠があと少ししかないんだけど、どうかな?」みたいな詐欺まるだしの勧誘に飛びついたので、自業自得な部分が無いとは言えないんですけど。

 

一応「軍人の肉体を強化する」という名目に嘘はなかったわけですけど。

実験に掛けられて冷凍睡眠から200年経って目覚めた時、彼は巨人のような体躯を持つ怪物に変貌していたわけです。

後に、下半身が蜘蛛で上半身人間と言う、モンスターと人間を混ぜ合わせる実験の被検体と遭遇し戦闘に発展したりもしてるので、帝国本当にマッドなことやるだけやってるな、というか。

 

ユーノス、体格が人の者とは離れすぎてて「意識は人間だけど、声帯が人間の言葉を発するのに向かない」ため怪物じみた声しか出せず……現代の人間と遭遇しても、「新種のモンスター」として認識されることになったわけです。

そもそもユーノスが目覚めた時点で帝国滅んでるっぽいので、帝国の言葉話せても通じなかった説はある。

これを思うと下半身蜘蛛でも人間の姿残っていた方がコミュニケーション取れたのだろうか。分かりやすく異形だから怖がられて逃げられる可能性の方が高そう。そもそも蜘蛛男は、実験体にされた罪人らしくて今世でも悪徳を働いていたので、ユーノスに倒されることになったわけですけど。

 

新種のモンスターとして「アルゴス」と名付けられることになったユーノスですが、始まったばかりという事もあって、モンスターライフを堪能しているというか。

自分が攻撃対象になり得ることを知ってるので、あまり踏み込まない対応をしてるのは好感が持てる。現代の事情にも疎いですしね。

最初に遭遇した時は、モンスターに襲われている冒険者を見つけ、適当にモンスターは蹴散らして助けたりしてますし。……まぁ、そのあと助けた対価として死んでしまったメンバーの遺品を勝手にもらい受けたことで、助けた冒険者ディエラに付きまとわれることになったりするんですが。

 

割とその場その場の気分で行動を決めているのを見ると、凡骨評価も頷けるというか。まぁ等身大の人間をやってる感じがして良い。まぁモンスターなのでその等身大クソデカなんですが。

モンスターに改造されて男性器とか排除されてるのに、エロ本探したりするのは……人間らしいけどどうなんだ。名前とか聞き取れないにしろ女性を胸のサイズで判断して仮称つけたりしてるし。精神までモンスター化してないのは、彼のスペックに現代の軍人が蹂躙されたりするのを見るに、ありがたいことではあるんですが。



五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました2

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「もちろん、私の心は、永遠にレティシアただ一人のものです」

 

レティシアとフェリスは、それぞれの国の王妃と皇太后による嫌がらせじみた縁組で始まった年の差夫婦なわけですけど。

前世持ちのレティシアは、肉体に引っ張られて相応に幼いけれど落ち着いてる部分もあるし。……見目麗しいフェリスの推し活を楽しんで生き生きしてるのでヨシ!

そうやってフェリスを慕っているレティシアの姿に、彼も癒されてるのが良いですよねぇ。

 

そんな中、当代の竜王陛下が代々継承されている竜王剣を抜けなかったのではないかという噂が流れて……。

皇太后が逸ってフェリスに謹慎を言い渡してくることに。

実際フェリスなら剣を抜けるでしょうけど、当人にそんな意思はないんですけどね。

……とはいえ竜王陛下が、竜神の声を聞けずに困惑しているのに、気安くやり取りしてるので、それが知られてしまうと溝が深まりそうだって言う爆弾もありはします。まぁ重々承知してるからフェリスは一歩引いたスタンスでいたっぽいですけど。

大切なレティシアという存在が生まれたことで、悪評を流すために潜り込んでいた他国の工作員の排除に乗り込んだりとか、ちょっとアグレッシブさも見せてるので、他国の思惑も踏まえると穏やかなばかりではいられなさそう。

