「私はね、偉大な魔術師に憧れていた」
(略)
「……過去形で言っているのに、諦めていないんですね」
第五次聖杯戦争前の一時期を切り取った「事件簿」から時は流れ……。
三年後の世界。凛がエルメロイ教室の生徒になって居たり、彼女が連れてきた従者も時計塔に居たりと色々と変化が生じている模様。
あとがきによれば、ルート分岐の在るステイナイト本編の未来を書くと言うことは、ルートを決定してしまうことになり、いずれ来る「聖杯解体」にも影響を与えてしまう。
……そのため、奈須きのこ氏と相談の結果、『独自のルート』を想定した書き方になっているそうです。
時計塔のロードとして、当人の実力はともかく生徒たちへの貢献……「講師」としての腕前は相変わらず冴えわたっているようで。
「略奪公」なんて、彼の実情を知っていると何とも似合ってるような、そぐわないような異名で外部の魔術師から呼ばれることもあるようで。
いやまぁ、相手の魔術の解体をしてしまう眼力の精度が上がってるようにも感じますし。
暗殺にきた魔術師への対抗策として、その術式を改善した上で特許登録してるとか、そりゃ悪名広がっても仕方ないでしょ……
グレイは相変わらず内弟子として、彼の傍にあるようですが。
事件簿の最後において、彼女に残された影響が続いているとか不穏にも程がある。
自身の非才を自覚しながらも、それをどうにかしたいと足掻き続けるⅡ世の泥臭さ、好きだなぁ。
それをグレイが察しているのも成長を感じられて良い。
仕事でシンガポールに立ち寄った後、Ⅱ世とグレイが出会った少年エルゴ。
彼は、特殊な体質……というか能力を持っていて。それを狙った魔術戦まで起きる始末。
アトラスの六源なんてキーワードも出て来たり、時計塔が西洋に強く影響力を持つように東洋にも組織だって動くものがあるとか。世界が広がっていく感じがして楽しいですね。
……それだけに、終盤に描かれたキャラが意外だったと言いますか。私、型月世界そこまで詳しくないんですけど、そう言えば同時期!?!? え、2巻読みたい……
時計塔に入った凛が、いろんな意味で「強く」なっていて吹いた。
随分とたくましくなったというか、根っこの部分が変わっていないけど手を伸ばせる範囲が伸びている感じがする。
……才能を秘めた原石と、それを磨く力をもったⅡ世とか、実際のところトップクラスに「組ませちゃいけない」コンビだと思うんですが。
うっかり宝石剣とか組み上げたりしないだろうな、この師弟。