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「これが魔術だよ。願いや欲望を自然界の摂理から脱したところまで昇華させ、世界に干渉する『術』を持つ者を魔術師と言うんだよ、――賢い魔法士くん?」
主人公のエインズは、隣国との国境に接する北の僻地にあるシルベ村の村人だった。
狩猟のため、そして村の防衛のためも込めて村の男たちは、幼少期から木刀を振って鍛錬をすることになっていた。
……しかしエインズはどうしてもその鍛錬に気乗りしなかった。
彼の興味は、辺鄙な村なため情報がまったくない魔法に注がれていた。村の女性が家事のために使っている水の生成魔法などの生活魔法に興味があって。
そんなある日、シルベ村を帝国の兵が蹂躙。その際にエインズは雷の攻撃魔法を見て……それに心囚われることに。それに興味関心が注がれるあまり、逃げる脚も止まってしまい、家の瓦礫に埋まり……近隣にあるタス村からやってきた人々に助けられたとき、エインズは隻腕・隻脚になった上、片目も見えなくなってしまっていた。
北方の実り薄い土地で、まともに働けない食い扶持が一人増えることに、タス村の住人の中にも思う所ある人はいたみたいですけど。エインズを保護した家の娘が、気を配ってくれて。
そんな中でも、攻撃魔法を実際に見たことで魔法の研究を始めるあたりエインズは、生粋の魔法バカですよねぇ……。
ある日、危険な魔獣も出る森に踏み込んだ村の子供達を助けるためにエインズは森に入り……魔法の研鑽結果をお披露目し、子供達を救うことに。
それによって村に受け入れられることになったものの、エインズは魔法への探求心を抑えられず。森の小屋に拠点を移しつつ、時に外に出てその成果をタス村の人々に還元するといった生活を続けていたみたいです。
そうやって生活を続けつつ研究に没頭していたある時、行き詰りを感じたエインズが外に出てみたら、実に2000年もの時間が経っていて。
……いくら没頭するっていったって限度があるだろ! とか。魔法バカではあるけれど、タス村の人に良くしてもらってる分を返せない罪悪感を抱く程度の付き合いはあったのに、その恩人たちの死を把握できてないのとか。いろいろと欠けすぎなんですよねぇ、エインズ。
ただ魔法に関する成果だけは本物で……アインズが村の役に立てばと残したメモが製本されて『原典』として魔法使いたちに崇められる貴重品になっていたり。その成果から、タス村のあった場所には自治都市が築き上げられるほどになっていたりするんですよねぇ。
エインズからすれば『魔法』と『魔術』には明確な違いがあり……世界のルールを超えられる「魔術」にエインズは傾倒してるみたいなんですよねぇ。
魔法は使えないけど魔術を使える才能のある少年には手ほどきをしたけど、騎士相手に優位を取れる魔法使いにはさっぱり興味がなさそうでしたし。
サブタイトルにある通り魔神と呼ばれてもおかしくない領域に踏み込んではいるみたいですが……エインズの認識がまだまだそこに及んでいなくて、常識破壊される周囲の人々が大変そうだなぁって思いました。