 

皇太后が竜王陛下に相談もせずフェリスを謹慎させたことを、竜王陛下が問題だと認識してすぐにそれを解除してくれたのは良かったですけど。

良かった点で言うと、身一つで他国に嫁ぐことになってしまったレティシアが心配していた愛馬のサイファを迎えるためにフェリスが動いてくれたのも良かった。

サイファもレティシアを慕っていて、だからこそ離れてから弱る一方だったそうですからね……良かった良かった。

マメーとちっこいの~魔女見習の少女は鉢植えを手にとことこ歩く~2

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「……マメーよ」

「あい」

「ひょっとして、理由がわかったのかね」

「ん」

 

お姫様が鹿に変身してしまう。

そんな異変を解決するために儀式を行ったマメーの師匠グラッピナ。

一度は成功したかに思われましたが……なぜか、再び姫は鹿の姿になってしまって。

グラッピナ、しっかりと魔女協会本部宛に手紙送ってるの偉いですよね。「マメーは特殊だから、植物系専門の魔女の派遣してくれ」、「規則に則って一時的に拠点を移すから報告」、「解呪に失敗したため、増員を希望する」と真っ当な報告ばっかりなのに、それを「なんのかんの言っても『万象の魔女』なんだから上手く対処するでしょ」と申請を受理しない協会長よ……。

実際、その後の展開を思えば呪いの一件はグラッピナやマメーの力で対処できたわけですけど。それにしたって、申請を聞き流す協会にはなんの意味があるんだ……? とは思いましたね。

 

グラッピナ、魔女としての経験が豊富なだけあって、解呪に一度は失敗してましたけど犯人と対峙した時に即座に見抜いたりしてましたし。

マメーも言葉遣いこそ拙いですけど、そのグラッピナの教えを存分に吸収した魔女の雛なので、お姫様に掛けられた呪いの真実に最初に気が付いていたのが良かったですね。

その対処についても、彼女とゴラピーたちならではの解決方法を見つけてましたし。

……ただそれが次の問題に繋がりそうなのが、厄介ではありますけど。

 

グラッピナは呪いをかけた犯人を一目で見抜くし、たまたま手を貸してもらえることになったブリギットは隣国の情報収集を瞬く間に終えてくるし。

半端に関わってしまったので事後対応にも手を貸してくれましたが、魔女が国から距離をとってるのも頷ける規格外な力を見せつけてくれましたのも良い感じ。

……それだけに、グラッピナの怒りを買いそうな行いを平然と続けられるエベッツィー村の住人達には「命知らずだな」……以外の感想が無い。

ゲーム世界転生<ダン活>~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を<はじめから>プレイする~13

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「むしろウェルカムだ! どんどん攻めてきていいぞ。全部返り討ちにしてやるぜ!」

 

戦闘科1年のクラス対抗戦、決勝戦。

エデンメンバーを擁する1組、8組、そしてリーナのいる51組も勝ち進んでいるのはお見事。リーナはゼフィルス達のスペックを把握しているので、3クラスで連合を組むことで対抗しようとして。

一応、1組や8組にも声をかけていましたが、それぞれのリーダーであるゼフィルスやメルトには断られた模様。ゼフィルスなんか、「強敵と戦えるならウェルカム!」と大歓迎してましたからね……。

 

実際、11でぶつかればゼフィルス率いる1組に勝てるクラスないでしょうしね……。

ゼフィルス、エデンの第一パーティーの上級職のスペックごり押し脳筋戦法だけじゃなくて、カルアとその眷属である黒猫による情報収集を重視していたり、ちゃんと作戦も練れるんですよね。

……まぁ当人が割とテンションで生きてるから、あまりそんなイメージないんですが……。

で、それは姫軍師であるリーナも承知の上で。1組の情報収集の要であるカルア相手に、伝手を使って上級ダンジョン由来の罠を仕入れて、睡眠状態にすることで行動を封じてきたりと、しっかり打つべき手を打ってて偉かったですね。

 

同盟に参加したドワーフ生徒たちのスキルを活用して資材を持ち込んで、要塞をくみ上げたり、観戦している先輩方を驚かせる仕込みだってしていたみたいですし。

それによってゼフィルスのテンションが上がって、最初から使ったら蹂躙劇になって面白味が無いからと使用を控えていた、ラナ用の装備である〈白の玉座〉を引っ張り出すに至ったわけですし。

〈白の玉座〉の有するマスの境目で効果が減退するのを抑えるスキルと、大聖女の「攻撃だろうとなんだろうと使う魔法に〈回復〉カテゴリを与える」スキルの複合技で、他のクラスには出来ない減衰しない超遠距離狙撃が出来るとか、とんでもないですねぇ。

ラナ、役割的にはヒーラーのはずなのに、火力役が良く似合ってるわ……。

 

他にもゼフィルスは拠点落としに馬車を持ち込んで、敵の本丸に遊撃隊を突貫させる手法を使ったりして観客を驚かせてましたが。

……支援先輩とか、掲示板の方々も勇者君情報に驚かされてばかりですけど、「城落としではアイテムバックなどで馬車を隠せないのがネックで、これまで使用されなかったんだろうな」とかちゃんと分析もしてるのが偉い。

他にも上級職に就いていたラムダ君とのバトルとかもあり。51組みたいに最初から同盟を組んだわけじゃないけど、状況に応じて8組と協力することになったり。ゼフィルスが最初から最後まで楽しそうに対抗戦の時間を過ごしてて良かったです。

五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました

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(フェリス様の心はフェリス様のものです!)

この国で、十七年間生きてきて、まさか、あんな小さな姫君が、フェリスを義母から守ろうとしてくれるとは……。

「嘘みたいな話だな……」

 

主人公のレティシアは、サリア王国の先代王の娘。

先代の王であった両親を病で亡くし、直系のサリアはまだ幼かったために叔父が次の国王に就任。レティシアの父は名君だったが、叔父の方は評判が今一つで……。

そのため幼いレティシアを擁立したい派閥も存在はした。それが面白くない叔父夫婦は、転生者であり年齢のわりに聡明なレティシアの悪評を流し、ディアナの王弟殿下の花嫁を欲しているという話を聞きつけて、「国益」と言う大義名分のもとにレティシアを追い払うことにしたわけです。

 

レティシアを慕う臣下もいましたが、新王に遠ざけられており……このままサリアに居ても、彼女の安全を確保できるほどの権勢はない。ならば、この話に乗った方が生き延びる確率は高いとレティシアが「じぃ」と慕うウォルフガング公も勧めてきて。

全て理解した上で、レティシアは異国の12歳も年上の王弟殿下に嫁ぐことになったわけです。

王弟殿下フェリスは、ディアナで信仰されている創始の竜王陛下に瓜二つだったり、様々な分野で才能を示している御仁であるために、皇太后から疎まれていて……。

幼女と呼ぶべきレティシアとの婚姻も、フェリスへの嫌がらせの一環だったみたいですけど。

 

故郷が嫌いなわけではないが、それぞれの事情で居心地の悪い部分がある2人は不思議と共感して……早い段階から打ち解けていくことに。

フェリスとレティシアの関係自体は、現状でも良好で。レティシアが成長するにつれて立派な夫婦になっていけそうな安心感はありますが。

……フェリスは今も末裔を見守っている竜王陛下と会話できるだけの能力があり……兄である現王は、竜王の声を聴くことが出来なくて。それが兄の心に重石のように残り続けているとか。

ディアナが豊かであるからか、敵視している国もあり……工作員を派遣している様子が見られたりとか。そもそも2人の婚姻が王太后による策略だったりしますし。2人の関係がしっかりしてても、周辺に火種がたくさんあるのでトラブルには事欠かなそうなのが心配ですね……。

肥満令嬢は細くなり、後は傾国の美女(物理)として生きるのみ3 聖女戦争

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「ああ、そうだ! それでいい! そうすれば……このナダール教国の男たちに『女の尻に隠れていた』と陰口を叩けるものはいなくなる!

 命を惜しむな、名を惜しめ! そなたらは誉れ高き勇者だ!」

 

WEBは完結してて2巻まででその部分を収録し終えたので、完全書下ろしで送られる第3巻。さらに4巻の発売も決まってるとかで、楽しみですね。

 

神殿騎士メリダの薦めで、聖女認定を受けるべくガレリア諸王国連邦の南にあるナダール教国を訪問したローズメイ一行。

メリダは彼女達に良くしてくれましたが……元々北方と南方で断絶のある国柄なこともあり、船の寄港を許されない政治闘争が起きたりもして、長々と行軍する羽目になったり。

かと思えば、帝国の隠密が隠れ蓑にしている商会が故あって立ち往生しているのに遭遇。そこで、因縁のあるシーラとローズメイが再会することにもなって。

 

シーラ、あの最終盤面で死んでも良かったと思っていたから、ローズメイ相手にも引かず、相容れないけど慕っているという独特な立ち位置で近づいてきて。

そして重宝されている工作員らしく、ローズメイにも利益を齎してくるので、思う所がありつつもローズメイも受け入れざるを得ないの立ち回りが上手いと思いましたね。

 

苦労しつつ訪れたナダール教国では、高位貴族たちの間で『後添え』という死後の付き添いをさせるために女を攫ってきて殺すという因習が残り続けていて。

それを目の当たりにしたローズメイは激怒し、その因習を享受し続けて来た貴族を打破するために動き始めることに。

そうして苛烈な意思を示したローズメイの下には、かつて同じように因習を打破しようと立ち上がったものの討たれてしまった反乱軍の生き残りだとか。今まで立ち上がる事の出来なかった騎士たちなんかも合流して、異国の地ながら軍の形を取れているのはさすがローズメイというか。

 

教皇もこの因習には思う所があり、ローズメイ達の勢いを増すような助力をしてくれたり。その一方で責任を負うために立ちはだかったりと、かなり難しい立ち回りをしていましたが。

……いや、善性の人なんですよね。因習を許せず打破しようとした過去を持つ人であり……それを為せず、縛られることになってしまった人。

この最終局面で自分を裏切った相手に、「お前の行いがお前に返った」と言いに行ったりしてるの強かだな、というか。やるべきことはしっかりやってて偉い、というか。

今回、海神がその意思を示してくれましたが、全知全能故に見通せず結果的に良くない結果を導いてしまっただけで、善性の神だったのは良かったですね。

 

この世界の神様、人々の信仰の影響を受けるので、この『後添え』の件が知れ渡ったら悪神に堕ちるだろうと、その前に自身を滅ぼせとローズメイに言ってくるのとか、神様の視点だなぁ……って感じがして、貴方の行いを拡大解釈した貴族が悪いので、恨むのも微妙に筋違いなんですが。最後に筋を通して逝ったので、なんだかんだ嫌いにはなれない良い神様だったんだと思います。

肥満令嬢は細くなり、後は傾国の美女(物理)として生きるのみ2

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「……正しいか間違いかなどは蓋を開けてみなければ分からない。

 何を理想として行動したか、ではなくどのような結果を残したかで是非を問われる。だが指導者に命を懸けるより他無い兵たちのことを思えば、それも間違いではない」

 

長男の罪を暴くこともせず、帝国と通じ自領を活かす選択をしたアンダルム男爵。

ローズメイ達は、アンダルム男爵に嫁ぎ長男によって殺された奥方の生家である隣の領地、ケラー子爵領に赴き、情報を提供した上でアンダルム男爵を討つために動き始めたわけです。

 

しかし、アンダルム男爵領で動いていた屍術師が地獄を顕現させようと大暴れしているし……屍術師を派遣していた帝国の王子は「アンダルム男爵領には金山を秘匿した上で帝国に通じていた」と他の領地にも情報を流してるし。

大陸中央部に存在する「ガレリア諸王国連邦」は、小国が力を合わせていると言えば聞こえはいいけれど、その実かつて栄えた大国が3つに分裂した後、再統一も叶わなかった動乱の地でもあって。そんなところに、「邪教徒の撲滅」という大義名分と「金山」という餌を投げ込んだらそりゃ勝手に争うわな……というか。

 

元はルフェンビア王国公爵家の姫とは言え、一度死んだも同然であるローズメイは今は流浪の平民(こんな平民がいてたまるか)なわけですけど。

そんな彼女に実子と同じだけの兵を与えて、戦線に協力してほしいと言ってくるケラー子爵は出来た領主であったみたいですが。その息子ファリクは、凡庸で。

アンダルム男爵家の四男セルディオが、盲目ながら武にも知にも秀でているのを知ってることも相まって、同じことが出来ない自分、父に目を駆けてもらえない自分と言うものに鬱屈としたものを抱え込んでいて。

 

先述の通り、他の領地も帝国の策謀で兵を動かしている中で、ケラー子爵軍ですら足並みを揃えられていないのは痛すぎるなぁ。

セルディオを敵視するあまり助言を聞き逃して危うくなり、セルディオが武人として相手の名のある戦士を引き付けたことで逃げる時間を稼げたのに、最後にはその背中を射抜いたんだからファリクくんさぁ……。

 

シディアも「卑劣で恥ずべき行いに思えます」と評してましたし。ただ、将帥であったローズメイは、窮地に自分たちが駆けつけて勝ち戦になったのでその卑劣さを糾弾できるのだ、と言うんですよね。

それまでの情勢が負け戦だったのは間違いなく、少数を犠牲にして多数を活かす選択をしたのであれば高く評価される可能性もあったというあたり、視野が広い。

……まぁ、聞くべき助言を無視していたという後出しの情報が出てきて、さすがのローズメイからも「弁護する余地がなくなった……」と言われてしまうんですけども。

 

セルディオ、かなり良いキャラだったのでここで倒れてしまうのは意外だなぁ、と思っていましたが。

屍術師が暴れまわっていたので、死者の魂が留まりやすい状況になっていたこと。セルディオが最後に、その魂が地上に留まるくらいの激情を抱いたこと。

強力神の覚えも目出度いローズメイが、救う手法がないか頭を巡らせ答えを見出したこと。いろんな状況が重なった結果、セルディオは黄泉がえりの機会を得たわけですが。

 

……一方で、この騒動の中でファリクは命を落とし……良い領主であったケラー子爵が、それでもかわいい息子だった、と苦悩することになるのは重い。

直接会ったら言うべきではない恨み言を行ってしまうから、と対面することを避け手紙で兵を助けてくれたことへの謝辞と息子の行いへの謝罪をしているあたり、最良の判断をしようとはしたんですよね。

ただそんな彼に悪魔が囁いて、後に厄介なことになるだろう火種が生まれてしまったんですが……。

 

他にも、シディアの故郷である村が、金鉱山を巡る戦乱に飲まれ滅びてしまったりだとか。

ローズメイの武勇は比類なきもので、彼女個人の武勇で一つの戦場くらいだったら状況をひっくり返すことは出来るでしょう。

ただそれでも彼女の身体は一つしかなくて……こうやって取りこぼしてしまうものも出てくるんですよね。

そんな中で、ローズメイの身体に宿る強い神の気配を感じ取った神殿騎士メリダが、ローズメイにとある誘いを持ち掛けてくるわけですが。また波乱が起きそうですねぇ。



プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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